サブ、みりん、萌香の三人は、なんとかレイスの魔の手から逃れ、ボロボロの状態で王都へとたどり着いた。だが、ここで待ち受けていたのは、さらなる試練だった。
城門の前には、王国の近衛兵がずらりと並び、サブたちを冷たい視線で見下ろしていた。
「……ようこそ。」
鎧に身を包んだ騎士が一歩前に出る。
「貴族夫人である萌香様の引き渡しを命じられている。……おとなしく従え。」
「は?」 サブの表情が一瞬で険しくなる。
「おいおい、冗談やろ? こっちは命がけで逃げてきたっちゅうのに、何が ‘引き渡し’ やねん!」 みりんが剣を握りしめる。
「……すまん。」 萌香がうつむいたまま、ぽつりと呟いた。
「え?」
「私……本来なら貴族の嫁。王国にとって ‘重要な資産’ なのよ。」
「……は? つまり、お前は ‘物’ 扱いか?」 サブが拳を握りしめる。
「そういうこと。」 萌香はかすかに笑ったが、その目はどこか諦めていた。
「おいおい、ええ加減にせぇよ。」 みりんが低い声を出す。
「こんなボロボロの状態で戻ったら、待っとるのは……」
「──処刑か幽閉か、どっちかやろなぁ。」
近衛兵の騎士が冷酷に言い放つ。
「……あのなぁ、お前ら。」 サブが一歩前に出る。
「こいつは今、命がけで逃げてきたんやぞ? それを ‘はい、元の場所に戻れ’ ってか?」
「……そういうことだ。」
その瞬間、サブは銃を構えた。
カチャッ
「……悪いけど、俺は ‘おとなしく従う’ つもりはないんでね。」
「貴様……!」 近衛兵たちが剣を抜く。
「やるんか? ここで?」 みりんも剣を構える。
「……やめて。」 萌香が小さく呟いた。
「……え?」
「私、行くわ。」
「は?」 サブとみりんが同時に声を上げる。
「ここで戦っても、どうせ私たちは勝てない。それに……王国には ‘伝えなきゃいけないこと’ があるの。」
「……伝えなきゃいけないこと?」 みりんが眉をひそめる。
萌香はゆっくりと顔を上げた。
「──龍神が、死んだってことを。」
その言葉に、場の空気が一変した。
「……何?」 近衛兵の騎士の目が見開かれる。
「龍神陛下が……死んだ……?」
「ええ。私たちは、その ‘目撃者’ なのよ。」 萌香が毅然とした声で言った。
王国の最高権力者、龍神の死。
それが意味するのは、王国の混乱と、これから始まる新たな戦い だった。
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