白い雪がふわふわと空から落ちてくる
s「…こ、こんばんは…」
黒いスーツを着た男の髪は後ろで固く結んである
目元は街頭のおかげで影が出来てよく見えない
数秒沈黙が続くと男から切り出す
?「…きみのお母さん、借金抱えてるでしょ」
s「ぁ…はい…」
?「その借金、返済期限もうとっくに過ぎててさ待ち飽きちゃったんだよ」
ゆっくりとこちらに近付いてくる
怖くて硬直して動けない
逃げることも虚しく呆気なく腕を握られる
s「ぁっ…」
きっとこの後胸ポケットから銃を取り出して俺の事を撃ち殺すんだそして闇市場に…
考えたくもない妄想を膨らませて目に涙が浮かぶ
?「俺のこと怖い?」
冷たいそいつの手が少しずつ暖かくなるのを感じる
s「怖いって言ったら殺すの…」
緊張と不安で息が乱れて声を絞り出すので精一杯だ
?「ころさないよ」
涙で霞んだ視界から見えた目は緑色だった
s「…」
?「あっちに車あるからさ、ついてきてよ」
NOという間もなく手を引かれて強制的に車に連れて行かれる
黒のワゴン車には厳ついスーツを着た男が数人待機していた
手汗を握ってスクールバッグをぎゅっと握り締める
「zmさん!!坊主の親は捕まえられましたかっ!!」
助手席に乗っていた男が声を上げる
z「…ほかの奴がむかってる」
こいつの名前はゾムというのか、と目線をゾムの方に移すと案の定目が合ってしまった
s「すみません…」
次こそは銃で頭を撃ち抜かれるんじゃないかと本能が怯えている
反射的に出た謝罪の言葉はゾムの気に触れなかっただろうか
z「…お前の母さんとは違ってしっかりしとるんやな」
窓際に頬杖をついて突然そんなことを言う
s「ぁ、ぁ…ありがとうございます」
怯える俺を見兼ねて呆れたのかぷいと首を外に向けた
ゾムの視線に縛られなくなった事で少し安心したのかスーッと肩の力が抜けていくような気がした
いつの間にか意識が切れていて目が覚めるととてつもなく広い座敷の真ん中に敷かれた布団に寝ていた
ぼんやりする頭で目を泳がせると先程スーツを着ていたゾムが緑色のパーカーを着て俺の事をじっと見ている
z「…おはよう」
頬杖をつくのは癖なのか相変わらず無愛想な態度だ
s「おはようございます…」
よくよく考えてみれば知らない大人について行った俺が馬鹿だったんだ、こんなヤクザの巣の布団で呑気に寝て俺は一体何をしているのだ
s「家に帰してくれないんですか?」
そう聞くと頬杖をつくのをやめてすっと顔をあげて俺の方をじっとみる
z「君のお母さんの借金返し、手伝って貰わないと」
母さんはこんなヤクザ会社に借金を借りていたのか、全くろくな事をしない親だと思ったがそれでも母さんのことは捨てに捨てられない
s「母さんは今どこにいるんですか」
z「さぁ?」
曖昧な回答にムッとするがこんな奴にこれ以上聞いても埒があかないと思った
z「ぁ~…仕事っちゅうもんはなぁ、単に俺たちの仕事を手伝うってだけなんだけど」
そう言いながら先程まで胡座をかいていた足を崩して歩き出すゾムに着いていく
さすがヤクザ事務所、中庭には見事に育てられた盆栽に白い砂利が敷きつめられている。まさに日本庭園そのものだ
そんな庭を見ながらゾムさんに早足でついて行く
しばらくしてオラァッ!!という怒号が聞こえるとその声が聞こえる襖をスっと開ける
s「ぇっ…」
ヤクザ同士のぶつかり合いだろうか
殴っている方も殴られている方も如何にもチンピラという格好をしていた
「あぁっ、ゾムさんおつかれっす~!」
こちらに気づくと振り上げた拳を止めてぺこぺこと頭を下げる
z「ん、おつかれ。いま大丈夫?」
さっきまで無口だった口が急に達者になる
「大丈夫っす!もしかしてその坊主のことすか?」
z「そうなんやけど、とりあえずこいつの面倒見といてくれへんか?あと今後のこと色々教えてやってくれ。ちょっと俺席外すから」
そう言うと小走りで廊下を抜けた
「うっす!!」
s「…」
「よぉ、坊主とりあえずそこ座れよ」
煤色のよれよれのスーツの中に来ている赤色のYシャツは白色の蛇が特徴的だ
「坊主の手伝い内容としては、俺たちの助手として働いてくれればそれなりの給料はくれてやる」
s「助手っていうのはなにをすれば…?」
「まぁ、ここの家事ももちろん…抗争やぶつかり合いの時に少し手を貸してくれりゃいいだけさ」
s「…喧嘩とかあんましなくて、その…」
「んなもんこれからどうにかなるさ俺達だけでどうにかなる問題ばかりだ。あんま気にすることじゃねえよ、まぁそんな抱えなさんな」
そう言って肩をぽんっと叩かれる
ヤクザと言っても素は優しいのかもしれない
ヤクザものになったわ
思ってたんと違うって思ったでしょ‼️
全く同じ心境です。
優しい世界のヤクザだから好きになってあげて😹
ちまちま書いてるので他の作品も待っててください‼️‼️‼️
コメント
1件
お慕い様が書いてくださった物語なら結局何でも「こういうのもアリだな…」ってなってしまうのでぜんっぜん有り難いです。