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「わーすごいすごい!本当に早い!見てよもう他の船をあんなに引き離しちゃってるよ。これが魔術師ギルドの力なんだね」

パールが紺碧の海面に生ずる波濤を超え凄まじい速さで進む智の導き手号の船上ではしゃいだ。

天候穏やかでいたって風も穏やかだというのに魔法の船は風の勢いに乗ったようにぐんぐんと速度を上げている。

港に集った多くの人々や周囲の船の乗組員も驚愕の表情を浮かべているであろうことが容易に想像された。

「当然でしょう。確実に全世界で五指に入る性能の船です。それが与えられる程我らの任務は重要だと言う事です」

エリアは淡々と言った。

「もう陸地が見えなくなっちまった」

普段は物事に動じないフリードも感慨深げに言った。

「この中でエトルリアから離れたことがあるのはハスバールだけだったか?」

「ああ。俺はエフリマ大陸の生まれだからね」

ハスバールが弦楽器のリュートをかき鳴らしながら歌うように答えた。

「エフリマ大陸も面白そうだし行ってみたいが、今回の旅では立ち寄らない予定だっけか」

「そうですね。改めてこれからの予定を確認しましょう」

一同は船室に入り、世界地図を広げた。

「まずはリディア海の島、ローフッドに行き、そこで食料や水の補給をします。そしてその後はラリアル大陸を目指しましょう。そこで竜王国の情報を収集し、王国に潜入する手段を考えることになるかと思います」

「ラリアル大陸ってどんなところなんだ?全く聞いたことが無いんだが」

ハスバールの質問を予想していたのだろう。エリアは手元に置いてあった本と紙束を広げた。

「彼の大陸はドワーフとリザードマンの二大種族が支配する地域とのことです」

「リザードマンが……」

一同は驚愕の表情を浮かべた。

リザードマンとは亜人の一種族であり、二足歩行するワニの如き姿をしている。

強硬な鱗に全身を包み、得物を一瞬で噛み砕く強力な咬合力と尾を振るう力を持ち、なおかつ知性を有しているので剣や槍などの武具を操る。戦うとなると非常に手ごわい種族と言える。

「エトルリアでは数も少ないし滅多に人の領域を侵すことはないが、そこではそいつらが大量に居るって訳か」

「ええ。大陸の沿岸部はドワーフが、内陸部はリザードマンが支配しているようです」

「ではさぞかしドワーフと激しくやり合っているのだろうな」

普段は無口なラルゴが聞いた。

「昔は幾度も大きな戦をしていたようですが、最近はお互いの領域を守って停戦状態とのことです」

「それはどこの情報なんですか?」

パールが聞いた。

「わが魔術師ギルドの調査員です。ラリアル大陸の情勢、そこに住む魔物の調査の為に十年ほど前から滞在している者からの報告です。最大の目的はその地を支配するリザードマンの文明規模を調べることが目的なのですが、それはあまり上手く行っていないようですね。リザードマンは極めて用心深く侵入者の気配を探知することに長けているとのことなので」

「面白いじゃねえか」

フリードがにやりと笑った。未知なるリザードマンの領域に侵入し、その文明の正体を暴く。

フリードの功名心を刺激するには充分な題材であった。

「まあ、それは次の機会にしてくれよ。天使や竜王国の住人だけじゃなくリザードマンまでとやり合うなんて流石に勘弁してほしい」

ハスバールが演技がかった態度で応じた。

「ドワーフが大勢いると言う事はノービットもいるかな?」

パールが言った。

ドワーフとノービットは一般的に仲が良い傾向にある。というより他種族との関わりを極度に嫌うドワーフが唯一心を許すのがノービットであった。

共に大地の精霊と縁が深く、太古の昔に起きたというエルフとの大戦では共に戦った戦友という記憶が今も濃厚に残っているかららしい。

「ええ。彼の地のドワーフが生産した品々を他国に卸す仕事を請け負っているノービットがいるようですね」

「ふーん。やっぱりその辺はエトルリアと同じなんだね」

パールがラルゴを見ながら嬉しそうに言った。パールの一族も元はドワーフが製造した武具を売買する事業から始め、拡大して大商会と呼ばれるまでに成長したのであった。

そうやって最年長で博学のエリアから様々な知識を受けながらこれからの計画を練っている間に智の導き手号はエトルリアの領土となっているローフッド島に着いた。

ローフッドの島民はハスバールと同じ褐色の肌の人々である。

この島の人々は温和で開放的な気性で知られており、エトルリア帝国の領土となる時もほとんど抵抗をせず大人しく帝国の支配を受け入れたので、全く差別的な処置を受けていない。

これがエトルリア帝国のやり方であった。

その領土を拡大する際、侵略に抵抗した者達には虐殺もためらわず、支配後の収奪も激しくし、二等国民として明確に差別しながら支配を行う。

だが抵抗をせず進んで支配を受け入れた場合は寛大に扱い、エトルリア帝国の臣民としての権利を与えた。

無論これは領土拡大をより効果的に行う為の政治的計算であった。

ローフッドにはエトルリア帝国から多くの人々が入植しているが、元の島民達とも衝突せず比較的上手くいっているようであった。

一向はこの島の海産物や果実に舌鼓を打ちながら鋭気を蓄え、食料や水などをたっぷりと補給しローフッドで最も信仰されている大海を統べる神、オーダインの神殿で航海の安全を祈願した後再び船に乗り込んだ。

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