実はシリアス書くほうが好きだった、り……?
pixivで上げてた奴(今はもう消してる)なので、見たことある人居たら一声おかけくださいな(⌒▽⌒)
シチュはびーすと!見てない人は🔙!
太宰さんが死んだ後のちゅやん目線だよ
感想待ってる…
アドバイスとかダメ出しでも👍👍👍
それじゃどうぞ!!
___……何処迄も自由奔放だった、と云う冪か。
脳裏に根強く残っている、彼奴の遺した呪いがずっと頭の中で木霊する。
結局、俺は彼奴を救えなかった。
彼奴は、七年を共に歩んで苦しみを分かち合って、微かな幸せを分け合って来た俺よりも、
出逢って幾許も無い敵組織の人間に縋って、其奴の為に命を散らした。
其の儚い生を、俺に何の一言も云わずに勝手に終わらせやがった。
最初に湧き上がってきた感情は、体の芯をも焼き尽くす程の熱を持った強い怒り。
そして其れに呼応する様に現れた、明確で鋭利で透明な殺意。
殺す。彼奴だけは、絶対に俺の手で殺す。
異能力が効かない?
関係ない。圧倒的な力で捻じ伏せれば良い。
立場が自分より上?
関係ない。ンなモン知るか。俺の好きにする。
仮にも相棒だ。まぁ、“元”は付くかもしれないが。
………あァ、違ったな。
相棒だと思ってたのは、俺だけなんだった。
嗚呼、憎い。
胸の奥底が締め付けられる様な感覚。
喉元に光り輝く鋭い刃の切っ先を突きつけられ、生命を掌握されている様な不快感。
手前の無駄に優秀な其の頭が嫌いだ。
____物事の“退屈さ”を感じさせてしまうから。
手前の真意が読めない双眸が嫌いだ。
____此方を見透かされてる様な気がするから。
手前の浮かべる其の微笑みが嫌いだ。
____道化を演じている時にする微笑みだから。
手前の秘密主義な其の性格が嫌いだ。
____誰も、本心に触れることが出来ないから。
あの時もそうだった。
四年前、手前が首領になったあの時。
木製の窓枠に嵌った硝子に反射して映った、彼奴の笑みが頭から離れなくなったあの日。
俺は心底面白く無かった。何せ、自分と競い言い争っていた、好敵手とも云える人間が簡単 に自分を越えて行ったからだ。
其の癖、人間性そのものが元から欠乏していたかの様に、感情の凡てを見せなかった。
先代首領___この男は森鴎外という___は、最後に初めて、彼奴のことを下の名前で、敬称 もつけずに呼んだのである。
今までは一一君、一ーさんという呼び方だったのに、初めて。
それも何時もの鋭い射抜く様な視線では無く、父親の様な温厚で慈愛に満ちた瞳で、だ。
俺は驚いた。
数年間其の人の手となり足となり動いてきたが、そんな処は見たことがなかったからだ。抑、彼奴の下の名前は呼ばれる機会が少なく、其の記憶も薄れていた。
そして、 先代と彼奴は親子と云うよりも人と人嫌いな猫…云うなれば、偶然人生の道が交わっただけ の他人。そういう様な感じだった。
そして先代は、彼奴を一度抱きしめる。
その異様な光景が、俺の脳を、思考を更に混乱させた。
彼奴は一瞬驚いた様な顔をしたが、すぐに微笑んだ。
先代は其の微笑みを見て、何故か顔を後悔に近い感情に歪ませて、云った。
『…ごめんね。』
俺は正直意味が判らなかった。
何故先代が謝る? 仮にも地位を奪われてしまった立場だと云うのに。
理解不能な其の文言に対して、彼奴は云った。
………よく見りゃ判ることだった。
先代の両腕で抱きしめられた彼奴のしている微笑みは、何時もの飄々とした笑みじゃない。
迷子の子供が、寂しさを我慢している様な顔。
よくよく考えてみろ、彼奴だってまだ齢18の餓鬼だ。
まだ、一人で満足に空も飛べない雛鳥なんだ。
其れに気付いたのは、夕暮れに染まった綺麗な空が、臙脂色の水溜りに反射した時だった。
……手遅れだったんだ……其の時には、もう、既に。
取り返しが、付かなかったんだ。
『………僕にはもう、充分ですよ。」
淡々とそう返す彼奴の微笑みは、今迄の思い出の中でも、一番人間らしくて……………………
“嗚呼、俺には此奴を救うことは出来ないんだな”と。
