「おらんだ〜〜!!」
パタパタと音をたてて、木材で出来た床が音を上げる。
目の前は僕よりも、身長が低く子どもの様な姿をした江戸、 商売相手だ。
「どうした?また逃げてきたの?」
「うっ、……まあ、そんな所。さ、早く行こ!」
そう言って江戸は僕の手を引き、もう一度颯爽と駆け出した。
短い足で走る姿は、さながら本当の子供の様に思えた。
そして時間が経った後、後ろからつん裂く様な高い声をした女が来た。
「江戸様を連れ出してください。また抜け出してしまって」
困った様な表情でソイツは語り出し、江戸を出す様に、と求める。
「……」
困ったものだ、どうしようか。
あのクソガキを出してやってもいいが、それは決して良い事ではないだろう。
しばし無言の時間が続くと、後ろの側にあった襖から江戸の声が聞こえる。
「黙っておいて…バレたら連れ出されちゃう〜〜!!」
……面白い展開になるのは、きっと此処からか。
「最低〜〜!!!この鬼ぃぃ!!」
叫び慣れてないのか、すぐに江戸は咽せてしまい俺の肩にすっぽりと収まり、その後ゆっくりと息をしだした。
「ほら、サボろうとか思ってたからだよ」
以前のキリシタンの事件から、江戸は外界との壁をより一層厚くした。
外国人(主に南蛮を指す)の入国を完全に拒否した。
その中で、布教をする国では無いと判断された国である者達は国内に出入り出来た。
「(……素直じゃないねえ……。それに、怖がりだ)」
江戸はあまりにもこの世界に慣れていないせいか、ヒトとの関わり方が下手くそだ。
そこが、とても意地らしいんだ。
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