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放課後、湊と一緒に帰る途中、いつも通りの道を歩いていた。私の心はなんだかドキドキしていて、湊の言動が気になって仕方がない。
(どうして湊、急にあんなに距離を縮めてくるんだろう…)
何度も自分の胸をドキドキさせながら、私は湊と並んで歩いていた。いつものように無言の時間が続いていたけれど、今日はなんだか、湊の様子がちょっと違うように感じた。
そして、帰り道の途中で、私たちはいつもの分かれ道に差し掛かった。
「じゃ、またな。」
湊が軽く手を振って、私がそのまま別れ道に向かおうとしたとき、突然…
**「せりな!」**
その声が背後から響いて、私は振り返る暇もなく、次の瞬間、何かが私の背中にピタッとくっついてきた。
「えっ!?」
驚きで目を見開いた瞬間、私の体が湊に包み込まれるようにバックハグされていた。
「なっ、なにこれ!?」
私は驚きのあまり、声が出なかった。湊の腕が私の体をぐっと引き寄せると、私はそのまま動けなくなった。
「お、お前、どうしたの…!?」
湊は少し慌てたような感じで、顔を真っ赤にしながら私に言った。
「トラックが曲がってきそうで…お前、気づかないうちに道に出ようとしてたから。」
「えっ、トラック?」
突然の状況に私の頭が混乱してしまって、何が起こったのか理解できなかった。目の前にトラックが近づいてきているのが見えて、湊が反射的に私を引き寄せたのはわかった。でも、その行動に全く予想がつかなかった私は、さらに驚いてしまう。
「お前、ほんとに危ないんだよ、気をつけろよ。」
湊の声はいつもの冷たいものではなく、どこか焦っているような、優しさが感じられた。
私の心臓がバクバクと速く打つ。湊にこんな風に抱きしめられるなんて、今まで一度もなかった。
でも、湊が手を離すと、急に彼は素っ気なくなる。
「ほら、行けよ。」
その一言が、どこか照れくさくて、私の胸がキュンとした。
「湊…」
私はそのまま立ち尽くしながら、湊を見つめていた。
湊は照れ隠しをするかのように、顔を横に向けて、「お前、ふざけんな。」とつぶやく。
その表情が可愛くて、私は思わず笑ってしまった。
「ありがとう…湊。」
湊は一瞬だけ振り向いて、「別に。」とそっけなく言ったけれど、顔は真っ赤で、どう見ても照れている。
(湊が私をこんなに真剣に守ってくれるなんて…)
その瞬間、私は湊の気持ちに少しだけ気づいたような気がした。彼の冷たい態度の裏には、ちゃんと私を気にかけている一面があったのだ。
**—その日の夜—**
家に帰ってから、湊のことを思い返してみた。あの時、湊が私を抱きしめてくれたことで、私は何だか胸の中がいっぱいになった。彼の気持ちをまだ完全に理解しているわけじゃないけれど、少しずつ彼の本当の気持ちが見えてきたような気がした。
(でも、湊はまた素直になれないから、気づかれないようにしようと思ってるのかな…)
その思いを胸に、私は次の日を迎えた。