唯、そう漠然と理解せざるを得ず。
深みのある声でそう返事した彼奴の瞳には、もう何も映っちゃあいなかった。
其処に存在していたのはただ一つ。
「空虚」。
其れだけだった。
首領に就任……否、代わってから、彼奴の瞳には何時も“何か”が居座る様になった。
厳密に云えば、元々存在していた感情や策略、思い出か何かを抑えきる事が難しくなってしまい、遂には溢れ出してしまった…そんな様な感じだ。
だから、俺は彼奴の瞳が嫌いだった。
俺と瞳を合わせている筈なのに、彼奴の瞳に俺は映っていない。
もし其処に俺が映ったとしても、分厚い鉄格子越しに話している様な気分だろう。
其の程度に俺は彼奴の中で価値がなく、如何でも良い人間だったってことだ。
然し、そんな俺でも思う処は有った。伊達に七年を共に過ごしてきている訳じゃあ無い。
あの人間……………………太宰治という男は、
“恐ろしく殺しに向いていない”のだ。
……云うなれば、太宰は“瓶”だ。 透明で透き通っていて………迚も美しい、星屑を散りばめた様な輝きを放つ硝子瓶。
透き通っているが故に何者にもなれる。何色にも染まれる。気に入らない物を吐き出すことも出来る。己から完全に存在を抹消し、無かったかの様に扱うのも簡単だ。
だが、太宰は普通の“瓶”………………、全くの「空虚」では無かった。
太宰は、「罅割れた瓶」 ………“だった”。
彼奴は、太宰は人の感情に機敏だ。悪意を素早く感じ取ることが得意が故に間諜役としても重宝されていたし、構成員の裏切り等にもいち早く気付き、対処する事が可能だった。
只彼奴は、好意に鈍感だった。
恋情、尊敬、敬愛、親愛、友愛、愛情、恋慕、感謝………
兎に角、其れ等凡てを察するのが苦手だった。
つまりは、人の悪意を一身に浴び、好意に気付けない為其の傷も癒せないということ。
…太宰治は、人間に向いていなかった。此の世に向いてなかったのだ。
そして彼奴は自分の“罅割れた綺麗な硝子瓶”に、
“己自身の人として持っていた凡て”を詰め込んで、
思い切り、叩き割った。
それが太宰が15の時の出来事。
あれは誰でも気付くだろう。共に過ごしてきた人間、且つ相棒が一気に無駄口を叩かなくな り、組織に従順になり、飢えた猛獣顔負けの勢いで最高地位を奪い取ったのだから。
一度、彼奴に聞いた。
何故聞きたくなったのかは判らない。 そうしたら、彼奴は燕尾服を纏った男性の印刷された燐寸を片手に答えた。
『………………“手に入れたものは、何時か喪う事が約束されている”。』
『はァ?如何云うことだよ、それ』
『………………何時か壊れて限界が来てしまう様なものなら、いっそ自分自身で散らしてあげたほうが贅沢だってことさ。…喪くなると判っているのだから。』
『…?』
『……、………矢っ張り中也みたいなお子ちゃま(特に身長が)には判らないか〜!笑』
『はァ!?手前の説明が難しいんだろ、もっと判り易くしやがれ! あと手前の云いたいこと殆ど判ってっからな!?』
『っふふ、つまりはねぇ………』
『苦しんで血反吐を吐いて抗って、ボロボロになって迄守りたいものが喪くなれば____』
「『もう二度と奪われない様に、壊れない様に、穢されない様にと心を砕かなくて済む』」
「……か。」
「似合わねぇことしてんじゃねぇよ、糞太宰」
俺は手に握っていた書類を握り締めた。ぐしゃり、と紙が潰れる音が鳴る。
其の音は、まるで人が落下した後に着地する時の様な音で_____
「…クソッ!」
握り潰されて皺だらけになった一枚の紙切れを、俺は敢えて異能を使わずに思い切り床へと 叩きつける。その方が、幾分か気分が晴れると思ったからだ。
然し胸には、行き場の無い怒りと殺意、そして得も云えぬ喪失感が未だに蟠っている。
……如何すりゃ良い。俺は、一体如何すれば……
答えなんてない、声にも成らなかった問いかけに返ってくるのは胸を刺す様な静寂。
誰にぶつけるでもないその怒りと殺意、そして如何しようもなく締め付けられる胸の痛みに、俺は見て見ぬふりを出来なかった。