『もう1人の自分』に会った翌朝。
僕は昨日の夢のことが気になっていた。
(もう1人の自分…か)
(最後の言葉、なんだったんだろ。)
そんな事を考えながら朝食を済ませ食器を洗いながら更に考える。
(あの夢の人、もう一度逢えたら最後の言葉聞いてみよう。)
ただの夢に惹かれた。そんな僕はもう一度『もう1人の自分』に逢える気がしていた。
「まこ!さっきからボーっとして具合でも悪いの?」
そう問いかける美人は『薄氷 真央』(うすらい まお)、僕の母親だ。
「ん?いや、具合悪いとかじゃなくて考え事してただけ。大丈夫だよ。」
面倒見がいいと言うべきか親バカと言うべきか…、自分の母親を美人と呼ぶ時点で人のことは言えないか。
僕の家に今は母親と僕しかいない。『今』と言ったのには理由があって、父親は2年前に他界した。兄と姉が居るが2人とも別の地域に住んでいてしばらく会っていない。
「今日、学校でしょ?遅刻するよ?」
母親がそう言うと時計は7時30分を指していた。
「うん。そろそろ準備して行ってくる。」
僕こと『薄氷 諒』(うすらい まこと)は今日から高校1年生。のんびり屋な性格で人付き合いが苦手、優しい人ではあるが母親以外との会話は苦手。そんな人間だ。
(自分で優しいとか評価するのはなんかむず痒いな…)
「…以上!」
最後の一言だけ聞こえた。どうやら僕は眠っていたらしい。
新学期の挨拶は眠くなる。周りの同級生達は「よろしくね!」「お前と一緒だと楽しくなりそうだわ!」とか新学期早々楽しそうで何よりです。
(今日は授業無いし帰るか…)
クラスメイトとは話もせず、というか話をする程仲が良い人がいないのでそのまま帰る。
中学生までは父親の地元で過ごしていたが高校は母親の地元の高校へ進学する事にしたため知り合いはいないのである。
(こっちは田舎だし方言とかわからん)
逃げるように家に帰るのであった。
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