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「全く…あいつのせいで僕の全財産がなくなってしまったじゃないか!どうしてくれるんだ……」
「それはこっちもよ…顔面1発くらい殴っても許されると思うわ」
あの後、レズアから金を取り戻すことが出来なかった。つまり文字通りの1文無しになっちゃったってわけ。…いや、もしかしたらゼイルが多少は持っているかもしれないんだけど。
そのゼイルはお金のことなんてどうでもいいみたいで今日も呑気に私のそばにいる。能天気で羨ましい…。
「くそ、あいつから金を取り返せなかった以上は……」
ノディはなんかブツブツ呟いてる。巻き込まれなきゃなんでもいいわ、と思っていたら玄関のドアを叩く音が聞こえた。こんな時に誰よ…。
「……、こ、こんにちは…ッ」
扉を開けると、小さい女の子がいた。多分、10歳くらいかな…?とりあえずやばい人じゃなくて安心した、でもどうしてこんな所に……?
「…こんにちは。どうしたのかな?」
と、私は優しく微笑んで話しかける。流石に小さい女の子相手にいつもの口調じゃ怖がられるし…。それに気づいているらしいゼイルは笑いを堪えている。酷いよ、これの何が面白いの?
「ここに用があって来たのかい?それなら、金を払わないと入れないけど」
と、ノディが満面の笑みで言った。…ちょっと待って。なんでそんなこと言えるの!? ゼイルは笑いを堪えきれず爆笑している。全く笑えないんだけど!辞めてよ…!
「ぁ、えっと、……ど、どうしよう、どうしたらいい!?ネスティ!?」
と、少女はネスティと呼んだ人物を見ている…え、待って、そこには”誰もいない”よね…?辺りを見ても誰もいない、どこを見てもネスティと呼ばれている人は見当たらない。…なんかこれまたヤバそうな人と出会っちゃったなぁ……。
「えっと…そのネスティって子はどこにいるのかな…?」
と、私は言った。すると、少女は顔を曇らせた。
「………あなたも、ネスティを無視するんですね…なんでみんな、そうなんですか……」
…まずい、どうしたらいいんだろう。私はこの状況を何とかする方法なんて知らないんだけど。
「金を持っていないのなら興味はないね。それじゃ」
…ちょっと待って、いくらなんでも酷すぎるでしょ!!流石にこの状況で帰るのは許せない…!と思って、私は咄嗟にノディの腕を掴んだ。
「…何のつもりだい?」
「何のつもりだい?じゃなくて…!絶対ワケありだって! 」
「金にならないのなら時間の無駄だね」
「私とゼイルだけじゃなんともできないって!」
話にならない。はぁ、どうしよう……。
「…ねぇ、やっぱりわたしなんかが来ない方がよかったんだよ、ネスティ……」
「大丈夫、レスティはここにいていいんだよ。あーあ、このボクが見えないだなんて!人生損してるよ!」
ネスティはそう言ってくれるけど、ぜったいわたしのせい。いつもこうなるのはわたしのせい、ネスティがみんなに無視されるのもわたしのせい、全部わたしのせい!
「ほら、そんなに思い詰めるんじゃないの。レスティは何も悪くない!ね?」
ネスティはそうやって慰めてくれるけど、本当なのかな。でもやっぱり全部わたしが悪いってずっと思ってる。そんなわたしが大嫌い。
でも、結局こんなこと考えてても今起きてることはなんにも解決しない。とりあえず、
「…何のつもりだい?」
「何のつもりだい?じゃなくて…!」
帰ったほうがいいかな。でも、ここまで来て帰るのも……ああ、わたしなんていなければよかったのに。そんなこと考えてたら、
「え〜と、ごめんね…とりあえず中入ろっか?」
歓迎?はしてくれたみたい…ああ、本当にわたしは……
「ほら、行くよ!優しそうな人いっぱいで良かった〜!!」
と、ネスティが私の手を掴んだ。わたしは頷いて建物の中に入った。
「…入れたのはいいけど、ここからどうしたらいいワケ?」
「君が勝手にやったんだろう?僕は何も知らないよ」
「……えっと、ごめんなさい、じゃまですよね、すぐ帰りますから…」
「そんな事気にしなくていいから!ゆっくりしてってよ」
謎の少女…達?を歓迎して、適当な部屋で適当に椅子とか持ってきて喋ってるけど……こんなに気を使うの初めて。この後どうしたらいいっていうのよ……。
「まず、名前聞いてもいいかな?私は莉乃、で、あれがノディでこれがゼイル」
私の適当な説明に2人とも不満そうな顔をしている。
「えっと、レスティです…それで、この子がネスティです……」
相変わらずそのネスティと呼ばれている子が私には見えない。2人の様子を見ると、やっぱり見えていないみたいで安心した。でも、本当に何なんだろう……。
「てゆーか、なんでこんなとこにいたんだよ?迷子か? 」
今まで興味無さそうだったのに、何を思ったのかゼイルが首を突っ込んできた。面倒なことになりそう…。
「…そ、それは……えっと………」
レスティは何かを思い出して、それに怯えている様子。明らかに聞かない方が良かったじゃん…こんな小さいのにこんな所に辿り着くなんてワケありでしかないじゃん…。
「ま、まあとにかく楽しい話でもしようよ!ノディなんか面白そうな話あるんじゃない?」
「はぁ、僕まで巻き込まないでもらいたいね…」
その後4人…いや5人?で会話を交わしているうちに雰囲気が明るくなってきた。
その時だった。
私達は油断していた。
「おい、オレが客を上げていいっていつ言ったんだァ?」
私達は、この和気あいあいとした雰囲気を一瞬で壊せる人物がいることを忘れていた。
レズア・フォリーテ。私達を雇っている組織のボス。はぁ、もう何も考えたくない…。
「ね、ネスティ、どうしよッ」
「大丈夫落ち着いて、ボクがいるから」
ネスティが私の手を握ってくれる。…けど、あんな怖い人がいたら落ち着けるわけがない。
「なんでこんな使えなさそうなガキなんか連れ込んできたんだよ…!」
「ちょっと黙ってもらえますか…言い方が酷すぎるでしょ…」
怖い人と莉乃さんがお話してるけど、ケンカになりそう。全部わたしのせい、全部、全部、全部全部全部全部全部全部全部全部全部
「ボクを信じて。ボクはずっとレスティのそばにいるから」
だって、ゼイルさんもノディさんも私のこと…なんで私のことを哀れんでるような顔で見てるの?莉乃さんもたまにこっちをみて同じような顔してる。ほんとうにどうして……?
