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川と桜に沿った落下防止の緑色の金網のフェンス。
その向こう側から体育館がドーンと存在感を主張する。
そこから聞こえてくる吹奏楽部の奏でる音は、思っていた以上に騒々しい
勇壮に聞こえる演奏も、今日の俺にとっては憂鬱で鬱陶しいだけだった。
残念ながら吹奏楽部の奏でる楽曲は、式が終盤を迎えている事を暗に告げていたからだ。
俺は短く深いため息をついた。
U r _ .
いくら独り言を嘆いても現実は変わらない。
俺は気を取り直して、新品の鞄を脇にしっかり 抱える。
鬱陶しい気持ちのまま体育館横を通り抜けた。
小走りに校門を目指す。
近代的な白いコンクリート。 連なる新設の校舎が俺を出迎える。
校門の中央には、
〝県立常盤南高等学校〟 と書かれたプレートが大きな存在感を出している。
いつも通る時は全く気にならなかったが、入学式初日のプレートは遅刻した俺にぷれっしあをかけるキラーアイテムになっていた。
〝関係者以外通行不可〟 と何やら偉そうに書かれた校門を、ガラガラと力一杯横にスライドさせる。
左右に誰もいないことを確認し、体を滑り込ませた。
N a _ .
不意に声をかけられ驚いた。 明るく透き通った声が、無防備な俺の 斜め後ろから急に聞こえてきたのだ。
ゆっくりと振り返る。
生徒指導の女性の先生だろうか。顔だけを 声の方に向けた。
そこには常盤南高の制服を着たピンク髪の少女が立っていた。植木の脇にポツンと。
白くピンとした袖は優等生の象徴のように見えた
少女は呆気に取られてる俺の顔を見ると クスッと吹き出した。
硬い表情から一気に笑顔に変わった。
その外見は、女性に疎い俺でも一瞬で分かるほどの美少女だ。
グリーンチェックのスカートから白く長い脚が スラッと伸びている。
顔ちっちゃ!目デッカ!超可愛い!
それが俺の彼女に対しての第一印象だった。
U r _ .
とてもぶっきらぼうだったかもしれない。 しかし、それがいきなり話しかけられ、びっくりした俺が返せる精一杯の言葉だった。
女の子は重ねてクスッと笑うと、矢継ぎ早に質問を被せてきた。
N a _ .
この子は俺と同じ遅刻じゃないのか?
だとしたら何でこんなに余裕なんだろう?
新入生って聞くって事は先輩なのかな、?
U r _ .
ひとまず、正体不明の美少女の質問に答えておく。 しかし、心の中はこれまでに無いくらいざわついていた。
相手の素性こそ分からないものの、自分史上見た事が無いレベルの美少女が目の前に立っているのだ。
その状況に俺は完全に虚を衝かれ、動揺を隠そうと必死だった。
ほんのわずかなやり取りではあったが、僕はこの一瞬で彼女の笑顔と声に魅了された。
もしも今鏡を見ることができるなら、目尻は下がり、鼻の下は伸びているに違いない。
自分が恐ろしいほどだらしない顔だと想像し得るから、あえてそこは想像するのをやめた。
次回 ♡150