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「で、ガチで俺たち何も持ってないんだけど」
「いやカメラは持ってる」
「無人島においてカメラがなんの役に立つとお思いで?」
「ほらダイイングメッセージとか残す時」
「盛大なフラグ立てんじゃねぇ」
そう、こう言う企画では普通無人島とか言っておきながらちゃんと生活できるようなキャンプ道具を持って無人島生活もどきーみたいな事が多いというか殆どだ。そして、彼等はカメラ以外各々の「何か一つ」だけしか持ってきていなかった。流石に生身の体で行かせるのはまずいという判断(これを降させるためにメンバーが壮大な命乞いをした)により、「一人ひとつ、必要だと思うものを持ってきてもいい」というルールが新設された。
「みんな、何持ってきた?」
「僕はね、絶対に役立つもの持ってきたから!」
「俺もこれ見せたら絶対みんなびっくりするで!」
自信満々に言う青柳と橙乃だが、他のメンバーは彼等のことを全く信用しておらず、「ここでネタ持ってくるのはないよね」「流石にそこまで馬鹿じゃないよね」と圧をかけまくる。勿論絶対この二人がネタ枠ということを分かった上での所業である。しかし、そんなペンチプレスSAN値直葬寸前にもかかわらず、二人は重役の構えをして堂々と座っていた。(無人島に椅子は無いので空気椅子である)
「せーので出そうころちゃん」
「オッケー、せーのっ」
掛け声と共にデュエルスタンバイ!と言わんばかりに差し出された二つのもの。それはーー。
「ーーーバナナと、モバイルバッテリー……」
場に沈黙が訪れる。あれ、とお互いを見合う二人。そこに漂うのは甘い空気…ではなく、どっちがこの空気にしたんだよ責任押し付け合いの空気だ。
「…いや、これはどっちも悪い」
「「なんで⁈」」
僕のバナナ……バッテリー百パーなのに……と漫画で出てくるタイプの黒い縦線と共に血に崩れ落ちる二人。そんな彼等に向かって他メンは、
「バナナ出しときゃいいと思ってんだろ」「発想が幼稚」「モバイルバッテリーがあって仮にスマホがあったとしてもWi-Fi無いから意味ねーだろ」「だ、大丈夫、ミスは誰にでもあるから!」とそれぞれの方法でメンタルを潰していき、最終的にそこに残ったのは生きながらにして死霊のような顔つきをしたC&Jだった。
しかしここで終わってしまうような器であってはすとぷりのエンターテイナーは務まらない。二人はやおらガバッと立ち上がり、四人に向かって僕たちよりアレだったら月に変わってお仕置きよ!と言い放ったのであった。
「え、これ失敗したら魔法少女にされる?」
「それはまどか☆マギカであってセーラームーンではない」
「うわ莉犬ガチやん」
「これ動画になったらピー音伏字だねきっと」
「メタいこと言わないの!」
軽快なテンポの軽口を叩き合いながらそれぞれ持ってきたものを準備する。そして全員が準備できたところでせーの!と声を掛け合い、バン!と品物を見せ合った。ーー場に沈黙が訪れた。
「という訳でですね、色々あったことは察してください」
貼り付けた笑みを浮かべてナレーションする紫月。他メンも何もありませんでしたよと言わんばかりの笑顔で仲良くしているように見えるが、よく見るとお互いにどつきあっているのが分かる。それ以上に、明らかにメンバーの服がヴォロヴォロになっているのだ(フランス風)。
「そうそう、察して」
「でもこの件と俺たちの服がヤバいことは全く関係ないから」
「俺たちはとっても仲い…った、おいころん何すんだよオマエ」
「りーぬ!素!素!」
きゅるるるん、とりぬきゅんの笑顔を浮かべていた赤羽だったが、青柳に蹴りを食らって舌打ちしながら戦闘態勢に入ろうとする。しかし黄星に素が出てる!と指摘されて、一瞬後には「ここカットな」と言いながらりぬきゅんの笑顔を浮かべ直していた。ついでにそれを見て「うーわ腹黒」と言った桃宮にもローキックをかましていた。腹黒は浅黄であると信じて疑わない赤羽である。
「ーーあ、でもなんか菊池さんから話して下さいっていう思念波がきてる気がする」
「え、菊池さんテレパシー使えんの?」
「菊池さんだよ?」
「使えるね」
全ての理由を「菊池さんだから」で完結させる紫月。そしてそれで納得してしまうメンバー。果たして菊池さんとは何者なのか。
「簡単に理由を話すと、俺たち全員が『誰かはマシなの持ってくんだろ』っていう理由でホントにしょうもないのしか持ってきてなかったから責任の押し付け合いが始まった結果こうなったね」
あれだけ怯えてたにも関わらず、エンターテイナーグループすとぷりは結局絶対生活の必要だと思われるものよりネタ枠のものを持ってきてしまっていた。否。黄星の持ってきたものはチェーンソーであったためその限りではないが。しかしこの島には電力がないためチェーンソーもただの金属物体と化しているが。
「僕はさとみくんが持ってきてたトイレットペーパーの意味を知りたい」
桃宮が持ってきていたのはトイレットペーパー(ロール9個入り)である。しかもダブル。無駄に高いものを持ってきている。青柳の問いかけに対し、桃宮はさとみ節を発揮し、『そもそも人間の生活において大切なことをあげるとするならば食事睡眠そして排泄である』みたいなことを語り出した。簡単に言って仕舞えば『トイレットペーパー結構使えんじゃね理論』である。その積み重ねられた理論(ゴリ押しともいう)と発せられるカリスマ(ゴリ押しともいう)で、メンバーが『トイレットペーパーは無人島で必要である……?』と思うまで説得することに成功した。
「だから、トイレットペーパーは無駄じゃない」
「そう、なの…?」
「ごり押された感半端ないけど」
「いやいや、そんなぁ」
ことある。事あるのだが、幸いにしてメンバーは直ぐ『どうやって生活していくか』について話し始めたので深く言及されることは無かった。…いや、桃宮の脳内に菊池さんの『さとみくん?』が送られてきて本当にトイレットペーパーが必要になりかけた。やはり役に立つらしい。