観覧車の中心から、異様な巨大ピエロが姿を現した。
その体はねじれ、歪んだ笑顔が無数に浮かんでいる。
「これが私の真の異能……『メリーゴーランド・ヘル』!」
ドロテアの叫びと共に、ピエロは回転しながら猛スピードで迫ってくる。
「くっ……こいつ、速い!」
三寳櫻は一歩後退しながら、拳を握る。
「アーサー、ウラジーミル……今のうちに手を打つぞ!」
「にゃー、いい作戦はあるのか?」
ウラジーミルがしっぽを振りながら問うと、三寳はニヤリと笑った。
「私の“第三の口”を使う。」
アーサーが驚きの表情を浮かべる。
「まさか……あれを?」
三寳は無言で頷き、勢いよくしゃがみ込むと――
バシュッ!
彼女の額の真ん中から、不気味な第三の口がパクッと開き、そのまま地面に押し付けた。
「……これが、私の異能の本領発揮だ。」
第三の口が地面に吸い込まれると、横浜異能遊園地全体がグラリと揺れた。
「何……!?」
ドロテアの目が見開かれる。
観覧車、ジェットコースター、メリーゴーランド――すべてが音を立て、まるで飲み込んでいるかのように変形し始めた。
ズズズ……
「技発動――『絶対捕食領域(アブソリュート・デヴォウリング)』!」
地面に広がった三寳の第三の口が、遊園地全体の「異能エネルギー」を食らい始める。
ウラジーミルが目を丸くする。
「にゃ……これ、ヤバい異能じゃないか……?」
「まぁな。これは食事と排泄を同時にする能力の応用版だ。」
三寳の第三の口が次々と遊園地の異能エネルギーを吸い上げ、ピエロたちは次々に力を失って倒れていく。
「そんな……私の異能が……!」
ドロテアは後ずさるが、三寳は不敵に笑った。
「私の第三の口は、食事だけじゃなく、“異能そのもの”を消化できるんだよ。」
アーサーが優雅に紅茶をすする。
「なるほど。まさに無敵の胃袋ですね、お嬢さん。」
「言うな!」
その瞬間、観覧車が崩壊し、巨大ピエロが断末魔の悲鳴を上げながら消滅した。
ドロテアは膝をつき、肩で息をする。
「……あんたたち、ただの愉快な異能者じゃなかったのね。」
ウラジーミルが彼女の頭の上に乗っかり、爪を軽く立てる。
「さあ、大人しく負けを認めるんだにゃ。」
三寳が第三の口を閉じると、静寂が戻った。
「……もうこの遊園地も終わりだ。」
アーサーはティーカップを片付けながら微笑む。
「さて、次の目的地に向かいましょうか。」
三寳は第三の口を軽く触りながら、不敵な笑みを浮かべた。
「ふふ……次はどんな異能が喰えるかな。」
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