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恋した気持ち

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恋した気持ち

2 - 第2話 おもいあい

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2024年06月03日

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深夜、時計の針が北をさして間もない頃だった。自室のドアをノックする音が聞こえた。

「あの……樹さん、起きてますか?」

その声は確実に斗亜くんのものだった。少し控えめで、可愛く愛らしい声。突然のことに驚いて声が出なかった。一体何をしに来たのか全く予想もつかなかったため、不安と驚きでいっぱいだった。

「と、斗亜くん?!どうしたのこんな夜中に……」

急いでドアを開ける。すると、その勢いにびっくりしたのか、斗亜くんは目を大きく見開いて俺を見た。手を胸に当てている仕草すら愛おしく可愛い。あ、とか細い声が俺の胸をぎゅっと締め付ける。

「話したいことがあって……優太が居ない時が良かったんです。」

少し期待してしまった。優太に秘密で、なおかかつ、俺の部屋までわざわざ来てくれたことに。

「じゃあ、部屋入って。ゆっくりでいいよ」

斗亜くんを部屋へと招き、ベットの上へと座らせた。俺は、冷えると思い、斗亜くんの背中にタオルケットをかける。

「ありがとうございます。すみません、急に……」

斗亜くんは何処かずっと不安そうで、なんとなく俺も不安になる。

「いいよいいよ。で、話って何?」

斗亜くんは少し口ごもる。俺にでも言いづらい内容なのか。直感だったが、それは俺にとってあまり良くないことな気がした。

「あの……実は」

「僕、優太のことが好きです。」

「男の子同士で、変なのは分かってますが、気がついたら好きになっていて……」


その言葉は何処か遠く感じた。失恋のショックよりも、どうしようという焦りが出てきた。まだ、ただの恋愛相談だったなら良かったのに。よりによって優太だ。確かに、優太はいい子だし、俺なんかよりも純粋で可愛くて……。

「あ、えあ……そうなの?そっか……なんだかいいね、青春って感じ」

重みのないふわふわとした言葉が出てくる。今の心情を表すなら困惑、不安、羞恥。自分の感情全てが憎らしく感じ、早くこの場を切り抜けたかった。

「ごめんなさい。こんなこと聞くなんて苦でしたよね……。僕ももう、どうしたらいいか分からなくて……」

俺も分からないよ。そう口にしたかった。

「だから……樹さんに相談に—–」

ドサッ

「へ?」

気づいた時には斗亜くんをベットに押し倒していた。混乱していたせいかもしれない。

斗亜くんは先程よりも大きく目を見開いて、髪は衝撃で少し崩れて、それでもどこを見ても綺麗だった。

「いッ、樹さん……?」

不安そうな目になる。手を俺に強く押さえつけられて、動こうにも動けないのだろう。かなり怯えている。

「俺、好きなんだ。君のこと。ごめん」

斗亜くんはへっ?と困惑の声を出す。俺は彼の額にキスをする。そして、目を合わせる。その目は、俺を見ようとはしなかった。目を逸らし、頬を真っ赤に染めていた。汗も伝っており、見惚れるのに充分な表情だった。

「い、あ、やぁ、そんなこと言われても何も出来ないっ……」

さらに顔を真っ赤にして喋る。ただ、可愛かった。

「っ……ごめん。」

斗亜くんの上から退き、ベットに座り込む。そうしていると、斗亜くんも体を起こし、こちらに向いてきた。

「ご、めんなさい……気持ちの整理がつかなくて」

「いつかちゃんと答えますからっ…ひゃッ?!」

斗亜くんの体を抱き寄せ、ぎゅっと包み込む。もうどうしたらいいのか分からなかった。辛くは無い、ただ、不安だった。

「いいよ、振って。俺がおかしいんだから」

そういって、手を戻す。そのまま、俺は部屋を出た。



「ん……今何時だ?」

深夜。いつもはこんな時間に眼を覚ますことはなかったろうに。今日は、どことなく寂しさを感じですっと目を覚ましてしまった。

「あれ…斗亜が居ないや。トイレかな」

同じ布団で寝ていた斗亜がいなくなっていた。開けておいたスペースがぽっかりと穴が空いたようだった。斗亜は僕と一緒に寝るのを嫌がっていたし、もしかしたら時間稼ぎにどっかにいるのかもしれない。

「まぁ、小5にもなって添い寝は嫌か……」

幼い頃、兄さんと一緒に寝ていたことを思い出して、人の温もりを感じていたいが故に、添い寝に誘ったが、元の環境が違いで無理をさせてしまったか、と少し反省した。

「やっぱ、寂しいな……兄さんに添い寝してもらお」

自分勝手な行動だ。それでも、あの懐かしい思い出に名残りが生じて好いていた。幸せゆえの欲張りだ。



「兄さん、部屋にいるかな?」

兄の部屋の前に立ち、じっと眺める。そんなことをしても何も意味が無いが、久しぶりの兄の部屋を遠い昔の記憶として捉えてしまい、ぼやっとしていた。

「兄さ〜ん…起きてる?」

ドアの隙間を覗こうと少し腰を下ろす。なぜ、この行動を思い立ったかは分からないが、何となく探偵ごっこ見たいで少し面白かった。



だが、見たものはそうでなかった。


「樹さんッ……?」


ベットの上に押し倒された斗亜と、その上で、行く手をはばかるような兄さんがいた。斗亜は非常に困惑している様子で、兄さんはどこからか、感情が抜けているようだった。

「……何やってーーーーーー」


「俺、好きなんだ。君のこと。ごめん」


……え?

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