「まだ遊べそうだ。」
レイスの赤い瞳が妖しく光ると、血の触手が一気に蠢き、まるで檻のようにサブたちを囲い込んだ。
「……マジでアカンやつやん。」
みりんが舌打ちしながら長剣を構える。
「どうする? 一気に突破する?」 萌香が短剣を握りしめながらサブに視線を送る。
「突破できるかどうかの問題じゃなくて……」 サブは銃を構えたまま、冷や汗を流す。
「……あの吸血鬼、マジで強すぎる。」
レイス・ワイル。
124年生きた吸血鬼にして、勇者殺しと呼ばれる魔法使い、如月まどかと互角に戦える化け物。
「……なぁ、おまえら。こっから逃げられると思ってんの?」
レイスが不敵な笑みを浮かべると、血の触手がじわじわと迫る。
「ちょっと、近い近い! てか、マジで気持ち悪い!」 萌香が短剣で触手を払うが、切った瞬間にまた再生する。
「くっそ、やっぱり再生するんか……!」 みりんが剣を振るうも、状況は変わらない。
「もうええわ!!」
みりんが叫び、思い切り剣を振り下ろすと──
ズバァッ!!
空間ごと血の触手を斬り裂いた。
「……おおっ!?」 サブと萌香が目を見張る。
「へぇ……なかなかやるじゃん。」 レイスが面白そうに目を細める。
「せやろ!? これが僕の本気や!」 みりんが得意げに剣を構えた瞬間──
バシュッ!!
レイスが指を動かすと、切られたはずの血が即座に変形し、槍のようになってみりんの肩を貫いた。
「ぐっ……!!?」
「みりん!!」 サブと萌香が叫ぶ。
「……調子に乗るなよ?」 レイスが冷たい声で囁く。
「なぁ、勇者サマ?」 レイスがサブに視線を向ける。
「おまえ、どうやって俺から逃げる気?」
「……。」 サブは銃を握りしめながら、歯を食いしばる。
「──そんなの簡単だよ。」
突如、まどかが笑いながら呟いた。
「……え?」
次の瞬間──
ドォォォン!!
爆発音とともに、血の檻が一瞬で吹き飛んだ。
まどかの魔法が、レイスの血の触手を粉砕したのだ。
「……ちっ、やるじゃん。」 レイスが舌打ちする。
「さぁ、勇者サマ。行くよ?」
まどかがサブにウインクする。
「今なら逃げられる──走れ!!」
「……!!」
サブたちは迷わず走り出した。
背後では、まどかとレイスの戦いが激しさを増していく。
「……逃がすかよ。」 レイスが呟き、血の魔法を放とうとするが──
「フクロウ!!」
まどかの肩に乗っていたフクロウが鋭く鳴くと、レイスの視界が一瞬ブレた。
「……っ!!?」
その隙に、サブたちは森の闇へと消えていった。
「……おもしれぇな。」 レイスが小さく笑う。
「ま、いいや。またすぐに会えるだろ。」
そして、まどかもフクロウを撫でながら微笑んだ。
「ふふ、楽しみだねぇ、勇者サマ?」
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まさかのまどか隠れ味方、!?