赫灼の鬼子と鬼殺の娘
〜注意〜
チャットノベルの書き直し
ほぼ原作をなぞっただけ
少しあやふや
それでも良い方はそのままスクロール〜!
人喰い鬼
―少女は泣いて、何かを叫んでいる。言葉までは耳に入らなかった。お腹が空いて仕方が無かったから。ただの空腹じゃなくて、腹が裂けそうな程の痛みのある空腹だった。早く何かを食べて腹を満たさねばと思った。目の前にいる少女を喰らおうとしたが、斧で防がれた。
少女を喰らう為ならとまだ使い慣れないこの体で少女の傷を付けようとした。少女の匂いは痛みのある空腹をさらに刺激した。
「お兄ちゃん!頑張って!鬼になんかなっちゃダメ!しっかりして!堪えて、頑張ってよぉ!!」
(お兄ちゃん…俺は…この少女の…兄…なのか…俺は…肉親を…喰い殺そうとした…)
そう思うと、段々と悲しくなって、目尻に涙が滲む。ゆっくりと、妹の名前を思い出す。
(ねずこ…禰豆子…)
喋れない中、頭の中で妹の名前を呼ぶ。そして、ぽたぽたと妹の頬に雫が零れる。
それから、男がやってきて、折角思い出した記憶も、両手を拘束されて興奮状態になり、忘れかけていた。
「お兄ちゃんは違うの!!人を傷付けたりしない!!」
「よくもまぁ…今しがた己が喰われそうになっておいて…」
禰豆子と男が何かを言い争っている。
「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」
「お前ごと、兄を串刺しにしても良かったんだぞ!!」
男が大きな声を出して、それに禰豆子は怯えているのか涙を流している。
そして、自分の胸を突き刺した。
「ギャアアアアッ!!!」
「や、やめてぇ!!!!」
禰豆子は小石を男に投げたり、斧を振ろうとする。しかしその前に禰豆子は男が持っている刀の柄で、背中を強打された。
それを見て、飢餓を忘れ、理性を少し取り戻した気がした。
「ガァァ!!!」
(しまった…喰われる!!)
俺は、禰豆子の前に立ち塞がり、目の前で目を見開き驚いたような顔をしている男を睨みつける。この少女を守らねばと思ったからだ。
そして、男に立ち向かう。男は何故か手に持っている刀を振らず、避けるだけだった。
そして、首元に手刀を喰らい、気絶した。
次に気が付いた時は、服も着替え直され、竹筒が咥えられていた。禰豆子は五つの盛り上がった土を目の前に手を合わせて目を瞑っている。その横顔は凄く悲しそうだった。
そして、立ち上がり、自分の手を握る。
「行こう」
禰豆子は自分の手を引いて山を降りようとするが、一瞬、家を振り返った。そして、幸せが壊れた瞬間を噛み締めるようにして、また前を向き、走り出す。
*
カァ、カァと鴉が鳴いている。その空の下で禰豆子は老夫婦と交渉をしていた。
「すみませんが、あそこにある籠と竹と藁を少々頂けますか?」
固い口調で禰豆子は問いかける。
「構わないが、籠は穴が空いているぞ?」
男性はそう言う。
「はい、お金は払います」
「いやぁ、いいよ。穴の空いた籠だし、持っていきなさい」
「いえ、払います」
こういった事が何度か続き、挙句の果てには
「納めてください、小銭ですが!!?」
男性の手のひらの上にパァンッと小銭を打ち付ける。
禰豆子は荷物を持って「ありがとうございました!!」と走り去っていく。その後ろでは男性が「痛ってぇ!」と小銭を手放していた。
禰豆子は洞窟の前まで来ていた。
「お兄ちゃん?お兄ちゃん?あれ!!居ない!!」
陽の光を浴びれない兄は洞窟の中で待っておくように言っておいたはずだ。なのに、居ない。もしや、陽の光に当たってしまったのか…。
と思えば、ひょこっと土の下からもぐらの様に炭治郎が出てくる。よくよく見れば、傍には掘り返された土の山がある。
「居た…」
炭治郎は眉を顰め、外に出るのを嫌がっているように見えた。
「…」
取り敢えず、兄の姿が見ることが出来て、禰豆子は安堵のため息をつく。
(だけど凄く顔を顰めているわ…。余程陽の光に当たりたくないのね…)
「ちょ、ちょっと待ってて!!」
