TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

第8話 「冒険者デビュー」


前回のあらすじ

シャルルの昔話を聞いた。


マーシャに勧められていた冒険者新規登録キャンペーンの日がやってきた。冒険者協会の扉を開けると、酒臭さと汗臭さが混じっていて…とてもいい匂いとは言えない感じだった。冒険者協会の繁盛のためのキャンペーンなのだろうが、この街にいるほとんどの人が冒険者のためか普段より若者が多いくらいだ。新規登録者全員が謎にイカつい装備を着ている中、私服で来ているのは奏とシャルル…あとは、黒毛の男だけだった。

「シャルル、それ新しい服?可愛いね!」

「嬉しいっす!結構お気に入りなんで。」

シャルルの服装はというと、上はおへその辺りで切れている白いショートブルゾンを羽織り、スポブラのように見える黒い肩紐つきチューブトップを着ている。下の方は、赤いチェック柄のベルト付きガータースカートだった。めちゃめちゃ可愛いシャルルを褒め散らかしていると、ガラの悪い金髪の男どもに声をかけられた。

「おいおいw冒険者協会は子供の養育施設じゃねぇぞ?w何しに来たんだよ嬢ちゃん方w」

「い、一応冒険者になりに……」

「はっ!wこんな奴らが冒険者とか、俺ら”金龍の剣”の格が落ちちまってもんだwしかも孤族のガキとは笑わせんじゃねぇかw」

めんどくさい奴らに声をかけられてしまった…

刺激しない程度に流そう……

あえてダッサい名前のクラン名を無視して、シャルルと共に受付に行こうと思ったのだが…

「おいおい……なに俺の知り合いにちょっかい出してんだ?底辺さんよォ……」

「レブロン?」

絡まれていた奏たちを助けたのは、昔短い旅を共にしたレブロンだった。どうやら、奏が冒険者デビューをするなら今日だと考えて来てみたらしい。

「よぉ嬢ちゃん!久しぶりじゃねぇかw元気してたか?女を連れてるなんて隅に置けねぇなぁw」

「シャルルはそんなんじゃ……」

「え!?違うんすかカナデ、昨日だって1晩を共にした仲っすのに……およよ……」

「誤解させる言い方しないで!」

お手本のような嘘泣きをするシャルル。言っていることは間違っていないが、言い方というものがあるだろう。

「チッ…命拾いしたなガキ共……」

レブロンって、結構すごい冒険者なのか?

負け犬と言う名にふさわしい程の捨て台詞を吐き捨てて、男たちは冒険者協会を出ていった。

「災難だったな嬢ちゃんたちよ。そんで、そっちの金髪の嬢ちゃんは?」

「自己紹介が遅れたっす。自分はシャルル・マーレって言うっす。」

「マーレっつぅことは、勇者の家系か?すげぇな!俺はレブロン。よろしくな!」

レブロン…らしいっちゃらしいが、もう少し気を使ってやれよ……

ちょっと気まずそうなシャルルと悪気はなさそうなレブロン共に受付に向かった。

「そういえばマーシャの姿が見えないけど、どうしたの?」

俺の冒険者デビューなら食いつきそうなのだが……興味がなかったのか?

「何言ってんだwマーシャならあそこにいるだろw」

レブロンの指差す方向いたのは……

「あ!やっと来ましたねカナデちゃん!」

何故か受付嬢の格好をしたマーシャだった。

「なんで受付にマーシャが?」

「マーシャはBランク冒険者だからなw冒険者新規登録キャンペーン限定の看板娘なんだよw」

だから今日を勧めてきたのか……

マーシャの考えを察し、さっさと登録を済ましてしまおうと手続きをしてもらう奏。先程まで興奮していたマーシャも、仕事となればスイッチを入れ替えるみたいだ。

「じゃ、カナデちゃんのジョブを教えてください。」

「いや、まだジョブとか知らないんですけど……」

「じゃあ、”ステータス”って心の中で念じてみてください。頭の中に、自分のステータスが浮かび上がってくるはずです!」

「わかった……」

半信半疑だが、言われるがままやってみることにした。

ステータス。

頭の中に浮かんできた言葉を、そのまま読む。

「種族、孤族。適正ジョブ、魔導戦士?聞いたことないな……」

「え!?」

魔導戦士という単語に驚いたのか、3人共が一斉に声を上げた。

そんなに珍しいジョブなのか?

