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みどりを送り出してから数日が経過した今になっても、みどりからの連絡が一切無い。何かあったのかもしれない…なんて不安になってソワソワしていると、ミドリゴーストが総帥室の机をすり抜けて顔を出した。
「ダァァァッ!?!?」
ミドリゴーストは、びっくりして奇声を発する俺をフル無視して何かを伝えようと必死に短い手を動かしていた。
「え?え?…全然わからん……」
らだおくんに翻訳頼むか…
出来るか分からないけど、使役しているらだおくんの一匹を呼び出して翻訳をお願いしてみる。
「らぁ!」
らだおくんはたった一言だけ、こう言った。
“みどりくんが危ない”
頭の中で繰り返される言葉。
目の前が真っ赤に染まるのに、そう時間は掛からなかった。
そして、現在。
「みどりッ!!どこにいるんだ……」
国のおよそ半分まで侵略をおえたのに、まだ みどりが見つからない。
となるとやっぱり城の中にいるのだろうか。
大胆にも城の壁を破壊しながら進んでいく。
「今すぐにその愚行をおやめなさい」
「…何?今忙しいんだけど」
自分でも思ったよりも数倍低い声。
俺ってこんな冷たい声出せたんだなー…
「あ、貴様が何を探しているのか知らぬが、ここに貴様が探している子はいないわ!」
この女、何か焦ってたのか?
乱れた髪は汗の滲む肌に張り付いていてホラー感に溢れている。
それにしても…コイツ、馬鹿だな。
「ぽまえ、バカだろ」
「は?」
「探してるのが“人”だなんて俺、ぽまえに一言も言ってないよ?」
「…そ、それは……ッ…其方…!」
目を泳がせたかと思ったら、女は急に気持ち悪いほど大きく目を見開いた。
口元を震わせて、薔薇色に染まった頬を両手で押さえて恍惚とした表情を浮かべた。
「なんって美しい青なの…」
「………はぁ?」
「あぁ、駄目!!怪我してるわ…!!」
「ちょっ…触るなッ……!!」
瓦礫に擦れた時にできた傷を見た途端にアワアワと眉を下げて、手を伸ばして来た。
正直、キモチワルイ上にウザい。
容赦なく突き飛ばして青鬼化したらだおくん達に女の四肢を床に固定させた。
異形の人食い鬼に囲まれ、身動きが取れない中でも女は興奮した様子で恋した乙女がするような吐息をこぼしていた。
「ねぇ、ぽまえキモイよ?」
「あはっ…美しい、美しいぞ……」
「うっわ…コイツ、もう手遅れだ……ぽまえらテキトーに殺しといて?」
こんな変なやつに構ってる暇はない。
早くみどりを探そう。
「ま、まって…!妾を置いて行くな…!」
悲鳴に似た、まだ幼さの残る声。
敵に情けをかけるほどの優しさは、いつぞやの出来事を境に捨ててきた。
そんなことはさておき、騒々しい声を背に城の中へと進む。
ドォン…と、何かが爆発するような音と鼻先を掠める火薬の香り。
「……みどりぃーッ!!返事してッ!!」
一拍置いて、パタパタと足音が聞こえた。
……なぜか、俺の背後から。
「…ぇ……」
「妾のモノな”の”ッ!!誰に”もッ!!妾のモノを奪わセナ”い”わ”ッ!!!」
間近に迫る女の真っ青な服の裾が翻って、俺の視界は遮られ、何か言葉を発する前にプツリと意識が途絶えた。