彼にはどんなフレームが合うんだろうと、メガネを外した顔をじっと見ていたら、
「何をそんなに見ていて?」
不思議そうな顔つきで問いかけられて、「先生?」と、問い返した。
「…うん?」と、こちらに顔を向ける彼に、
「あの、私からメガネをプレゼントさせてもらってもいいですか?」
さっきお店に入る前に思いついたことを彼に打ち明けた。
「私に、メガネを?」
「はい」と頷いて、「実はお誕生日のプレゼントを用意するのを忘れてしまって、それで急になってしまうけれど、メガネをプレゼントさせてもらえたらなと思って」思いつきのままを伝えた。
「……そんなことは気にしなくてもいいんですよ。でも、あなたにメガネを選んでもらえるのも嬉しいですね」
微笑む彼に、「じゃあ少し待っててもらえますか? 内緒で選びたいんで」そう言うと、
「わかりました。どんなものになるのか、楽しみにしていますね」と、ショップ内の待ち合いのソファーへ、彼が腰を下ろした。
聞いた好みなどから、彼に似合うと思うフレームをお店のスタッフさんにアドバイスをしてもらいながら選んだ──。
いくつか候補を挙げて、さんざ悩んで一つに絞った。
先生からメガネを借りて、お店の人に「プレゼントにしたいので、これと同じレンズでお願いできますか」と伝えると、快く引き受けてくれた。
メガネはその場で持ち帰りをすることができて、喜んでもらえたらいいなとちょっとわくわくするような思いで、ソファーを立つ彼の腕に自分の腕を巻き付けた。
「プレゼントが決められて、よかった」
彼の腕にぎゅっとしがみついて呟くと、
「私にとっては、君といられることが、一番のプレゼントなので」
そう耳元で言われて、ぼっと耳が熱を孕んで赤らむのが自分でもわかった……。
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