━翌朝 食堂内にて
皿に盛り付けられた山盛りのローストビーフを頬張りながら、ふとした拍子にルフィが口を開いた。
「なあよぉ、昨日夜中隣の部屋がガタガタ音立ててうるさかったぞ」
「お前起きてたのかルフィ?」
少し不機嫌そうな顔をしてウソップが問い掛ける。その隣では食後の紅茶を楽しんでいたロビンも興味深そうにルフィの方を見つめている。 …いや、2人だけではない。その場にいた全員がその話に聞き入っていた。
「それに、ゾロと一緒の部屋で寝たサンジはまだ起きてこねえしよー」
「え?サンジさん、まだ起きていらっしゃらないんですか?」
「そうね、いつもならこの時間はとっくに起きているはずなのだけれど」
女性陣が心配そうに顔を見合わせる。そんな中ルフィはというと既におかわりの皿を手にして再び肉を頬張っていた。そんな様子に呆れつつ、ゾロは小さく溜息をついて立ち上がった。
「あれ、どうしたんだゾロ?」
「コック起こしてくる」
そしてそのまま食堂を後にすると真っ直ぐに昨日いた部屋へと戻っていく。扉を開けるとそこには案の定ベッドの上で胡座をかいているサンジの姿があった。
「オイコラ、テメェ…」
半裸の白い肌には所狭しと赤い跡が残り、声は掠れ使い物にならないのかやや聞き取りずらい声量でサンジが口を開く。
「なんてことをしてくれやがったんだ」
「あ?テメェがあんまりにも煽ってくるからだろ。」
「てめェ…この野郎、気ィ失うまでやる奴があるか!おれは初めてだったんだぞ!」
サンジは勢い良く起き上がると怒りに任せてゾロの胸元を拳で叩く。しかし、その程度で動じるはずもなく平然とした様子でこちらを見下ろしているゾロに苛立ちを覚えたのか今度は蹴りを入れようと試みたがあっさりと避けられてしまう。
「おいコック、飯の時間だぞ。早く支度しろ」
「……誰のせいだと思ってんだクソマリモ…いけるか、こんな姿で」
「テメェの服で隠れる位置だからいいだろ」
「そういう問題じゃねェんだよ!」
サンジは怒鳴り散らすものの、やはり痛むのか時折腹部に手をやる様子にゾロは思わず苦笑してしまう。
「とりあえず何か羽織っておけよ。」
そう言い残し部屋を出ると食堂へと足を運ぶ。残されたサンジは小さくため息をつくと重い身体を起こして着替え始めたのだった。
この日から数日の間、やけにゾロに対するサンジの機嫌が今まで以上に悪かったことは言うまでもない。しかしそれが怒りによるものなのかそれとも別の感情からくるものなのか……それは本人からしか知る由もない事だった。
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