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◆◆◆◆◆
『まもなく3番線に電車が参ります』
ホームに電車が入ってきて、右京は立ち上がった。
「――――!」
その瞬間、女の顔を思い出した。
間違いない。あれはいつか保健室で蜂谷とセックスしていた女だ。
あの女がなぜこんな時間に学校へ―――?
また蜂谷と落ち合って、何か情報を共有するのだろうか。
それと共にまた身体を交らわせて。
―――させるかよ。
もう何が真実であろうがどうでもいい。
俺はあいつを――。
あいつの、その行為を――。
許せない。
憎いんじゃない。
ムカつくんじゃない。
ただあいつに――。
そんなことしたくないんだ……!
右京は踵を返すと、ホームへの階段を駆け下りた。
◆◆◆◆◆
「ち、違うんだよ。右京……」
目の前に転がる男たちに青ざめながら永月が、右京に駆け寄った。
「全部、この女が……響子がさぁ」
言われた響子は目を見開いて永月を見上げた。
「今まで、身体を好きに使わせられてたからって、どうしても蜂谷に復讐したいって言ってさぁ。話を聞いたらあまりにひどかったから、俺もつい同情して加担しちゃって―――」
「ちょっと…!」
響子が永月を睨み上げる。
「結果的に右京まで巻き込んだことになっちゃったけど、それでも俺のお前への気持ちは本当だったんだよ……?」
右京は大きな目で、自分の肩を掴んでいる永月を見上げた。
「出会いはあんなんだったけどさ。でも右京が転入してきてくれて、話せるようになって楽しかったし、それにこういう関係になれたのも俺、本当に嬉しくて……」
「……もういいよ……」
右京が目を伏せる。
「右京のこと好きだし、本当にこれから、大切にしていきたいと思ってるし」
「……もういいって……」
「こんな気持ちを他人に抱くことって初めてで……。愛してるんだ。お前のこと……!」
「……もういいから!ちょっと黙れよ…!」
右京は永月の胸倉を掴み上げた。
「―――――」
「……………」
永月の拳が一瞬握られる。
しかし転がった5人を見つめ、それも虚しく力を無くした。
ふっと憑き物がとれたような顔をして、永月が右京に微笑む。
「……いいよ。右京。殴っても」
「――――?」
「お前には俺を殴る権利がある」
「――――」
「でも、好きなだけ殴ったら……」
永月は右京を見下ろし、口を左右に裂きながら、にんまりと笑った。
「……田舎に帰りな、お坊ちゃん?」
「…………!」
右京は拳を握りしめると、それをフルスイングで永月の頬に突き入れた。