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◆◆◆◆
「本当にこの方法で、トゥルーエンドになるのかな」
「なる!絶対なるって!」
「てかこの作戦、俺の負担が重すぎるだろ!」
日はすっかり落ち、時間は22時になったところだ。
3人は布団の上に、キャラクターメモを並べながら作戦会議をしていた。
「文句言うなよ。お前以外には無理なんだから。東を助手につけただろ」
「東ぁ?役に立たねえって!」
比嘉が八重歯を剥いた。
「大丈夫。死んでも俺たちがゲームクリアしてやるから!お前は思いきり暴れて、死んでも殺せ!」
渡慶次が親指を立てると、比嘉は目を細めながら睨んだ。
「なあ。これ漠然とした予感なんだけど、俺とお前って仲クソ悪かっただろ」
「ご名答」
渡慶次は笑いながら、再度メモに目を落とした。
気味の悪いピエロが両手を広げて笑っている。
「問題は、上間がアレを本当に持っているかってことだよな」
渡慶次が首を捻る。
「さっきLAINで、持ってるか聞いたんだろ?」
比嘉が言うと、
「持ってるって言ってたけど、遠征のためかもしれないし」
「大丈夫」
知念の声に、渡慶次は顔を上げた。
「きっと持ってるよ。信じよう」
「……ああ!だな!」
渡慶次はスマートフォンをキャラクターデザインの上に置いた。
相変わらず黒い画面には「Continue?」の字が浮かんでいる。
「本当にいいの?」
知念が渡慶次を見つめる。
「君の話を聞くと、元の世界より今の世界の方が断然幸せそうなんだけど」
「――知念もな?」
比嘉は布団に肘をついて寝っ転がりながら言った。
「俺は、別に……」
知念が俯くと、比嘉は渡慶次に視線を戻した。
「なあ。俺のダチってのは楽しい奴?」
「え」
「いたんだろ?タマシロとテルヤだっけ?一緒にいて楽しい?」
渡慶次は少し言葉に迷ったが、比嘉をまっすぐに見つめていった。
「俺はあいつらといても楽しくないけど、お前は楽しいと思うよ」
「なんだそれ――馬鹿にしてんのか?」
比嘉が肩眉を上げる。
「馬鹿にしてないよ。いつも笑ってた」
渡慶次が答えると、
「…………」
比嘉はムクリと起き上がった。
「よし……!」
渡慶次は二人を見つめた。
「じゃあ……」
「あ、ごめん。タンマ」
知念が手を翳した。
「渡慶次。悪いけどこれ、その世界の俺に届けてくれない?」
それはベージュ色の古めかしいナップザックだった。
「セーブ地点に戻った時、たぶん俺と比嘉は、こっちでの記憶がないはずだから」
「いいけど……こっちのもの、あっちに持っていけるのかな」
渡慶次が苦笑いをすると、
「大丈夫だよきっと。信じよう」
知念が確信を得たような表情で呟いた。
「よし。じゃあ、行くか……!」
渡慶次は人差し指を突き出した。
比嘉がなぜか中指を立て返してきて、知念がそれを見ながら少し笑い、大きく頷いた。
「YES」の文字に指を翳す。
――何やってんの?お前。俺。
冷静な自分が脇からツッコミを入れる。
――このままなら、上間とラブラブだし、知念は友達いるし、比嘉は大人しいし、いいことしかないのに、どうして元の世界をやり直そうとしてんだよ。
それは……。
渡慶次は意識の中の、自分にそっくりな格好をした男を睨んだ。
俺は、俺が作ったあの世界に、俺が追い込んだあいつらに、責任があるからだよ!
渡慶次はYESの文字を手を翳し、
「全員で帰る。そしてやり直す。話はそれからだ……!」
比嘉と、そして知念の顔をみながら、
強く押した。
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るさない……
ゆるさない。
あなただけは……。
いくらあやまって、
いくらないてこうかいしても、
ぜったいに、
ゆるさないよ……
◇◇◇◇
「すげえ……!」
ドクターを切り抜けると、比嘉は知念の顔をのぞき込んだ。
「どんな手品使ったんだよ?」
「別に」
知念は階段の手すりに手をかけた。
「別にってことねーだろうよ」
踊り場で振り返った知念の胸元には、
黒いカードが揺れていた。
――黒いカード。俺たちのとは何が違うんだ……?
自分の首に下げられた赤いカードを見ながら首を捻る。
と、先に踊り場を曲がったはずの知念が、目の前に止まっていて、小柄な彼の頭頂部と顎先を強打してしまった。
「……ってえな!何してんだよ!」
牙を剥くと、知念はただ突っ立ったまま階上を見上げていた。
「遅かったな」
いつからそこにいたのか、渡慶次と上間が階段に座っていた。
「……すごーい。ホントに来た。どうして知念くんたちが来るのがわかったの?」
上間が目を見開いている。
「やっぱり……」
渡慶次は知念の肩越しに、比嘉を見つめながら言った。
「お前は銀髪の方が似合うよ」
「―――はあ?」
会話の意図がわからず、比嘉は眉間に深く皺を寄せた。
「――何か、あった?」
知念がやけに落ち着いた声で言う。
「ああ」
渡慶次は立ち上がった。
「ありまくった。すげえいっぱい」
知念の、そして比嘉の肩を叩く。
「知念。比嘉。作戦の練り直しだ」
渡慶次は知念の無表情な顔を見つめた。
「俺たちはハッピーエンドじゃなくて、トゥルーエンドを目指す……!」
「――はあ?」
比嘉は渡慶次を睨み上げた。
わけのわからないことを言い出した渡慶次の目には、
今までにはなかった光が宿っていた。