「…ねぇ知ってる?あの子、人の彼氏に色目使ってるらしいよ」
「あ~それ聞いた事ある、今その噂めっちゃ人気だよ。他の学年の人も知ってるって」
根も葉もない噂話を友達同士で広め合い、睨みに近い視線を向けてくる同級生たち。
そのなかには数週間前までは他愛のない話をして仲良くしていた子達も多くいる。
『…そんなことしてないのに』
酷く乾いた咽喉に張り付いた言葉を引き剝がすように呟く。
いつからか“私が人の彼氏に色目を使っている”という噂がクラスの世にいう“陽キャ”という部類に入る人たちを中心に流れ始めた。
人の彼氏を取るような事なんて一切していない、本当に。
女子生徒はもちろん、男子生徒も半ば面白がってその噂を信じている。
だけど唯一1人だけ
「また教科書ねェの?…貸す」
『へ?く、黒川くん?…いいの?』
隣の席の黒川イザナくん。
不良の総長をしているだとか、少年院に入っていたとか言われていて、みんなには恐れられている。
でも私は彼の事を怖いだなんて思わない。
「良くなかったら言わねぇよバカ。
…どうせオレ寝るし。」
今みたいに教科書をクラスの子に隠されて困っていると助けてくれるし、少し前に私が居ないところで例の噂について話している人から私を庇うような発言をしてくれていたところを偶然見た。
『あ、ありがとう…!』
確かに少し言葉はキツい人かもしれないけれども、根は本当にいい子で優しい。
そんな彼に惚れないわけなくて。
教科書を渡してもらう際に少し指が当たった、たったそれだけの事なのに触られた指が…いや全身が熱っぽくなり血が騒いだ。
その熱く純粋な感情を紛らわすかのように新品と言ってもいいほど綺麗な教科書に私は視線を移した。
黒川イザナ 視点
『あ、ありがとう…!』
そう頬を薄い赤色に染めてお礼を言う隣の席の想い人。
「…バカだなぁ」
誰にも聞こえないほど小さい声で呟く。
本当にバカ
彼女がいじめられている原因であるあの噂を流したのはオレだというのに。
そんなことにも気付かず、安心しきった顔で笑う彼女につい愛しさが積もる。
オレはいつだって手段を選ばない。
だってこうすれば彼女はオレだか見えなくなる。
“孤独”という暗い箱に閉じ込められた彼女にとって、手を差し伸べる存在であるオレは光
…思い出したくはない出来事だけどオレもその経験者。
「…かわいーなぁ」
赤い顔を必死に隠すように教科書を真剣に見る彼女
彼女の姿を見るとすぐに頬が緩んでしまう。
さっさと依存して依存してオレのところまで堕ちてくればいいんだ。
それしか彼女には残された道はないから。
「…だーいすき。」
長くなってしまいました、すんまへん。
くそ突然ですが皆様はどんなヤンデレさんが好きですか!!!
私が個人的に好きなヤンデレの型は「孤立誘導型」です、今回のイザナくんを孤立誘導型で書かせてもらいました。
“相手を手に入れるためなら手段を選ばない”、彼にぴったりだなと思いまして!!!(
実際にエマちゃんのときもそうでしたし。
夢主さんはいつ、噂を流した犯人がイザナくんだと気付くんでしょうね。
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