【形だけの恋人】
nk×kn
学パロ
↓
わんく
↓
「――君には、私は似合わないよ。」
その日、俺は恋を捨てた。
「好きです。」
昼休み、空き教室。手元には購買で買ったパン。その時まで友人という関係だった相手、 Nakamuから紡がれたその声に、俺はしばし固まった。
華の高校二年生、恋だの春だのと噂話の絶えない時期ではあったが、恋を捨てた俺には馴染みがなくて。その言葉の真意を理解するまでに時間を要した。
kn「 ・・・・・・付き合いたい、ってことで合ってる?」
nk「うん。」
即答。そっか、と呟いて、ひとつ息を吸い込んだ。
kn「形だけでもいいなら。」
感情なく手を繋いでも、自己主張のないデートでも、中身のないキスでもいいなら。
振られるのは辛いよねっていう同情だけで返事をしても良いなら。
nk「いいよ。」
その声は、喜びに満ちていた。
nk「俺、めっちゃ、嬉しい。」
満面の笑みで喜ぶ彼。似ても似つかない、あの先輩をふと思い出して、頭の中から追い出すように食べかけのパンに齧り付いた。
脳裏によぎるのは、二人で最後に行った場 所。
晴れた空の下。
最寄り駅から数駅離れたところにある、あの人が好きだった花畑。
シロツメクサの花冠とともに、俺は恋を捨てた。
だから。
中身のない空っぽの俺でも良いのなら。 隣に並び立ってあげるよ。
手を繋いだ。
デートをした。
唇を触れさせた。
舌を、入れた。
彼の家に泊まった日もある。
自分の家に泊まらせたこともあった。
nk「きんとき!」
俺が同じ行動をするたびに、彼は嬉しそうに俺の名前を呼んだ。それでも心は波ひとつ立たなくて、中身の伴わないまま彼の隣に立ち続けた。
学校からの帰り道。話は自然と、来週のデートについてになっていた。
kn「なに、Nakamu。」
nk「行きたいところある?」
デートの場所を決めるとき、彼はいつもそう聞いてくる。答えなんて決まっているのに。
kn「Nakamuが好きな場所。」
nk「そうじゃなくてさあ・・・・・・」
kn「Nakamuの笑顔が見たい。」
これは本心。
空っぽなりに、貰ったものを返したいと思っている。愛なんていう形のないものは返せないけれど、楽しい思い出くらいならあげられるから。
nk「きんときいつもそう言うよね。」
kn「・・・・・・ごめん。」
nk「や、謝ってほしかったわけじゃなくて・・・・・・」
ごめんね。期待に応えられなくて。
恋は相手を求めるものだという。でも、俺は求められても、心のこもった言動なんて何一つできっこない。だからせめて、彼が幸せであれるように。
けれども彼は、それでは満足しないようだ
nk「・・・・・・ねぇ、きんとき。」
kn「どうしたの。」
nk「ずっと言うか迷ってたんだけど。」
足を止めた彼は、鋭い瞳で俺を見つめる。 そんな顔もできるんだな、と的外れなことを思った。
nk「辛い思い出は、忘れていいんだよ。楽しいことで思い出をいっぱいにしていいんだよ。それにね。」
Nakamuは少し背伸びをして、俺と同じ目線になって、間近に顔を近づけた。あと少しで、おでこ同士がぶつかりそうな距離。
nk「俺、ここまで特別扱いされて、『恋愛感情ない』って言葉を信じられるほど馬鹿じゃないんだよね。」
・・・・・・その後は、あまり覚えていない。そっか、って返した気もするし、返事をしなかった気もする。頭の中は彼の言葉がぐるぐる回っていて、それは、俺への救いのような気がした。 俺にはまだ、恋心というものが残っていたらしい。
彼には、Nakamuには
期待しても、いいんだよね?
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