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すごぉ……!!
AM 5:30
レトルト
レトルト
俺はあの時と同じく 河川敷に座り「はぁ…」と息を漏らす
『ゲームでのし上がった気になってんの マジで笑える』
『いい歳してポンコツキャラとかw』
『3人と居るから知名度上がっただけ』
『我儘にも程がある 3人を振り回すな』
『声普通に嫌いなんだけど同士いる?』
『お前からゲーム抜いたらただの無能』
『人生ゲームオーバーじゃんウケるw』
分かってるよ そのくらい
俺だって ここまでやってこれるなんて 思わなかったんだから
俺は ただ居場所がほしかっただけ
ここに居てもいいよって ここが俺の居場所だって
認めてほしかっただけ
でも 色んな経験をしてきて分かった
居場所は 「求めるもの」じゃないんだって
─────────────────
俺の周りにはいつも人が居た
どっちかと言えば悪い意味で
無理に良く言えば 「オトモダチ」が沢山居た
俺は毎日オトモダチに囲まれていた
教科書を燃やされて 頭から牛乳をかけられて 下駄箱に鳥の死骸を入れられて 体操服をズタズタに切り裂かれて マスクを取った時の写真を撮られ 学校中に晒された
家に着いても 傷跡を隠す気はなかった
家族はそんな俺を 抱き締めてくれた
…訳がなく
「気持ち悪い」「醜い」「死ね」 「お前みたいなグズ産んだ覚えない」 「お前なんか生きてる意味ない」と 罵詈雑言を延々と浴びせられた
怒鳴られ 殴られ 蹴られ 真冬に外に放り出されてそのまま 京の町を裸足でさまよったこともあった
2人はその後 通行人への恐喝・暴行により 警察に連れていかれた
その後のことは全く知らない
高校卒業後 俺は2人と縁を切った
だが周りにいた人は 俺と関わりたくないと離れていった
俺の心には穴が空いていた
ぽっかりと空いた穴には かつて 教室の机に置かれた白ユリの花だけが 咲いていた
俺もボロボロになっていた
俺はもう恨む気にもなれなかった
期待もしなかった
抗うなんて無駄な選択をしなかっただけ マシだと思った
─────────────────
ピリリリ…ピリリリ…
レトルト
時計の針が6時をさしていた
レトルト
…また昔のことを考えてしまっていた
レトルト
レトルト
…あの時の自分が今の俺を見たら ビックリするだろうな
実況で食べてるなんて
ある日たまたま実況動画を見て 見よう見まねで投稿し始めた
今ではそんな実況が 俺の居場所になっている
でも全力で楽しめてると思い始めたのは 本当に最近だ
最初はアンチが多くて 心無いコメントが届くたびに 学生時代を思い出し精神を削られた
時が止まっているようにすら感じた
「いっそのこと 自分から孤独になってしまえばいい」
「消えよう」
そういう風に考えるまで追い込まれた
一人暮らしを始めてからは 少し心に余裕が出始めたが
それでも前に進むことができなかった
穴はそう簡単に塞がるものでは無い
探して 見つけて 違うって分かって 落ち込んで また探して 「これじゃない」を繰り返して
もうダメだと何度も思った
その度に胸がぎゅっと締め付けられ 上手く息を吸えなかった
考えて…考えて考えて考えて…… ある時ふと俺は気づいた
変わろうとしてるんだなって
過去のことは変えられない だけど
自分が変わらなきゃ何も始まらない
居場所は「自分で作るもの」なんだ
そう思うようになった
それからは時間は あっという間に流れていった
あれからもう15年…
時代も変わり 俺もおっさんになった
だけど これからの社会を考えながら生きれる程 俺は器用じゃない
これからは 自分のために時間を使っていきたい
人に流されていたあの頃に 戻りたくないから
時間はたっぷりある
時間を大事にしながら 空いた穴を少しずつ埋めていけばいい
消えたいなんて言ってる場合じゃない
まだ やり残したことが沢山あるから
だって…
『レトルト氏!』
『レトルト』
『レトさん!』
レトルト
脳裏に浮かぶ3人のおっさん達
俺の居場所にズカズカと入り込んできた 陽気なおっさん達
いや
誰も近づこうとしなかった 俺の居場所に
入ってきてくれたから
俺だけでは留めることができなかった 小さな居場所が
どんどん広がっていって
どんどん人も増えていった
もちろん 良い意味で
レトルト
3人には感謝しかない
彼らにだけは 恩を仇で返すことのないように
レトルト
もう時期朝日が昇る
俺は立ち上がりスマホを起動させた
グループLIMEに 「おはよ」の一言だけを送って
まだ沈まぬ月に背を向け歩き出した
終
ぬし
ぬし
ぬし
ぬし
ぬし
ぬし
ぬし
ぬし
ぬし
ぬし
ぬし
ぬし
ぬし