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触れ合った手が自然と繋がれ、彼と連れ立って歩き出すも、
道沿いに並ぶショップを目で追いながら、プレゼントはどうしよう……と、私は未だに考えあぐねていた。
と──「少しここに寄ってもいいですか?」彼がふと足を止めた。
そこはメガネショップで、「新しいメガネを作ろうかと」話すのに、
「そうだ…!」と、閃いたことがあった。
一緒にお店の中に入って、「先生は、どんなのにしようと思ってるんですか?」と、問いかける。
掛けているメガネを外して胸ポケットにしまいながら、「そうですね…」と、彼が手近なフレームを手に取った。
たまたま手にしたのを掛けてみただけなのに、(どうしてこんなに嵌って見えるんだろう)と、彼の顔に思わず視線が釘付けになってしまう。
「好きなメガネの形とかはあるんですか?」
彼の好みのタイプが知りたくて、そう聞くと、
「金属フレームや、あとはノンフレームのものとかが好きですね」
そう答えが返って、確かにそういうフレームが先生には似合うように思う。
「……じゃあ、これを掛けてみてもらってもいいですか?」
リムレスタイプの細長いスクエアレンズのメガネを、彼に手渡した。
掛けると少し冷たい感じにも見えて、それがクールな彼の容姿に相応しく、より魅力的に映える。
本当に何でも似合って格好良くてと感じていると、ふいにメガネが外され顔が近づけられた。
急に真近に顔が迫り、「あっ!」と、小さく声を上げると、
「メガネがないと、これぐらいの至近距離じゃなければ、君の顔がよく見えないので」
彼がフッ…といたずらっぽく笑った。
「せ・ん・せ・いっ」
胸を両手で押し返して、「また、からかおうとしてましたよね?」言いながら軽く上目に睨むと、
「ああ、君にはかないませんね。なんでも見透かされてしまって」
口元に拳をあてて笑いを堪えた。
政宗先生は本当によく笑うようになって、以前の取り澄ましたような表情は、あまり見られなくなっていた。
今の彼は心から笑っているんだという印象が私にも実感できるようで、
これまでいろんなものを肩に背負ってきた分、その重荷を少しずつでも下ろすことができているんだとしたら、
それは、自分のことのようにも幸せに感じられるようだった……。