「追い出すんじゃなくてまず会話しようとか思わないの!?」
「ふん、こんなガキとなんか話したくもねーわ!」
「気持ちはわかるけど、僕ならそんな手荒な真似はしないね」
「ちょっとぐらいなら置いてやってもいいんじゃねーの?面白そうだし!」
「オマエらオレに対しての態度がそんなのでいいと思ってんのか!?」
なんで私のこと庇ってるんだろう?私はいないも同然の人間だってみんな言ってたのに。
みんなの言う通りだったな、私なんて居なければよかったんだ。
埒が明かない。なんであんなのがボスなんかになれてるの??
流石にゼイルとノディもこっちに加勢してくれてるけど…こうなったら最終手段を使うしかないかな。
「今日1日あんたの下僕になるから!その代わりレスティをしばらくここに置いてあげて…」
レズアはよく他人を自分の言いなりにさせたり、あとは…サンドバッグにしたりとかしてるって噂に聞いたことがある。もし本当にそうなら……。
「私のことあんたの好きなようにしてくれていいから!サンドバッグでも何でもしなさいよ!」
「言ったな?逃げることなんてできねーからな!さて、どうしてやろうか…」
上機嫌そうに笑ってる!成功した…?
ゼイルの様子を見る。すごい呆れた顔してる…。
ノディの様子を見る。すごい呆れた顔してる…。
レスティの様子を見る。なんか言いたそうにしてる…?
「…なんかあった?」
「ぁ、えっと……」
「わ、私がサンドバッグになりますよ…?」
……聞き間違えかな?聞き間違えって信じたいんだけど。
ゼイルとノディみたら驚いてるような引いてるような顔してるし。レズアはレズアですごい嬉しそうな顔してるし。明らかに聞き間違えではないことがわかってしまった…。
…待って、本気で言ってるのこの子??
「えーと、どういうことかな…?」
「みんなから、おまえはサンドバッグになっていればいいって言われてました…ですから、」
「ちょ、ちょっと待って…?」
理解が追いつかなすぎる。話を聞いた限り…そういうことだよね?
「……はぁ、さすがに僕も同情するよ…」
ノディも私と同じ考えに辿り着いたみたい。私が想像してた以上にワケありだったわ…。
この後レスティをどうするかと考えているうちに、
「オマエみたいなガキ殴ってるときが1番楽しいんだわ、だから今日はオマエがオレの___」
サンドバッグになってくれ、と言おうとしたレズアを反射的に殴ってしまった。壁に頭を打ちつけて気絶しちゃったみたいだけど…ま、天罰が下ったっていうことにしとこうかな…。ゼイルもノディもそいつを殴ってくれてありがとう!よくやった!って言いたげの顔してるし。
「…とりあえず、しばらくここに住まない?何かあっても私達が守るから、ね?」
流石にこの状況で家に帰す訳にもいかないし…というか帰したらまずい気がするし!
「…みなさんのじゃまにしかならないでしょう?」
「そんなことないよ!!私、レスティとネスティのことたくさん知りたいな〜」
そう言ったらレスティの表情がちょっと明るくなった。
「…わたしのことは知らなくていいです、ネスティのことを知ってあげてください……」
「私は2人のことを知りたいの。2人のお話たくさん聞かせて?」
「……わかりました。では、しばらくお世話になります………」
……なんとかなった!!よく頑張った私…。
今後のことは…もう後で考えよう。
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キャラ紹介
レスティ・フォンシェッタ
11歳 144cm
長く伸ばされた黒髪に、黒い瞳、黒の服装
家庭環境も周囲の環境も何もかもが最悪だった。
そんな中で出会ったのがネスティだった。
そう、ネスティはレスティの唯一で最高の友達!
ネスティ・フォンシェッタ
?歳 156cm
ショートカットの白髪に、白い瞳、白の服装
レスティと真逆の見た目、性格をしている。
レスティの唯一の友達!_といいたいところだが、イマジナリーフレンドだ。
彼女は片時もレスティのそばを離れることはない。
だってレスティが作り出した幻想だから。
最初は三人称視点で書いてたのですがそれだとネスティの存在が消えたも同然のため莉乃の視点とレスティの視点を行き来する形で書かせて頂きました。
レスティに何があったのか気になる人がいれば書く予定です。