4話
Start~!
夜の校舎は、昼間とはまるで別の場所のように思えた。
静寂が支配し、微かな風の音だけが聞こえる。
私達は3階の廊下の奥にあるという「鏡」を目指して歩いていた。
「本当にここでいいんですよね?」
紫音が落ち着かない様子で問いかける。
「間違いないよ」
私はノートを手に持ちながら答えた。
ノートの最後のページには、装飾された古い鏡が描かれており、文字が記されていた。
「真実は映し出される」
「なんか不気味だよなぁ、、」
黃葉が周囲を見渡しながら言った。
「こんな時間に学校にいるだけでもヤバいのに、、」
「それでも来ちゃうのが俺等なんだよねw」
翠が笑いながら答える。
その言葉に、少しだけ緊張が和らぐ。
3階に到着すると、私達の足音がやけに響く。
廊下の奥、暗がりの中にそれは見えた。
「、、、あれが噂の鏡?」
ノアが小声で呟く。
鏡は高さ2メートルほどの立派なもので、重厚な木製の枠で囲まれていた。
装飾には古びた彫刻が施され、どこか異様な雰囲気を漂わせている。
私達が近づくと、鏡の表面がわずかに冷たい光を反射した。
「ここで噂が起きたの?」
翠が尋ねる。
「そうらしい。夜になると、この鏡に、、、」
私は言いかけて、言葉を飲み込んだ。
鏡の中に映る私達の姿が、どこか違和感を感じさせたからだ。
「なんだこれ、、、」
黃葉が鏡を覗き込み、動きを止めた。
「おぃ見ろよ、、!」
鏡に映った私達の影が、私達と完全に同じではなかった。
ノアが首をかしげると、鏡の中のノアは動かない。
翠が手を挙げると、鏡の中の翠は逆の手を挙げた。
「まさか、本当に噂通り、、、?」
紫音が声を震わせる。
「待って、何か意味があるはず」
私は鏡の前に立ち、ノートをもう一度開いた。
スケッチの周りに書かれた小さな文字を指でなぞる。
「真実を問いかけよ。影が答えを返すだろう。」
「問いかけるって、、どういうことだ?」
ノアが尋ねる。
「質問をしてみるんじゃない、?」
私は思い切って、鏡に向かって声をかけた。
「あなたは誰?」
その瞬間、鏡の中の「私」が笑った。
私は背筋に冷たいものを感じ、無意識に一歩後ずさる。
鏡の中の私が動き始めたのだ。私が動いていないのに。
「やばいってこれ!」
黃葉が叫ぶ。
「待って!」
私は動揺を抑えて、もう一度問いかけた。
「あなたは何を伝えたいの?」
鏡の中の私が指を鏡の表面に向けて動かす。
すると、その指先から文字が浮かび上がってきた。
「助けて」
「これって、、、音楽室のピアノのメッセージと同じ?」
翠が言う。
「でも、助けてって誰が言ってるの?」
ノアが混乱した表情を浮かべた。
鏡に浮かんだ文字はゆっくりと消え、新たな言葉が現れた。
「囚われし旋律に従え」
「囚われし旋律、、、」
私は呟いた。
「もしかしたら、このノートに書かれている不完全なメロディを完成させることが鍵なのかもしれない」
鏡の光が徐々に弱まり、私達の映る姿が普通に戻る。
まるで何事もなかったかのようだ。
「これ以上は危険だ」
ノアが静かに言った。
「今夜はここまでにしよう」
私達は頷き合い、音楽室のノートと鏡の謎を抱えたまま、校舎を後にした。
だが、帰り際に背後で聞こえた微かな軋む音に、誰も振り返ることができなかった。
next~5話
【影が囁く旋律】
はーとちょうだぃっ?
コメント
2件
んあー!この話本当好きだあ面白いよー🥹