「おじゃましまーす!」
「いらっしゃい!手洗いに行こ!」
「はい!!」
やっぱり、素直で可愛いと思う。そんなお前だから、だから、俺は…
「潔おにーちゃん、手洗うとこどこー?」
蜂楽がかける声にはっとする。
「こっちだよ!ついてきてーニコッ」
「はぁーい!」
俺は、本当に蜂楽を連れてきて良かったのだろうか。やっぱり、千切に任せたほうが良かったかも知れない。
でも、俺は蜂楽にこいつを会わせてやりたい。そして、『君は自由でいい。』って本人から言ってほしいんだ。
それでも、やっぱり…なんて、そんな考えがずっと頭の中をぐるぐる駆け巡っている。
「潔おにーちゃん手洗ったよー!!」
「ギュッ」
「んぇ?」
手を洗って戻ってきた蜂楽を無意識に抱きしめる。でも、抱きしめていることに気づいても離すことが出来なかった。
「どーしたの?」
「ごめん…ちょっとだけこのままで居させて…」
自然と涙が出てくる。蜂楽とずっと一緒に居たかった。俺のせいなんだ。
「…大丈夫だよ。落ち着くまで泣いててギュッ 俺は目瞑ってるから、見えないよ。」
蜂楽の優しさに、更に涙が出る。泣いてるところを見ないでくれて、抱きしめてくれる。
優しいよ、優しすぎるよ。なんで、初めて会った俺にこんなに優しくできるんだよ。
なんで初めて会った俺を信用して家まで来るんだよ。なんでだよ。
「ナデナデ大丈夫、大丈夫だから。安心して。」
初めて会った俺の頭を撫でて、慰めて、安心させてくれる。
昔から、一緒にいると心強いのは変わってなかったんだなぁ。
一緒にいると、安心して、自然と笑える。俺の中で、一番大きな存在だったんだよ。お前は。
「…ありがとう、ありがとうギュゥゥッ」
ずっと前に一目みたときから、ずっとお前には謎の安心感があった。
その安心感がどこから来るのかはわからなかったけど、側に居たいと思ってたよ。
「いいよ。俺はだいじょうぶ!それより潔おにーちゃん、」
俺を抱きしめていた手を、今度は俺の顔に当て、顔をあげる。
「俺を、家に入れてくれてありがとうニコッ あのね?俺、潔おにーちゃんと同じ名前の男の子と会ったことあるんだよ?」
そう言って蜂楽は話し出す。
「目が青色で、サッカーボール持った男の子。キレーな子だったんだー!俺と目があった瞬間隠れちゃって、逃げちゃったけど、優しそうで、サッカー、一緒にやってた子に聞いたら、潔おにーちゃんと同じ名前だったの。」
どこか寂しそうで、でも嬉しそうで、幸せそうな顔をしている蜂楽を、俺は涙を流したまま見つめることしかできなかった。
『潔、泣かないでよ。俺、潔が泣いてると苦しいよ。』
その言葉に、昔、君より大きくなった蜂楽が重なる。
「へへっ、潔呼び!でも慣れないやー、やっぱ潔おにーちゃんって呼び方が安心する!」
そう言う君と、俺はまた、ほんの少しだけ、このままがいいと願ってしまった。
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