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11 - 第11話 海原

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2025年03月18日

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──海はすべてを呑み込む。


バルドの巨体が落ちる。


ドボォンッ!!


海面に叩きつけられた瞬間、血が泡となって弾ける。沈んだ鎧の隙間から、黒ずんだ赤が静かに流れ出す。


戦場の血の匂いは、海ではたちまち塩と混じり合い、やがて消えていく。


だが、沈みゆく死体は、ただ消えるのではない。


──海の中で、彼はまだ生きているかのようだった。


バルドの瞳は開いている。


見開かれた目は、どこを見つめているのか。


薄暗い水の中、揺れる影。


母の姿が見えた。


「……母さん……」


──しかし、それは葵が見せた幻なのか、それとも死の間際の走馬灯か。


彼の意識はもう定かではない。


沈む、沈む、沈む。


鎧の重みで加速し、深海へと落ちていく。


やがて、光が消えた。


もう何も見えない。


だが、彼はまだ沈む。


このまま、海の底に着くのか?


──否。


闇の中、ぬるりとした何かが動いた。


無数の触手がバルドの死体へと伸びる。


深海の主たちが、獲物の到来を察知した。


バルドの死は、まだ終わらない。

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