I話の続きです。
※未成年の飲酒等の表現があります。
※お酒が飲めるのは二十歳からです。未成年が飲酒をする事は、法律で禁止されています。煙草などもですよ!良い子も、悪い子も、真似しないように!
廃校での任務を無事に終えて担任の元へ戻ると、
(強面担任)「本当は、昨日行くはずだったのだが。昨日は、そんな余裕は無かったからな。」
「一年生の初任務も、無事終えた事だ…。今から打ち上げに行く!」
(茶髪の奴)「お〜。イェーイ。」
(ヘンテコ前髪野郎)「打ち上げですか、良いですね!」
周りは燥いでいるが、俺は打ち上げなど行った事が無い。と言うか、聞いたことも無い。
何で楽しそうなんだ?コイツ等。
自分一人だけ、頭にはてなマークを浮かべていた。
(茶髪の奴)「何でそんなテンション低いの?」
「ん。」
黙って立ち尽くしていると、茶髪の奴が話しかけて来た。コイツと話をするのは初めてだ。
「いや。打ち上げって何だろな〜って。」
「「「え。」」」
茶髪の奴だけで無く、ヘンテコ前髪野郎と、担任まで、揃って間の抜けた声を出す。三人共、目を見開いて、口を開けたまま固まっている。
「んあ?」
(ヘンテコ前髪野郎)「え、ちょ、君。マジで?」
「は?何が?」
(茶髪の奴)「マジか(笑)」
俺は、ますます訳が分からなくなった。
「あー!宴会の事ね。」
俺はヘンテコ前髪野郎と、茶髪の奴から、打ち上げの内容を聞いた。何でも、飲み食いして労を労う場なんだとか。
(ヘンテコ前髪野郎)「宴会って…。」
(茶髪の奴)「そう言えば、五条家の坊ちゃんだったね。」
五条家と言うのは、呪術界の御三家と呼ばれる良いトコの呪術師の家系の一つだ。
「お前ら、宴会の何が楽しいんだよ?」
「なんか変なオッサンがめっちゃ来るし、礼儀正しくしないと怒られるし、あんなん楽しくねェだろ。」
(ヘンテコ前髪野郎)「あー…打ち上げは、君の言ってるのとは大分違う。」
「そんな堅苦しくないよ。」
(茶髪の奴)「行けば分かる。」
(ヘンテコ前髪野郎)「そうだね。行けば分かるよ。」
そうして、ろくに説明もされないまま、車に押し込まれ、補助監督が運転する車で、打ち上げに出発したのだった。
(強面担任)「何処の店が良い?」
(ヘンテコ前髪野郎)「あ、決まってなかったんですね。私は何処でも。」
(茶髪の奴)「酒が飲めるとこ。」
(強面担任・五条)「「おい。お前未成年だろ。」」
(茶髪の奴)「ハモってんじゃん(笑)」
コイツ、ダメじゃん。
そんな、ヤバい会話を繰り広げていると
「着きました。」
と補助監督が車を止める。結構、早く着いた。打ち上げは、焼肉屋さんでするみたいだ。看板には、『肉うまい』とだけ書かれている。もっと、別の店名が思いつかなかったのだろうか。焼肉屋の看板には、店名の近くに、小さめの文字で、その店の、自慢の肉などが書かれていたりする物だと思うのだが、その下にも、小さく『肉うまい』としか書かれていなかった。
「俺、初めて見たわ。看板で食レポしてる店。」
(ヘンテコ前髪野郎)「私も。」
「な。」
聞いた事もない店名だし。例えCMで流れてても、焼肉屋とか、肉の美味いところの、説明の途中に聞こえると思う。
『このホルモン〝肉うまい〟!!』
とか。
『〇〇屋の肉は、すごく貴重な部位を取り揃えているんです!やっぱこだわって厳選したお肉を食べてくれた時の、お客様の『このお〝肉うまい〟!』って言うのが本当に嬉しくて…!』
的な感じで。
肉うまいって、肉の事を語る時なんかによく出て来るけど、店名にしてる所は見た事が無い。本当に、『肉うまい』としか書いて無い。『肉うまい』って文字が黄色で、文字を貼り付けている板が、赤色の、アンパ◯マンカラーの看板。
(茶髪の奴)「私は、酒が飲めれば良いよ。」
(強面担任・五条)「「やめろ。」」
(強面担任)「はぁ…行くぞ。」
「ん。」
(ヘンテコ前髪野郎)「はい。」
(茶髪の奴)「はーい。」
担任の後に続き、焼肉屋さんに入る。店内は、結構、普通の焼肉屋さんだった。看板のインパクトが強すぎて、正直、もっと変わった店だと思っていた。
「いらっしゃーい。久しぶりね!夜蛾ちゃん!」
焼肉屋さんに入ると、金髪で、華やかな服を着た女性が、担任に向かって、夜蛾ちゃんと呼びかけた。派手な服だが、違和感が全く無いどころか、気品を身に纏っている。明るいのに、何処か深みのある赤色のドレスは、まるで薔薇で作られているようだ。金色の髪は、染めた髪だとは思えない。それ程に、滑らかで綺麗だ。丸くて大きな胡桃色の瞳が、店内を明るく照らしている黄色い色の灯りの光が映ってキラキラとしている。
(強面担任)「お久しぶりです。伽羅さん。」
「そちらの可愛い子たちは?」
(強面担任)「私の生徒です。昨日、呪術高専に入学して来たのですよ。」
「あら。じゃあ一年生なのね!」
(強面担任)「えぇ。無事に初任務を終えたので、打ち上げをしようと思いまして。」
「……は。」
高専の事を一般人に話しても良いのか?!いや、ダメだろ!!
