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深夜と挙式
珍しく2人で外へ飲みに出かけた。高級感がありながらも、気さくな空間のバーの空気は心地よく、恋人で来てくれたから、とサービスまで貰ってしまって、マスターに2人は結婚してるんですか?などと聞かれた。同棲こそして長いが、結婚か・・・と柄にもなく真面目に考える。
2人で借りている賃貸に帰る頃には空は白み始めていた。お風呂は起きてからにしようか、などと話しながら玄関の戸を開ける。電気をつけるのも面倒くさくて、部屋を照らすのは冷蔵庫から漏れ出た光だけだった。
ああ、告白をした日もこれくらいの時間に帰ってきて、うっかり伝えてしまったんだっけな、などと思い返す。
「ほらハル、水飲んで。あとコート貸して。ハンガーかけておくよ」
「ありがとう、ございます、すいません、ちょっとフラフラで」
「そんなところもかわいいよ」
いつもの事だが、ハルはやっぱり分からないという顔をした。酔っていようが酔っていなかろうが、ハル視点でかわいいのはやっぱり深影で、自分に可愛いところなど無いだろうに。毎回毎回、ハルのかわいい恋人は、ハルのことをかわいいと言うのだ。
「かわいいのは深影さんですけどね」
「ハルがそう言うなら俺ってかわいいんだろうね」
ふふ、と笑ってハンガーに2人分のコートをかける姿を見て、あぁ、新婚みたいだなと思った。冷えた水を飲み干して、スッキリした頭で深影を後ろから抱き締める。
「どうしたの、もう寝る?」
「一緒に寝ます。」
そのまま2人で、大きなベッドに腰掛ける。そのまま、ふわりと白いシーツを深影の頭へと被せた。
「やっぱり、凄く綺麗です、深影さん。」
「そう、かなあ。今日の話、考えてくれてたんだ?」
愛おしそうに、目を細める。
「それはそうですよ。ペアリングだってしてるし、一緒に暮らしてますけど、まだ式挙げてなかったなって。」
「まあ、そうだね。俺も挙げてみたいな、とは思ってるよ」
「今予行練習して、絶対やるべきだなって思いました。」
「その点で1個気になることがあってさ。俺、ちゃんと白似合ってる?黒しか着ないから自信ないや」
「似合ってます。世界で一番。」
「そ、っか」
あまりに強い断言で、一瞬たじろいだ。頬の赤みは照れくさいからなのか、それとも2人を照らす朝日のせいなのかは分からなかった。
「病める時も健やかなる時も、なんて言おうとしたけど、とっくのとうに誓ってたね。」
「どんなときも一緒ですから。」
「ふふ、ずっと一緒に居てね」
「もちろんです」
真面目に式を挙げようか、などと話ながら、朝を迎える。きっと今日も良い1日になる。起きたら一緒にお風呂に入って、その後色々なチャペルやプランを探して。これは忙しくなるな、などと思いながら、相手の手を握る。
明日も明後日もその先も、長い一生をかけて、2人は幸せを歩んでいく。そんな確かな自信で、お揃いの指輪が煌めいた。