廃墟と化した異能遊園地の中心、巨大な観覧車の前に立ちはだかる黒のフリルドレスの少女。
彼女の瞳は冷たく光り、口元には不敵な笑みが浮かんでいた。
「私の名はドロテア・ブライトン。異能遊園地の支配者よ。」
アーサーは落ち着いた様子でティーカップを傾ける。
「お嬢さん、紅茶でもいかがですか?」
ドロテアは冷ややかな目で彼を見つめた。
「茶会なんてナンセンス。ここでは、異能だけがルールなのよ!」
彼女が手をかざすと、遊園地全体が一斉にギシギシと鳴り出し、アトラクションの影から無数の異形のピエロたちが再び現れた。
「さっきの茶会トリック、もう効かないわ。」
三寳が苛立った様子で拳を鳴らした。
「もういい加減、紅茶じゃどうにもならねぇだろ……。」
「ニャー、なら俺の出番だな。」
――ウラジーミルが前に出る。
彼の青い毛並みがふわりと膨らみ、鋭い緑の瞳が怪しく光った。
「……猫が、出てくるの?」
ドロテアが驚きを隠せないまま見つめると、ウラジーミルはにやりと笑った。
「俺の異能……『オール・ロシア・ファイナル』!」
ゴゴゴゴゴ……!
次の瞬間、ウラジーミルの周囲の空気が凍りつき、遊園地の地面が青白く変化した。
「な、何……!?」
ドロテアが驚愕する。
「異能発動――“ロシアンブルー・インフルエンス”!」
ウラジーミルが高らかに叫ぶと、ピエロたちが突如動きを止め、ガタガタと震え始めた。
「ウラジーミル……お前、何やった?」
三寳が驚いた表情で尋ねる。
ウラジーミルは毛づくろいをしながら答えた。
「威圧効果だ。相手は本能的に俺を“恐るべき捕食者”と認識する。」
ピエロたちは次々と膝をつき、その場で崩れ落ちる。
「くっ……私の異能が……効かない!?」
ドロテアが焦りの表情を浮かべた。
ウラジーミルはしっぽを振りながら言った。
「まぁ、俺を怖がるのは当然だ。俺は冷戦時代を生き抜いた猫だからな。」
三寳が呆れながらも笑う。
「冷戦ってお前、何歳だよ……。」
「にゃー、気にするな。」
だが、ドロテアは唇を噛みしめ、怒りに震えていた。
「……ふざけないで!」
彼女の手が宙を舞うと、観覧車が異能の力で回転を始め、空中から異様な巨大ピエロが姿を現した。
「これが私の真の異能――『メリーゴーランド・ヘル』!」
アーサーが優雅に微笑む。
「ほう、ではそろそろ“紳士の反撃”といきましょうか。」
ウラジーミルが前足をすっと舐め、不敵に笑った。
「猫を怒らせると怖いぜ?」
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