「その薔薇に裏切りの香りを添えて」
… story 1
登場人物
はいたに らん (椿の護衛「仮」)
はいたに りんどう (椿の護衛「仮」)
さんず はるちよ
ここのい はじめ (仕事で教師として学校に潜入)
さの まんじろう
あくつ つばき (阿久津組の愛娘)
※この物語は全て捏造を重ねた上で成り立っています。そして、この物語は他の物語との関係がないことをご理解ください。不快に思われる方はいますぐ閉じることをお勧めいたします。
side 阿久津 椿
どちらかといえば、恵まれている。私の人生は、その言葉をなぞったようなものだった。
極道一家に生まれながらも、優しい組員と、組織のお頭である父に愛され、それなりに幸せな生活を送っていた。学校に実家についてバレることもなかったため、学校でも浮かずに、上手く馴染めていた。自分で言うのもなんだが、ダンディーな魅力を放つ父の血をよく引いている私は、それなりに顔も整っていて、恋愛とも共存している。
私は、不幸になることを考えたことがなかった。だって、高望みしていないから。大きな幸せを望まなければ、多くの不幸も訪れない。そう思っていた。父と組員に守られる今の幸せに気づかずに。
私には護衛がいた。名前は、灰谷。兄弟で交代交代で私の護衛を務めている。私はどちらのことも灰谷と呼んでいた。
「お嬢、庭の椿が綺麗に咲いてますよ」
灰谷…確かこちらは、兄の方だ。今日は兄が護衛の当番なのか。
「そうね…とても綺麗」
私は椿の花を一つ摘んで、灰谷に渡した。
「お土産よ。弟にでもあげなさい」
「…お嬢、俺が弟ですが」
「…悪かったわ」
こんなことがしょっちゅうある。別に二人の顔とか、髪型とか、そんなのは似ても似つかないのに。ただ、どこか似たオーラを纏っている。不穏だ。どこまでも澱んでいて、見透かすことができない。
「お嬢、今日の予定は?」
「あ…もう学校に行ってくる。帰るのは5時ごろだと思うけど」
「了解です」
いつまで経っても読めない男たちなのは変わらないが、彼らは私が中学生の時から護衛だったから、謎の安心感があった。素性も知らないというのに、私は彼らを信用しきっている。
「…迎え、頼むわね」
それだけ言って家を出た。
一度行ったと思うが…私の人生は、どちらかといえば恵まれている、だ。いつも通り学校に着けば、数人の生徒に囲まれる。彼らは、私の整った容姿と身なりで、変に私を誤解している。例えば、私がどこかの財閥のご令嬢なのではないかと。
「阿久津さん、今日は電車で来たの?」
「…ええ、そうだけど…」
「阿久津さん、今日はお弁当持ってきた?私が分けてあげようか?」
「大丈夫よ…今日はしっかり持ってきたわ」
「阿久津さん!昨日写真撮れなかったでしょ?今日こそ写真部の…」
「ごめんなさいね、今日は忙しくて…」
ああ、鬱陶しい。私をなんだと思っているのだろう。煩わしい生徒を巻いて、駆け足で階段を一気に上る。
「あれ、椿、そんなに急いでどうしたの?」
突然、柔らかい、悪意と欲のない声が耳に届いた。顔を上げると、そこには大好きな先生が立っていた。
「ココちゃん…!」
「九井先生だろ。君は本当に…」
「ふふ、ごめんなさい、九井先生。私ね、今日の授業が楽しみで学校に来たの」
九井先生は小さく首を傾げて、指先で顎に触れた。
「今日は…君のクラス、特に好きそうな教科はなかったと記憶しているが…」
「今日は、先生の授業があるでしょ?化学!とっても楽しみ」
先生は呆れたように笑った。
「そうか。寝ずにちゃんと受けるんだぞ」
私は曖昧に頷いて、先生に礼をすると、教室に向かって歩き出した。
“ あれ、今日はやけに…胃が苦しくなる日だな… ”
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