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飯田side(障子、砂糖、葉隠、尾白)
入口をくぐってすぐに感じたのは、肌寒さだった。
尾白「…暗いね」
葉隠「暗いね!」
自分の班が全員いることを確認し、他の班を確認する。
どうやら全員が外に出てきたらしい。
つまりは鬼ごっこスタート。
そして嫌でも考えてしまう。
ここに鬼はいるのだろうか
どの班だろうか
何人いるのだろうか
俺の班にいるのだろうか。
俺はきっとこのゲームのどこかで誰を疑う。
疑心暗鬼になってしまうことだろう。
だから俺は仲間を信じると決めた。
少なくともこの班のメンバーを。
飯田「…」
どうやらここは学校らしい、古びた知らない学校。
通路が左右に、そして正面の上り、下りの階段。
飯田「…俺の班は上にいこう」
緑谷「、僕は1階目指してみようかな」
轟「俺はこの階か」
爆豪「誰もいねえ場所。」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
緊張感からか、恐怖からか、話し声がしなかった。
もちろん鬼がいるのだから、気づかれないためにも良いことだろう。
が、精神の方は参ってしまう。
そして階段を上るうちに最上階へとたどり着いた。
左を見ると、6年3組。
右を見ると5年1組。
どうやら上級生の階らしい。
砂糖「…雰囲気あるよな」
葉隠「こわい!」
いつもより小声ではあるが、はしゃいだような声を出す葉隠に少しため息が出た。
障子「…俺は索敵要員か」
飯田「ああ、よろしく頼む」
障子はぐっと複製した手をつかみ、その手を耳へと変えた。
障子「…耳郎の言う通り、何も音がしない」
無音というのは、案外恐怖心を煽るらしい。
ヴィランと退治するときとはまた一味違う怖さが、肌を蝕んだ。
尾白「ちょっと思うんだけど、いいかな?」
尾白が飯田に向かって手を挙げ、発言権を求めた。
それを否定する理由は今の飯田には考えつかなかった。
尾白「この鬼ごっこに勝ったとして帰れるか分からないし、負けた場合のことも考えて、探索しつつ帰路を見つけておくべきだと思うんだ。」
障子「そうだな、万が一に備えた方がいい」
葉隠「賛成!あと私鬼ごっこめちゃ強いかも!」
砂糖「なんつったって見えねえもんな」
そう言うと葉隠は男子しかいないこの場で服を脱ぎ始めた。
飯田「む!!!」
砂糖「ちょ、恥じらいねえのかよ!」
尾白「あはは、」
この班唯一の女子は恥じらいに欠けているらしいことはすぐに周知の事実となった。
とは言うが、尾白は元々慣れていたらしい。
飯田「…探索に反対するものはいないか」
誰も反応しない。
つまりは全員が賛成だった。
飯田「それでは分かりやすく端の教室から見ていこう」
そう言うと5年3組のプレートを目掛けて飯田班は歩き出した。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
教室には鍵がかかっておらず、案外簡単に中に入ることが出来た。
尾白「…俺、こういうの嫌いだ。」
尾白の目線の先には、ひとつの机。
しかし普通の机とは程遠く、持ち主が虐められていたことが簡単にわかった。
気分が悪い。
葉隠「…時計」
じっと時計を見つめる葉隠。
飯田「時計がどうかしたのか?」
葉隠「……17分。」
時計は12時17分で止まっていた。
進む様子はない。
葉隠「もしかしたら、なんだけど」
尾白「なにか気づいたのんだね」
葉隠「うん、鬼、2人なんじゃないかな」
飯田「なぜそう思うんだ?」
葉隠「ホラーゲームとか、小説とかであるあるなんだよね」
尾白「ああ、」
尾白が思い出したように頷いた。
そして葉隠が指で時計をさしす。
葉隠「短い針は私達の人数、捕まると減っていくの。」
障子「始まったばかりで17、上鳴を省く19人が参加しているとして2人たりない。」
飯田「だから2人が鬼、筋は通っているな」
本当に2/17ならば、この場に鬼が紛れ込んでいる可能性は限りなく低い。
気休めではあるが、安堵した。
障子「…!静かに隠れろ」
障子が教卓の下へ。
飯田はロッカーへ。
尾白は隠れる場所がなく、扉の窓から死角になる場所に身を潜めた。
葉隠は見えないので隠れる必要は無い。
ズリ…ズリ……。
幻聴だろうか。
何かを引きづっているような音が、する。
ズリ…ズリ……。
怖い
葉隠の額に、汗がにじむ。
ズリ…ズリ……。
次第に音は近くなっていく。
ズリ…ズリ……。
音が、止まった。
ドクドクと心臓の音がうるさい。
ロッカーに隠れた飯田は、隙間から教室へ繋がる窓をみた。
飯田「ヒュッ」
思わず息を飲んだ。
大きな、人のような何かが、赤い道を作って歩いている。
酷い鉄の匂いが鼻を掠めた。
引きづっているのは、考えたくもないが人だろう。
ヒーローとして、助けるべきなのか。
いや、助けるべきなのだろう。
しかし足が動かない。
心臓がうるさい。
こわい。
尾白「あ」
目が、あった。
一際大きな音がして、飯田は顔を上げた。
そこで初めて自分が下を見ていたことに気がついた。
そして、尾白がいたであろう場所に彼はおらず
時計の針は16をさしていた。
【3話・行方】