七海の話を聞いた山本麹は、「宿儺」についてもっと詳しく知るために、呪術師の情報が流出したという週刊誌の編集部に向かうことに。しかし、そこに待っていたのは、呪術とは無縁そうな編集者たちと、一筋縄ではいかない“呪い”の気配だった——!?
[週刊誌編集部・玄関]
ビルの古びたドアを押しながら、山本は不安そうに呟いた。
「本当にここで呪術の情報が漏れたんですかね?なんか、怪しい気配は全然しませんけど…」
隣に立つ七海は腕時計をチラリと見て、無表情のまま頷く。
「実際に消えた記者がいたのは確かです。”発狂”を使わず、冷静に対応してください。」
「いやいやいや、そんな言われても無理ですよ!冷静にしてたら発狂しますよ!」
「冷静じゃなくても発狂しているじゃないですか。」
「そりゃそうなんですけど!」
七海がため息をつきながら、受付の女性に名刺を渡した。
「我々は調査のために来ました。消えた記者についてお話を伺いたい。」
受付嬢はチラリと七海を見上げ、メガネをクイっと上げながら答える。
「呪術師の方ですね…お待ちしておりました。」
「待たれてたんですか!?何かあるんですか!?」と山本が慌てるが、受付嬢は無表情で首を横に振った。
「いえ、最近よく来るので。」
「最近!?」
七海は黙って奥へと進む。
中に入ると、雑然としたオフィスに数人の編集者が忙しなく働いていた。デスクには資料や呪術の記事が山積みになっている。
「……思ったより怪しいですよ。」
「意外とガチですね…」
すると、ひとりの疲れ切った編集長が振り返り、二人を見て驚いた。
「おお!呪術師さん!?よく来てくれました!実は、ウチの記者がいなくなってから、夜な夜な妙な音がしてまして…」
「妙な音?」と七海が鋭く聞き返す。
「ええ…こう、”ギャハハハハ”みたいな不気味な笑い声が…」
「いや、それ絶対ヤバい奴じゃないですか!?」山本が青ざめる。
「……すでに呪霊が潜んでいる可能性がありますね。」
七海が冷静に分析する中、山本はデスクの上に置かれた雑誌を手に取った。
『世にも奇妙な失踪特集!呪術師の影とは!?』
「……結構、やりたい放題ですねコレ。」
「取材してた記者は、宿儺の指が関係してるって言ってたんですよ。でも、その後行方不明になって…」
七海が鋭い眼差しで部屋を見回し、突然歩みを止めた。
「山本君、気配を感じるか?」
「え?えーっと……」
その瞬間——
バサバサバサ!!
壁にかかっていた大量の週刊誌が突然床に落ちた。山本は思わず飛び上がる。
「ひっ!呪い!?呪いですか!?発狂していいですか!?」
「待て。」七海が前に出る。
突然、黒いモヤのようなものが部屋の隅から滲み出し、そこから奇妙な笑い声が響き始めた。
「ギャハハハ…!この雑誌、面白ェなァ…!!」
「うわっ、なんか陽気な呪霊出てきた!!」
姿を現したのは、ボロボロの新聞紙が絡みついたような姿の呪霊だった。
「コイツは…“ゴシップの呪霊”か。」
「いや、そんなんいるんですか!?」
呪霊は編集部の机を漁りながら、週刊誌を次々に手に取り——
「偽情報サイコー!面白ければそれでいいのサァ!!!」
「思想が軽い!?」
七海は静かに領域を展開しようとするが、山本が慌てて止める。
「待ってください、あの…発狂、試してみてもいいですかね…?」
「…好きにしろ。」
山本は一歩前に出て、ゆっくりと手を前に出した。
「俺の術式を見せてやる…!」
「発狂!!!」
呪霊の前で叫ぶ山本。しかし、呪霊はピタリと動きを止めると、数秒の沈黙の後——
「ワハハハ!面白ェェェ!!もっとやれやれ!!!」
「効いてねぇぇ!!!」
「だと思った。」
七海は冷静に、呪霊を一撃で殴り飛ばし、呪力を込めた刀で止めを刺した。
呪霊はバラバラの新聞紙となって消え去った。
編集部は元通りになり、七海と山本は帰路についた。
「お前の“発狂”、呪霊には相性が悪そうだな。」
「いや、あいつ笑ってましたからね!?逆に元気出てましたよ!?」
「だが、一つ確かなことがある。」
「なんです?」
「宿儺の指に関わる情報は、本当にこの会社が掴んでいたようだ。」
「……あ、ホントにやばい方ですねこれ。」
山本の顔が引きつる中、七海は静かに歩みを進める。
「次は、記者の行方を追う。覚悟しておいてください。」
「は、発狂の準備しときます…」
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