「ほんとに魔導戦士っすか?魔導師じゃなくて?」

「え?なに?なんかやばいの?」

もしかして……めちゃめちゃ強いジョブだったりしてしまうのか!?

定番の異世界イベントに尻尾をフリフリ振る奏、本当にそんなことがあるのか!?……

「魔導戦士は、その多くが早死するんです……」

と、期待に胸を踊らしたのも一瞬だった。早死…どうやら魔道戦士という単語に驚いたのは、珍しさでも強さでもなく、早死してしまうかららしい。その事を知った奏は、狐の耳を垂れ下げて見るからに気分が下がってしまった。

「まぁまぁ…そう気を落とすな嬢ちゃん。魔導戦士でも、Sランク冒険者のやつはいるしな!」

そんなレブロンの精一杯の励ましの言葉も虚しく散り、奏の気分は変わらなかった。

「俺の異世界無双ライフが……」

奏の夢が、まるで誕生日ケーキのロウソクのように楽しく、儚く消えてしまった……

「そうっすよカナデ!早死するって言っても、みんながみんなそうってわけじゃないし、いざとなったら自分が守るっす!」

「シャルル〜……」

なんていい子なんだ…惚れちゃうじゃないか…

シャルルの胸を泣き場にし、涙が出る訳ではないが…顔を埋めた。

「柔らかい…」

「…///」

「あ、あの……登録したいんですけど…」

気まずそうに横槍を入れるマーシャ。シャルルは満更でも無い様子だったが、案外誘ったらすぐ乗ってしまうタイプなんだろうか?そんなことを考えながら手続きを続行する。

「じゃあ…魔導戦士ということなので、魔力測定を行います。この水晶に手をかざしてください。」

奏が、もう何にも期待しないぞ…と言いたそうな顔で水晶に手をかざす。

「これは…」

水晶には、1977という数字が映し出されていた。

平均はどのくらいなんだ?

「まじか嬢ちゃん!!すげぇ…こりゃすげぇ!!」

「え?え?なにどういうこと?」

レブロンとマーシャを交互に見つめながら困惑していた。

「へ、平均的な魔導師の魔力量は……300です…」

ん?300?ぜろが1個足りないんじゃないか?

「ち、ちなみに…めちゃめちゃ強い魔導師でどのくらいなんですか?」

自分の魔力量に疑いを隠せないまま、恐る恐るマーシャに聞いてみる。

「Aランク冒険者の魔導師でも、せいぜい1000…Sランクででやっと2000の域に到達できるほどです!……私も900なのに、流石奏ちゃんってとこですね……」

ま、まじか!!

消えかかっていた奏の情熱の火に、油が注がれた。

「え、S…それに近いって……」

俺すげーー!!の気持ちを抑えながら、周りの反応を伺ってみる。口を開けて驚愕する者…こちらを見つめすぎて、手に力を入れるのを忘れ酒をこぼす者…唯一驚いていないのは、黒いコートを着た私服っぽい男だけだった。時々耳に飛んでくる声は、「あんな小さい子が…」や、「結構可愛い顔してんだな…」など、奏の容姿に関してのものばかりだった。

「これから大変そうっすね……」


第8話、おしまい。奏はこれからどうなってしまうのか、楽しみですね!

次回、「コートの男」

狐の幼女に転生させられたので、自由気ままに異世界生活させてもらう

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

35

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