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山本が部屋に入ると、七海建人が腕を組みながら立っていた。
「山本君、今日から君には呪術の基礎知識を叩き込みます。」
「は、はい!頑張ります!」
山本は真面目な顔を作るが、すぐに七海のカッチリしたスーツ姿に気を取られる。
(なんでこの人、呪術師なのにサラリーマンみたいな格好してんの…?)
七海はため息をつき、ホワイトボードを取り出した。そこには太字で書かれた文字が――
「宿儺」
「……え、スクナ?」
「“すくな”です。」
「すみません、なんかこう、牛丼屋みたいな名前ですね。」
「……言うと思いました。」
七海はピシッとホワイトボードを指し、冷静に説明を始める。
「宿儺とは、千年以上前の時代に実在した最強の呪術師です。彼は呪霊ではなく、人間だったが、あまりにも強大すぎて、死後も魂が呪いとして残り続けています。」
山本は腕を組みながら、「ふむふむ」と頷く。
「要するに、歴史上最強のラスボス的存在ってことですね?」
「まあ、簡単に言えばそうです。」
「倒せるんですか?」
「無理です、絶対。」
「即答っすか!?」
七海は冷静な表情のまま、淡々と説明を続ける。
「宿儺の力は20本の指に分けられ、現在、その指は各地に封印されています。仮にそれらが全て集まった場合…」
「ヤバいことになる、と。」
「……その通りです。」
七海は眼鏡を押さえながら、山本にジロリと視線を向ける。
「いいですか?山本君、宿儺の力は想像を絶します。君の”発狂”など、彼の前ではただの”軽い悪ふざけ”に過ぎません。」
「え、軽い悪ふざけ扱い…?僕、けっこう深刻なんですけど…」
「そうでしょうね。しかし、宿儺はそれ以上の”災厄”そのものなんです。」
「ええぇ…マジかよ…」
山本は肩を落としながらぼやく。
「いや、でもそんなヤバいやつ、今の時代には関係ないですよね?」
七海はため息をつきながらポケットから週刊誌を取り出し、バサッと山本の前に広げた。
「東京某所にて謎の大量失踪事件 呪いの仕業か?」
「…え?」
「最近、宿儺の指が何本か見つかっています。そして、その影響か強力な呪霊が増えているんです。」
「……まさか。」
「まさか、では済まないんです。」
七海は腕を組み直し、鋭い目つきで山本を見る。
「君も、例外ではない。もし戦場で宿儺の力に触れたら――」
「発狂するんですか?」
「……そうですね。」
「いや、冗談抜きでやめてもらえます!?」
七海は一瞬笑いをこらえながらも、すぐ真剣な表情に戻る。
「とにかく、宿儺の存在は頭に入れておいてください。これは冗談では済まされないことなんです。」
「うう…呪術師の世界、怖すぎる…。」
山本は肩を落としながら、週刊誌の見出しを見つめた。
「っていうか、週刊誌に載るほど呪術師って世間にバレてるんですね?」
「いや、この記事を書いた記者はすでに失踪しています。」
「余計怖いわ!!!」