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100年前、ケンドラ城塞陥落──
その日、ラグナロク王国史上最も凄惨な戦いが繰り広げられた。
百北開聞隊は、かつて王国最強と謳われた近衛部隊。
だが、興魔族ケンドラ氏の力は、それを遥かに凌駕していた。
レイス・ワイルだけが生き残った。
だが、それは本当に“生き残った”と言えるのか?
──目を覚ました時、彼は戦場の中央に立っていた。
視界に映るのは、仲間たちの無惨な亡骸。
地面は血に染まり、夜闇を裂くように燃え盛る炎が揺らめいていた。
「……俺は……」
剣を握る手が震える。
自分が何をしたのか、思い出せない。
最後の記憶は、あの声。
「汝、何を求める?」
──力を。
仲間を守る力を。
それだけを願ったはずだった。
だが、現実はどうだ?
気づけば、ケンドラの者たちもまた消えていた。
滅びたのだ。自分の手によって。
“その手に宿るもの”
レイスの右手には、異形の刻印が浮かび上がっていた。
黒い紋様が皮膚に焼き付くように広がり、そこから僅かに魔力が漏れ出ている。
──まるで、呪いのように。
「まさか……これが“代償”だってのか?」
声がかすれる。
振り向けば、戦場には誰もいない。
仲間も、敵も、全て消えた。
「俺が……全部……」
レイスは静かに膝をついた。
──それ以来、彼は王国から姿を消した。
かつての彼はもういない。
残ったのは、孤独。
そして、彼がその“代償”の真実を知るのは、さらに長い時が経った後のことだった。