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100年前のラグナロク王国はさぞ栄えていた。
かつて、レイス・ワイルはラグナロク王国直属の近衛部隊――「百北開聞隊」の隊長であった。
王国最強の戦士たちが集うこの部隊の中で、レイスは異色の存在だった。
「よーし、お前ら!昼寝から始めようか!」
「隊長!訓練をしてください!」
「いやいや、まずはリラックスが大事だろ?戦場でも心の余裕ってのは……ぐえっ、ちょ、殴るな!」
隊員たちからのツッコミと鉄拳が飛び交う中、それでも彼は笑っていた。彼の戦闘技術は超一流だったが、その性格はどこまでも陽気だった。。
そんな彼が、一夜にして変わることになったのは――興魔族ケンドラ氏倒壊任務の時だった。
──100年前、ラグナロク王国南部、ケンドラ城塞。
興魔族――人と魔の混血であり、超常の力を持つ者たち。その中でもケンドラ氏は万年の歴史を誇る強大な一族だった。
彼らが反乱を起こし、王国軍は討伐を決定。百北開聞隊に白羽の矢が立てられた。
「よし、みんな行こうぜ!俺たちの勝ち戦だ!」
いつも通り隊員たちを鼓舞し、城塞へ突入したレイス。しかし、そこで彼が目にしたのは――
地獄だった。
ケンドラ氏の力は予想を遥かに超えていた。圧倒的な魔術、異形の召喚獣、狂気に染まった戦士たち。
仲間たちが、一人、また一人と血飛沫を上げ、倒れていく。
「隊長……撤退を……」
「……冗談じゃねえ……俺たちが負けるわけねえだろ……」
だが、現実は無慈悲だった。レイスの部隊は壊滅し、彼自身も瀕死の重傷を負う。
そして、その時、“彼”が現れた。
「汝、何を求める?」
深淵の闇から響く声。
レイスは、血に染まりながら叫んだ。
「……俺は……強さを……仲間を守る力をくれ……!!」
その瞬間、彼の身体は異形へと変わっていった。
そして――
百北開聞隊は消え、ケンドラ氏も滅び、戦場は静寂に包まれた。
彼だけが生き残った。
しかし、その代償に彼は“何か”を失ったのだった。