この作品はいかがでしたか?
38
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日の光で目が覚めた。
体の芯が熱い。
額に手を当ててみる。
さくら
熱があるのかを正確に測るためにも、リビングに行かなくては
そう思い、布団をめくり、床に両足をつける。
立ち上がろうとするも、頭がいつもより重たくて、平方感覚を保てない。
何とか立ち上がり、壁を伝ってリビングへ進む。
さくら
熱があった。原因は季節からして五月病だろう。
昨日あめ君にあんな事を言ってしまったのも、きっとそのせいだ。
テストの前に体調を崩してしまうなんて……
私がいなくても、サキとつぼみは大丈夫だろうか……
様々な想いが頭を巡る。
だがその想いの本物かどうか、私にはわからない。
もう何もしたくないし、何も考えたくない。
考えれば、考えるほど苦しくなるだけだ。
その感覚は本物だと思い込んで、私は瞼を閉じた。
辛い時は寝てしまおう。
夢の中なら考える必要なんて無いから。
たいよう
くも
あめ
彼女はあの日から、学校に来ない。
テストも終わり、時間が過ぎ、気付けばもう夏休みが近い。
二ヶ月、二ヶ月だ。あの日からそれほどの時が経った。
通常、それだけ学校に来なければ、自然と存在も忘れ去られる。
だが、誰も彼女を忘れなかった。
それほどまでに、彼女の役割は大きなものだったのだと、
彼女がいなくなって、初めて実感した。
朝、教室に入ると彼女が皆に言う
「おはよう」がどれほどの意味を持っていたのかを。
授業中に彼女が言う、しょうもないギャグに皆、どれほど救われていたのかを。
彼女のいないこの教室で強く感じるのだ。
僕はどうすれば良いのかわからなかった。
彼女の秘密を知る者として、どうするべきなのか。
彼女が戻ってきてくれれば、このクラスは再び明るくなる。
だが、それは彼女にとってどうなのだろう。
二ヶ月間ずっと、あの日の彼女の涙を忘れられない。
あの苦しみをもう一度味合わせるのは、
それを知っている僕にも罪があるように感じてしまうのだ。
そして、そういう考えの自分すらも僕は嫌いになっていた。
彼女を第一にせず、自分の事を考えてしまう
そんな僕がいることに。
どちらにせよ、今のままでいてはいけない事はわかっている。
さくらをきっかけにし、
つぼみさんと、サキさんも壊れてきている。
つぼみさんは、学校に来る回数が減ってきている。
サキさんは、何とも無い。
これほどの、変化に見舞われたというのに、何も変わらないのだ。
それは端から見れば、奇妙でしょうがない。
僕は何を恐れて動けずにいるのだろう。
どうなってほしくなくて、怖くて、行動を起こせないのだろう。
たいよう
あめ
あめ
たいよう
たいよう
あめ
たいよう
あめ
あめ
たいよう
たいよう
たいよう
あめ
たいよう
あめ
たいよう
たいよう
たいよう
あめ
たいよう
たいよう
たいよう
たいよう
あめ
あめ
僕は馬鹿だ。
変わるための行動もせずに
変わりたいと願った。
行動するのが怖いから、その事実を見ないフリして……
僕は馬鹿だ。
本当に馬鹿だ。
何故、僕は彼女の家に向かっている。
何かができる訳でも無い。
ただ、助けたい。
それだけで、動いている。
これはきっと偽善だ。
でもそれで良いんだ。
何もしないよりかは、きっと良い。
私はこの部屋でずっと何をしているのだろう。
何もせず、布団から出れずにいる。
トントン
誰かが扉をノックした。
今家にいるのは私を除けば母だけだ。この扉の前にいるのもきっと母だろう。
どうして、この扉の向こうにいるのが、あの人ならと考えてしまうのだろう。
どうして、あの人であってほしいと思うのだろうか。
あめ
さくら
さくら
さくら
あめ
あめ
さくら
さくら
さくら
あめ
さくら
あめ君が来てくれたらと考えていたはずなのに、
嬉しいはずなのに、私の心はギュッと締められたように苦しかった。
あめ
あめ
あめ
さくら
あめ
私は行くべきなんだろうか。
でも、皆んなと会えばまた辛くなるかもしれない。
そんな考えが頭を過るのだ。
私はどうしたいの……?
それが本当の私だったのかはわからない。
でも確かに、変わりたいと願っている気がした。
さくら
さくら
あめ
あめ
あめ
あめ
さくら
さくら
あめ
あめ
さくら
自分でも驚きだった。
行かないでほしいと思うなんて。
花火大会に行きたいと、そう口にしただけだ。
でもそれだけで、私の心は少し軽くなった気がした。
言葉にするだけでも、変化はあるのだなと
私はそんな当たり前の事に、少し感動した。
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