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「…ン……」
目を覚ますと目の前は薄暗く、辺りを見渡すと枯れ木がいっぱいに広がっていた。
ここに来る前のことは覚えているのだろうか…
……ダメだ、思い出せない。
「お?君は。」
ざ、と枯葉を踏み鳴らし、僕の前に立って見下ろしている。その人は何故かペストマスのようなものを被っており、鎌を持っていた。
「君、まだ魂だけの姿だね。付いてきて!いい所に連れてってあげる!」
その人は後ろを振り返りザッと、走っていった。僕はそれを追いかけるように後ろについて行く。走っているのに、地面が足に着いていない。
ほんとに魂だけなようだ。
「着いたよ。亡国の町さ。」
亡国の町、その町はもう命無きものが集い、それぞれが何周目かを迎える前に生活を育む所。
そうか、僕は死んだのか。
「さっき言ったように、君、まだ魂だけの姿なんだ。なくす前の人生や性格で姿形が決まるんだ。」
そうペストマクスの人は言う。
そういえば僕は、身体が、実態がない感じだった。
「………〜ーー?」
「それはそれ専門のとこがやってくれる。あくまでボクは、ここまで案内するだけさ。」
「疲れるだろうけど付いてきて、あとちょっとで着くよ。」
がり、がりとマスクを掻きながら言う。後ろを振り返り、先に進む彼を追いかけるように付いて行った。
…………
。
。
。
「着いたよ。ここがなきものの服屋。
ここではまだ魂だけのものの姿形をつくってくれる。」
「✩…?!ーー」
「姿形をつくってくれれば、みんなに声が聞こえる様になるよ。
あ、ボクはここまでだ。じゃあね!」
サッ、と走って去ってしまった。
とりあえず、中に入ればいいだろうか。
からん、ころん。
「ん。お客さん?」
静かな店内に鐘が鳴り響く。
今日のお客さんは魂だけの姿の子だ。
このお客さん、何か変だ。
「…………」
「あー、案内の人に連れて来てもらったんだね。
じゃあ、今すぐ準備するからちょっと待ってね。」
レジにある椅子からゆっくりと立ち上がり、製作室へと向かった。粗方用意するものを談話室へと持っていき、魂君の所へ向かった。
「で、今から君の形をつくっていくんだけど、その前にこの鏡を見てくれる?」
「…………★★、、ー?」
「そう、集中して、鏡を見るんだ。君が魂になる前のことがこっちへ流れてくる。」
そう言うと魂は鏡へと姿を近付けた。
流れてくる、感じる。
貴方の生き方。
とても何かが引っかかる、残酷で偽物な人生。
「もういいよ、お疲れ様。よく頑張ったね。
今日は…って寝ちゃってる…」
魂は小さく丸くなり、疲れた姿で寝ていた。
この間にきっと姿はできるだろう。
おやすみなさい、魂。
「ぅ…え?」
ここは…何処だろう?
そういえば、形をつくるためにここに来たような…
「不思議、ちゃんと体も触れる。」
これが形だろうか、魂の時とは違い、はっきりと何かを感じとれる。人間みたいだ。
「あ、おはよう、魂君…って今は違うけどね。」
奥の部屋から出てきたのは店主だろうか。
腕が何本もある…この人が形を作ってくれた人、なの?
「君、まだ自分の姿見てないでしょ?
鏡あるから見てみてよ」
鏡の前に立つと魂の時とは違う、かたちがあった。髪の毛はくるくるで、茶色。黄色の上着に深緑のセーター、下半身溶けては無くなっていた。
「これが…僕の形?」
「そう、君の形、象徴とも言っていいね。」
「っぁ…この仮面……」
がり、と爪を立て仮面を掻く。にこりと笑うこの仮面だけがどうしても取れずにいた。
「その仮面ね、あー…なんと言ったかな…特徴?的なもので一番の象徴なんだ…」
「特徴…?」
「そう、特徴。みんなにあるよ。それが壊れれば自身の崩壊にも繋がるんだ。」
「ちょっと待ってね。朝ご飯つくるから」
店主さんが多数の腕を動かしながらそう言った。溶けた指を弄りながら待っていると、からんと鐘がなり、案内の人が入ってきた。
「お、形を作ってもらったんだね。」
「あ、案内人さん。」
「案内人……?あー、ボクの名前言ってなかったね。ボクはドゥルプ、ドゥルって呼んで!」
ドゥルプが胸をぽんと叩き、自慢げにそう名乗った。
鎌を引き摺りながらこっちへ向かってくるところに店主さんがご飯を持ってきてくれた。
「あ、イェル。おひさー」
「ドゥルくん、久しぶりじゃない?最近魂がいなかったもんね〜」
親しげに店主さんとドゥルプが話す。友達なのだろうか、
「あ、ご飯出来たよー。形できたら次は力をつくってもらうんだ、なるべく早めに行くこと、だね。」
少し小さめな匙にスープを掬い、口に入れながらそう話した。
何故早く行かなければならないのだろうか、少し疑問に思った。
「なんで早く行かなくちゃダメなんですか?」
「あーそれね、形だけあっても力がなきゃ意味が無いんだ。そのまま力なきままだったらその形もいずれ崩れてしまうんだ。」
こと、と器を置き腕を膝に起きながら話す。
とりあえず、急がなきゃいけないことには変わり無かった。
「行ってきます!」
「ボクも行かなきゃ、じゃね、イェル!」
「あ、待って!その人はかなりの曲者…って、
行っちゃった…」
「何かあったら行くしかないよね、まだ力の無い魂が、試練なんて越えられるわけない…」
1ページ目は終わりです。
2ページ目はようやく力を手に入れるところです!
それではまた〜ノシ