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時刻は午前10時。
僕はひどい頭痛と寒気で目が覚めた。
「うっ、寒い…」
普段はこんなに寒くないのに、と思い辺りを見回すとすぐにその原因がわかった。
ベッドのすぐ横の窓が全開だったのだ。
昨日の夜、換気のためにと開けていた窓を閉めるのを忘れ、そのまま寝落ちしてしまったのだろう。
体温計を棚から取り出し、熱を測ると38度近くあった。
(最悪だ…今日はキヨくんと動画の撮影の約束があったのに)
今日は久しぶりにキヨくんと会えるためとても楽しみにしていた。だが、このような状態で撮影しても風邪が悪化し、迷惑をかけるだけだろうと思い、キヨくんに風邪を引いたことを伝えた。
僕はいつの間にかそのまま眠りについてしまっていた。
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ピンポーン
聞き慣れたチャイムの音で目が覚める。
(誰だろう…なんか荷物頼んでたっけ…)
待てせてはいけないと思いベッドから起き上がろうとする。
だが、急に起き上がったことでひどく目が回り、フラフラの状態でドアの前に立つ。
ドアノブを回すとそこに居たのは…
「…P-P大丈夫?」
今日一緒に動画を撮る予定だったキヨくんだった。
「え、キヨくんどうしたの…」
「お前が熱あるって言ったからお見舞いに来たんだろ」
「え…ありがとうキヨくん」
「…ところでお前昼飯食べたのか?」
あ…お昼ご飯以前に朝ごはんも食べてないや…
「食べてないです」
「分かった。なんか食べれるもの作ってやるからお前は安静にしとけ」
「うん…ありがとう」
そう言うとキヨくんは台所に向かいお粥を作り始めた。
僕はソファに座って、その様子を眺めていた。
正直驚いた。
キヨくんがわざわざ僕のためにお見舞いに来てくれたことに。
動画の撮影もできなくなり、看病もしてもらい、なんだかとても申し訳ない気持ちになった。
キヨくんの様子を見る。
普段キヨくんが料理をしている姿なんて滅多に見ないため、ついまじまじと見つめてしまう。
(キヨくんって、男の僕から見てもかっこいいんだよなぁ)
そんなことを考えながら見つめていると、ふと目が合ってしまった。
「あ…」
「…キツかったら自分の部屋で休んでていいよ」
「お粥できたら部屋持ってくから」
「あ…わかった。そうする」
そうして僕は自分の部屋に戻った。
ドアに背を向け座り込んで考える。
(今の絶対見つめすぎて変に思われたよなぁ)
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朝、PーPから連絡をもらった時は驚いた。
(…馬鹿でも風邪って引くんだ)
なんて思っていたが、時間が経つにつれPーPの様子が気になり、気づいた時には家に向かっていた。
ありがた迷惑じゃないかな、そんな大したこと無かったら俺の心配返せ、と心の中で色々なことを考えながらもチャイムを鳴らした。
俺は驚いた。
自分が思っていた以上にPーPが辛そうにしていたからだ。
あった瞬間に憎まれ口でも叩こうかと思っていたが、そんなこと忘れるくらい、こいつの体調が心配になったのだ。
普段と違う様子の彼に少し戸惑いながらもお粥を作っていた。
……視線が気になる。
さっきからずっと俺の方を見つめている。
(なんか俺変なとこあるのかな…)
そんなことを考えるうちになんだか緊張してしまい、
「キツかったら自分の部屋で休んでていいよ」
と、言ってしまった。
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「PーPお粥できたから入るぞー」
「キヨくん…わざわざありがとう」
「…ああ。いま熱は何度あるんだ?」
「えーと、39度くらい…」
「え?やばいじゃん」
「うっ、うん…」
「お粥食べられるか?」
「ちょっと食べるのもきついかも」
話しているうちにPーPの呼吸が荒くなってくる。
でも、だからといって何も食べないのもまずいし…
「じゃあ、俺が食べさせてやっからPーP、お前は口だけ開けとけ」
「へ?まっ待ってキヨくん!恥ずかし…」
PーPが何か言い終わる前に口にお粥を無理やり入れる。
「あ…おいしい」
「当たり前だろ」
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時刻は13時。
お粥を食べ終わり、しばらくするとPーPはうとうとし始める。
薬を飲んだため、その影響もあるのだろう。
俺がいると寝ずらいのかな、と思い
「じゃあ俺はそろそろ帰るから、何かあったら連絡しろよ」
と意識が遠のきそうなPーPに対して言う。
するとPーPはがばっと起き上がり、俺の腕を掴んで言う。
「待ってよキヨくん、1人にしないで」
「…え」
「なんか、1人になると寂しくなるの!さっきキヨくんを待ってた時も寂しくてしょうがなくて…」
「そ、そうだったんだ…」
「だから、その、迷惑だと思うけど、ここにいて欲しいっていうか…」
泣きそうな、切羽詰まったような声で俺にすがってくる。
きっと頭が回らず、考える間もなく思った言葉がストレートに出たのだろう。
(…こんなPーP初めて見た)
「き、きよくん…?」
涙目で見つめてくる彼に心臓が跳ね上がる。
「…あぁ、体調が元に戻るまで傍にいてやるから、安心して眠れ」
「!ありがとう、キヨくん」
満面の笑みで彼は俺に抱きつく。
「えへへ、僕キヨくんと友達でよかった」
「おい…離れろよ、暑いだろ…」
「ごめんごめん。ほんとにありがとね、今日はいろいろと…して…」
そう言いながらPーPは眠りについた。
…俺は、整理できない自分の気持ちに気づかないふりをした。
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「…あれ?」
目が覚め、隣を見ると、そこにはキヨくんが僕のベッドに突っ伏しして眠っている姿があった。
「え!?キ、キヨくん!?」
「あ、PーPおはよ。体調はどう?」
「あ!めちゃくちゃ良くなってる!」
「…ところでキヨくんはなんでここに?帰ってくれても良かったのに」
「え?覚えてねえの?お前が傍にいてほしいとか言ったからいてやったんだよ」
「え!?僕そんなこと言ってない!」
「…ww言ったって!」
「言ってないー!」
うわ、最悪だ。キヨくんにそんな恥ずかしいこと言っちゃったなんて。
でも、それで本当に傍にいてくれたってことは
(僕、大事にされてるなぁ)
「おい、なに笑ってんだよ。気持ち悪いな」
「気持ち悪いとか言うなよ!」
「www」
彼といるだけで、自然と笑みがこぼれる。
「じゃあ風邪も治ったことだし、ちょっとゲームでもするか?」
「え!やる!」
そう言って僕らはリビングへ駆け出していった。
風邪を移されたキヨくんを僕が看病するのはまた別のお話。