初 恋 泥 棒 .

...な

...な！

そう言いながら大きな瞳でこちらを見つめてきた。

おそらくずっと考え込んでいたのだろう。

少しクマが出来ている。

いつものわかりやすい嘘をついてくる。

いつものバレバレな嘘を。

この子は行動が可愛い。

もちろん顔も。

大きな目、小さな鼻、整った唇、綺麗な輪郭。

しかも背が小さくて。

なのに....

ツンデレなのだ。

この子は受験生。

なのに頭がものすごく悪い。

だから幼馴染に教えて貰っているそうだ。

しかもその幼馴染も美形。

おそらくその幼馴染のどちらかに恋をしたのだろう。

羨ましいとしか思えない。

身長差のせいで俺を見る目はいつも上目遣い。

可愛い。

斜め下を見ながらノートを受け取る。

少し口角が上がっている。

頬を赤らめながら言うその言葉は

ツンデレしか言わない。

多分。

治には好きな人がいる。

なのに

なのに、

好きになってしまった。

好きになっちゃダメって分かってたのに。

好きになっちゃった、

治のこと。

まだチャンスがある。

なんて、

そんな風に思えない。

今のも嘘。

居ないのも嘘。

本当は嘘つき。

それじゃ...

それじゃまるで

私の事好きみたいじゃん。

恋する乙女を弄ばないでよ。

他に好きな人いるくせに。

きっと治の好きな人は可愛い人で

優しくて

みんなから愛される人なんだろう。

髪の長さはどれぐらいだろうか。

身長はどれぐらいだろうか。

どうやって治の初恋を奪ったのだろうか。

私も治の初恋奪いたかった。