少し経って、落ち着きを取り戻す。
「潔…大丈夫か?」
優しく問いかける千切に答える
「ああ、大丈夫だ。悪いな、心配かけさせて」
今の俺にはそんなことどうだっていい。そんなことより今、言いたいことがある。
「廻くん、今何年かわかる?」
「ん?たしかね、2013年!」
やっぱり。今は2024年だ。11年前から、蜂楽廻は来たんだ。
「…聞いただろ。千切」
「…ああ。」
驚いた顔をしながらも、千切は答えた。そして、蜂楽に真実を伝えた。
「廻くん、今はね、2013年じゃないんだよ。今は、2024年。君はなぜか11年前から来たんだよ。」
千切は優しいような、悲しそうな顔をしていた。その表情を見て、蜂楽も本当だとわかったらしい。
「そう…なんだ…じゃあっ、俺が帰る家は…」
今の蜂楽に、帰るところはない。
「俺が引き取る。」
「潔?!」
俺の言葉は予想外だったのだろう。ただ、俺にはもう目標が出来た。
「今の蜂楽に、廻くんを会わせる。俺は、蜂楽に過去の自分に伝えてほしいことがある。それは、俺の口からは言えない。言ってはいけない。」
「…そうかよ。じゃあ俺は全力でサポートしてやる。」
千切はなにを言ってもダメだと感じたのだろう。なにも否定することなく、協力までしてくれると言ってくれた。
「ごめんな、廻くん。サッカーは、俺の家でやらないか?」
「えっ!いいの?迷惑じゃない?」
「迷惑なわけないよ。行こう!」
「わーい!」
俺の言動で簡単に喜んだり、悲しんだりする素直さを見ると、昔からこういう性格だったんだということがはっきりわかる。
「潔、LINE繋いどこうぜ。」
「ああ。俺のスマホ渡すからやってくれねぇか?w」
「しょうがねぇなw」
お互い少し笑いながら、LINEを繋いで別れた。
「じゃあ廻くん、行こっか!」
「うん!手繋いで行こー!!ギュッ」
小さな手から伝わるぬくもりと、小さな力。
今はこんなでも、将来はブルーロックというところで、生きるか死ぬかの戦いを、人生を歩むことになる。
それまでは、このままで。無邪気なままで。いてほしいよ。
「潔おにーちゃん?どーしたのー?」
問いかけてくる小さい君。俺はしゃがんで、目線を合わせて答える。
「なんでもないよ!それより、早くお家行こっ!ニコッ」
俺は少しだけ、ほんの少しだけ、ずっと、このままがいいと願ってしまった。
ごめんな、蜂楽。思うだけだから、許してな。
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