燐
燐
燐
燐
千ト
そこには真っ白な景色が広がっている。 どこまででも続いていそうなのにすぐに終わりが来るような。皇千トはそんな場所にいた。
千ト
周りには何もなく誰もいない、正真正銘のひとりぼっちだ。 辺りは静まり返っており、周りが前面全く同じ白色のせいで五感が鈍る。今自分がどこを向いているのかがあやふやになってくる。
千ト
千ト
千トは泣き出してしまった。泣き声が響き渡る。
親戚A
親戚B
千ト
声が聞こえる。聞き覚えがある声が。 赤く腫らした目を薄らと開けるとそこには見覚えのある景色が広がっていた。 母と父が飛行機事故で亡くなったあと、引き取られた親戚の家だ。
千ト
驚きのあまり涙は引っ込んでいた。 いい思い出なんてちっとも残っていない、遺産目当てで千トを引き取った叔父叔母が目の前にいるのだ。 それにいつも通りの“満面の笑み”で。裏でどんな顔を、どんな事を考えているのか、千トは嫌と言うほど知っていた。
親戚A
千ト
千トは小刻みに震えている。これまでに何をされてきたのか考えれば当然のことだ。 千トが反論した途端、叔母の“満面の笑み”が一気に消え失せる。その顔に映るのは醜く汚らしい表情だ。
親戚A
千ト
叔母はヒスッテリック気味に声を荒げ千トに手をあげた。 頬を打ち、腹部を蹴る。とてもじゃないが他人に見せられる状況じゃなかった。 叔母の顔には薄ら笑いが浮かび上がる。まるで楽しんでいるかのように。 千トには耐えられるものではない。元々異能をのせいであまり体強くないこともあって。 殴り、蹴り、罵倒を浴びせる。そんな事が30分ほど続いただろうか。
親戚B
親戚A
叔母のことを叔父が止める。これもいつもの光景。いつもギリギリでやめる。 千トにはそれすらも憎らしく思えていた。
燐
燐
燐
燐
燐
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