「ちょ、高専の事話しても良いのかよ?!」
(ヘンテコ前髪野郎)「ちょっと…夜蛾先生?!」
(茶髪の奴)「それ、言っちゃって大丈夫そ?」
ヘンテコ前髪野郎と、茶髪の奴も慌てている様だ。慌てるのが普通だ。何の為に、呪術師がわざわざ帳を下ろして、非術師にバレない様に呪霊を祓っていると思っているのだろうか。非術師に、得体の知れない恐怖を与えない為だ。非術師の心の安泰が、呪霊が生まれない唯一の方法だ。非術師の負の感情から呪いが生まれるのだから。なのに、呪術高専の存在を明かしてしまっては、呪霊と言う、人間に害をなす存在が居るんだと言ったも同然だろう。人間を害するそんなモノが存在すると知ってしまえば、当然、気持ち悪いと思うだろう。その感情で、また呪霊が生まれるかも知れない。一級の呪術師なら、それぐらい知っているはずだろう。
なのに……。
何言ってんだよマジで…。それ言っちゃダメだろ…。
(強面担任)「お前達。一旦落ち着け。」
「この人はな。九 伽羅(いちじく きゃら)さん。今は、焼肉屋を営んでいるが、元、呪術師なんだ。」
「……元…呪術師………。」
(ヘンテコ前髪野郎)「あ、なるほど……。」
(茶髪の奴)「えー。マジか。」
(伽羅さん)「ごめんなさい。びっくりさせちゃったかしら?」
(ヘンテコ前髪野郎)「いえ、全然大丈夫ですよ。」
(茶髪の奴)「元、呪術師って言うのは驚いたかな。」
元、呪術師が焼肉屋さんしているとは。本当に、世の中、どんな人間が居るか分からないものだ。と言うか、『肉うまい』ってこの人が考えたのだろうか。
呪術師は、自分で呪力をコントロールする事が出来る。だから、呪術師から呪霊が生まれる事は無い。
「…っはぁ……なるほどね。」
(伽羅さん)「驚かせてしまってごめんなさいね。ほんと。」
伽羅さんは、そう言って俺の目の前に来て、申し訳なさそうに苦笑する。綺麗な金髪、瞳。華やかだが、上品な顔立ち。とても美しいが、その美しさの奥に、暗黒が有るのが分かる。
「……。」
(伽羅さん)「どうしたの?」
「いや…。マジで呪力が有るなぁ、と。」
(伽羅さん)「…呪術師だったもの。今でも、見つけ次第、呪霊を祓ったりもしてるからね。」
「へぇ…。」
この伽羅と言う人、結構、呪力量があるみたいだ。弱くは無い。一級呪霊にも、勝て無い事は無いだろう。なのに、何で呪術師を辞めたのだろう。
そんな俺の考えが分かったかの様に、伽羅さんは、また困った顔で苦笑した。表情に影が落ちる。伏せた目の、睫毛の間から僅かに見える胡桃色の瞳が、微かに揺らいだのを感じた。
(伽羅さん)「さて、打ち上げだったわね!美味しいお肉が揃ってるから、沢山食べてね!」
伽羅さんは、先程の様に表情を明るくしてそう言う。
伽羅さんが呪術師を辞めた理由なんて、考えたって仕方が無い。詮索した所で、何の意味も無い。人には人の事情と言う物がある。この人の過去を知って、何になるのか。興味本位で踏み込めば、面倒臭い事になる事だってある。踏み込むべきで無い事もあるのだ。知る必要の無い事もあるのだ。関わりが無いと言うのは、一番無難な事だろう。そう、自分に言い聞かせ、思考から除外する。
(茶髪の奴)「お酒って何がありますか〜?」
(強面担任・五条)「「だから、お前は未成年だろ。」」
(ヘンテコ前髪野郎)「君、夜蛾先生と仲良いね(笑)」
(茶髪の奴)「だよね(笑)」
「さっきからめっちゃハモってるし(笑)」
「は?」
「入学して早々に、変な前髪のムカつく誰かさんのせいで拳骨喰らってんのに、仲良い訳ねェだろ。」
(ヘンテコ前髪野郎)「奇遇だね。私もサングラスをかけたムカつく誰かさんのせいで拳骨喰らってるんだよね。」
「へぇーかわいそー(笑)」
(強面担任)「おい。ここで喧嘩するなよ。」
(伽羅さん)「はーい!お席にご案内するわよ!」
先程の車の中で、担任が、伽羅さんに、打ち上げを伽羅さんのお店でやりたいと連絡をしていた様で、今日は、伽羅さんが、急遽お店を貸切にしてくれたみたいだ。偶々、お客さんも居なかったらしい。今日は、お店の中は、俺たち以外誰もいないが、いつもは、かなり賑わっているんだそうだ。
(伽羅さん)「ここの席を使ってね!」
案内された席はすごく広かった。違いテーブルに、長いソファーの様な椅子。俺達、全員が余裕で座れる広さだ。
変な所で、区切ってしまってすみません。次回くらいに、伽羅さんの事について書ける様、頑張ります!
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