タヌキ

さて、ロマンス詐欺の話しを書いていたので、今回の創作です。

笑（エミ）は、空手インストラクターだった。空手は極めるといつまでも上には上がいる為、途中で断念した。その為、スポーツジムの空手ルームでインストラクターをしている。幼稚園児から婆さん迄巾広い年代が来ているが、彼女は女性専門で有る。ある日、中学生女児の母親から質問を受けた。「あの、先生はおひとりでいらっしゃいますの?」「はあ…」「主人の後輩で、お嫁さんを探している人がいるんですの。一度、宅でお茶会をしようと思うのですが、如何かしら?」今は知っている人も少ないが、女優の二谷友里恵のママに雰囲気が似ている。笑は、ちょっとイイかも…と思った。「わたくしでしたら、喜んで伺います。」と言った。夫人は今度の日曜日の３時に集合と言ってきた。メンバーは夫人とご主人、後輩のМさん。そして、空手ルームのお嬢様と笑。

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日曜のティパーティ。「いやあ、どうもどうも」と、タヌキを彷彿とさせる御主人が挨拶をした。「こちら、主人の後輩のМさんよ。」と夫人が紹介した。「どうも始めまして。大学で漢方の研究をしています。」男性は研究員と言うより、サーファーの様な感じだった。「笑（エミ）と申します。始めまして。」「先生はいつも上品なカラテを教えてくれるの」とお嬢様。「え?例えば?」と皆興味しんしんで彼女を見た。「例えば、嫌なオトコが近づいて来たら、なにげにボーっとして上を見て、『あっと、ゴメンなさい』ってケリを入れるとか」「まあ、それは面白いわ」と夫人は笑い転げた。「ところで、笑さんは海外旅行がご趣味だって伺ったんですが、それじゃ心配は無いですね。美しいと誘拐されたりしますが、来たオカシイのはみんな殺られちゃう!」この褒め方は笑を大変満足させた。「あら、М先生こそ極秘文書なんか持ち歩いたら危ないんじゃございません?」「ええ僕はパソコンは一切信用してないんで、手書きノートをそのまま持ち歩いてるんです。美容に使う漢方なんかも有りますから。」「まあ、そういうのが有るんですか?」「美白やシワ改善は当たり前で、90代の女性を50代に見せる研究なんかをしてるんです。」「はあ〜」と一同は関心しきった。「今度漢方ツアーで東南アジア旅行が有るんですが、皆さん如何ですか?」とМは言った。「マルコス大統領の従兄弟の姪っていう資産家の女性が、今度工場を作らないかって言ってるんです。ツアー料金は少し高いらしいですが。」「パパ、あたくしも行きたいわ」と夫人が言った。中学生の娘迄が「あたしもあたしも」と言った。「笑さんも是非同行してほしいなあ〜」「任せて下さい!」と笑は相好を崩した。