女子
雪
時折話す程度の女子が、ニコニコと笑って近づいてくる。
女子
雪
女子
雪
女子
雪
足早に去っていく女子の背中を見ながら、私はしばらくぼーっとした。後に、絶望が背中を這いよってきた。
ついに、恐れてきたことが起きてしまった。友達が、選ばれてしまった。
雪
この教室の支配者。絶対に逆らえない存在。他人が聞けば、馬鹿らしいと笑うだろう。
でも、彼女はどこか違う。名前の通り、姫のように。
家来がいることが当たり前で。
彼女の言うことは絶対であることも当たり前のことで。
逆らうことが許されない、そんな空気を身にまとっている。
雪
明日、私は無視しなければならない。
今まで何度も見てきた。好き勝手に始まるゲームによって、絶望してきた子達の顔を。
時には水を浴びせられ、
時には怪我をさせられて。
助けてくれる人が一人もいなくて、孤立して。
標的になった子の友達も、ただただ見ている事しか出来なくて。
私もその立場になるんだ。
傷つく友達を、見ている事しか出来ないんだ。
雪
結局その日、私は誰にも広めずに帰った。このゲームが始まるのが、少しでも遅くなるようにと祈って。
次の日。
菜乃花
雪
菜乃花が明るく挨拶をしてきた。私は無視した。心がズキリと痛む。
菜乃花
菜乃花は聞こえなかったのかと思って、さらに距離を詰めて挨拶をしてきた。
でも。
雪
ここで挨拶をすれば、私が標的になる。あたりを見回した。
でも、みんなこの光景を不思議がってはいなかった。むしろ、クスクスと笑う声が聞こえるくらいだ。
残念ながら、あの話はみんなに広まっていた。
菜乃花は、そんな様子を見て察したらしい。
菜乃花
雪
菜乃花
雪
菜乃花
雪
菜乃花
雪
菜乃花
菜乃花は無理やりその路線に思考を変えた。そうでもしないと、最悪な考えに至ってしまうから。
このゲームの、最も残酷なところは、選ばれた本人には、そのことがわからないところだ。
最初に誰かに話しかけて、無視されて、それでだんだん自分で悟っていく。
菜乃花
菜乃花はほかの人に話しかけようとはしなかった。ほかの人にも無視されれば、選ばれたと認める他なくなってしまうから。
雪
菜乃花
姫
菜乃花の言葉を遮って、姫が話しかけてきた。
姫
姫は、標的になったこの目の前で、友達をかっさらい、標的の表情を、反応を見るのが大好きだ。だから、私に話しかけてきた。
本当なら、今すぐにでも菜乃花に挨拶を返して、姫の誘いを断って、菜乃花と話がしたい。
でも、それはできない。
私に、そんな勇気はなかった。
雪
姫
言われるがままについていく。姫は、ちらっと後ろを見て、クスリと笑った。
私もつられて後ろを見る。菜乃花は、涙をこぼして、光のない目で私のことを見ていた。しばらくして、菜乃花が私の腕をガッと掴んだ。
菜乃花
雪
なおも返事をしない私を見て、菜乃花の膝はガクガクと震え始めた。顔が青白くなっていき、目を見開いて、口を少し開けて、呆然としていた。
雪
菜乃花の膝は、ついに力を失い、その場に崩れ落ちた。私の腕を掴んでいた手も、もう地面に着いている。
雪
名前を呼んでしまいそうな口をつぐみ、差し出しそうになった手を押さえつけて、私はクルッと後ろをむき、目を伏せた。
そんな私を、みんなが見つめる。その視線はまるで鎖のように私の腕や足に絡みつき、操った。
自然に姫の率いるグループの方へと向かっていた。姫がいけと言っていた場所に。
そんな私を、姫が後ろからついてきて、私の腕に自分の腕を絡め、耳元でささやいた。
姫
さっきの。呼びかけた、名前。
冷たい声、冷たい腕。絡まる視線。その全てが鎖となり、絡みつく。私が、あやつり人形へと変えられていく。
昨日話しかけてきた女子も、元は標的の友達。このゲームを嫌っていた1人。
それが変わったのは。
彼女も、あやつり人形へと変わったから。
標的をつくり、自分の駒を増やし、本物の姫のように、命令していく。
姫
姫の城は、壊れることはないだろう。
女子の連携によってできる鎖に、守られているのだから。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!