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──〈赤霧の森〉
かつてこの地は王国の辺境に広がる何の変哲もない森林だった。
だが、80年前にある男が姿を消して以来、森の空気は一変した。
昼でも薄暗く、木々は赤黒く染まり、常に血のような霧が漂う異様な場所。
そのため、人々はここをこう呼んだ。
──《吸血鬼の領域》と。
「……ここが《赤霧の森》か。」
ヴァレン・クローヴィスは馬を降り、周囲を警戒する。
彼に従うは、《聖血騎士団》の精鋭50名。
「気をつけろ。この森では《聖銀》すら通じないとされている。」
「噂話だろ? 聖銀が効かない吸血鬼なんて……」
「ならば試してみるといい。」
不意に、森の奥から低く冷たい声が響いた。
「……誰だ!?」
ヴァレンが振り返ると、霧の中から一人の男が姿を現す。
──漆黒の外套、白銀の髪、そして赤黒い瞳。
その顔を見た瞬間、ヴァレンは確信する。
「……レイス・ワイル……!」
100年前に消えた男。
王国最強の近衛隊長。
そして今や、吸血鬼として蘇った伝説。
「久しいな……《王国の犬》どもよ。」
レイス・ワイルは微笑みながら、ゆっくりと血を滲ませた。
「貴様らの狩り場はここではない……。帰るなら今のうちだ。」
だが、聖血騎士団は引くつもりはなかった。
──80年の怨恨を抱えた戦いが、今始まる。