禰豆子は貰った籠と竹と藁で兄が入る簡易的な箱を作り始めた。穴の空いている箇所は藁で誤魔化し、竹で補強する。半刻くらい経って籠は完成した。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん。この籠に入れる?昼間も先に進みたいの 」
炭治郎は二、三度瞬きをして、もそもそと穴の中から出てくる。籠に頭を突っ込むが、下半身は入らなかった。
(やっぱりはみ出るわよね…。でもこうして見るとお兄ちゃんも大きいんだなぁって思うわ。背も高いし…)
そうしみじみ思い、禰豆子はピーンと閃く。
「そうだ、お兄ちゃん。お兄ちゃん、大人の人くらいに大きくなったでしょう?あれと逆に小さくなれない?」
禰豆子はそう提案して、炭治郎の背中をポンポン叩き、「お兄ちゃん、小さく、小さくなれぇ!」とおまじないのように繰り返す。
炭治郎は籠の両端を掴み、頭から籠に入る。禰豆子は驚いたが、次の瞬間には炭治郎は小さな少年になって、籠の中にピッタリと収まっていた。
「わぁ!!お兄ちゃん凄い!!偉いねぇ!!」
兄が小さくなった事で兄というより弟な気がして炭治郎の赫灼の髪を撫でる。兄は嬉しそうに撫で受けられる。
陽の光を遮るために、上から分厚い布を被せ、背負う。 そして歩き始める。
太陽が沈む頃、少年に出会い、狭霧山の場所を聞いたところ、母なら知っていると言い、母のところまで禰豆子を連れていってくれた。
「狭霧山に行くの?もう日が暮れるけど…。女の子なのに、そんな大荷物背負って行くのかい?危ないよ」
母は「泊めてやれることも出来るけど」と心配の色を見せたが、禰豆子は「大丈夫です、お気遣い、ありがとうございます」と丁寧に断る。母もそれ以上は言わず、山に向かっていく禰豆子に「近頃は行方不明者も出ているからね!!迷わないようにね!!」と手を振って見送ってくれた。
太陽も完全に沈み、夜空には三日月が浮かんでいる。これなら兄も外に出せるだろうと兄に「出ておいで」と声を掛ける。兄は元の身長に戻り、自然と禰豆子の手を握った。
近くには灯りの付いたお堂が見える。
「お堂があるわ。灯りが漏れてるから誰か居るのかも。行ってみよう」
禰豆子は歩き出そうとするが、炭治郎は手を強く握り引き留める。顔を見れば何やら険しい顔をしていた。
「どうしたの?」
兄が何故そのような顔をしているのか遅れて禰豆子にも分かった。嫌な気配がする。背中が凍るような嫌な気配が。
「これは…。この山は道が険しいから、誰か怪我をしたのかも!!」
禰豆子と炭治郎は走り、お堂へ向かう。そして、障子を開ける。
「大丈夫ですか…っ!!」
障子を開ければ、目の前一面に赤色が広がっていた。むせ返るほどの血の匂い、散らばった肉片、それを喰らう一人の鬼。炭治郎は目を見開き、肉片を見て竹筒の下から涎を流していた。鬼が禰豆子達を睨む。
「なんだぁ?ここは俺の縄張りだぞ。俺の餌場を荒らしたら、許さねぇぞ」
血の滴る口でそう言った。鬼は血を舌で舐めとる。
「妙な気配がするなぁ。お前ら、人間か?」
鬼はゆっくりと立ち上がり、禰豆子達を見て不気味な笑いを浮かべる。
そして次の瞬間、鬼は消え、禰豆子はお堂の外に投げ飛ばされた。
「くっ!!」
反射的に斧を振る。鬼は飛び退き、面白そうに此方を見ていた。
「ほう…斧か。やるな。でもこんな傷、すぐ治るんだよなぁ」
ズズッと音を立てて、滴る血は止まった。
「ほうら、もう血は止まった」
そのあまりの回復の速さに禰豆子は目を見開く。その次には、首を掴まれた。斧を振ろうにも振れない。
「二度はやられねぇよ。さぁ…首を折るぞ」
炭治郎は息絶えた人達を見て固まっていたが、禰豆子が苦しむ声を聞いて、駆け付け鬼の首を足で蹴った。頭はそのまま木にぶつかる。
「え…えぇ!!!??っ…うわぁ!!」
禰豆子はもげた首をまじまじと見てしまい、慌てて押し倒す。炭治郎は荒い息をしながらもボーッと突っ立っていた。
(こ…殺してしまった…。いやでも…相手は鬼だから…)
「お、お兄ちゃん…」
禰豆子がそう声を掛けた瞬間、炭治郎はまた足で鬼の身体を蹴った。その光景に禰豆子は信じられなかった。
(う、動いたの!?今!?首がもげてるのに…!?)
「てめぇら!!やっぱり片方鬼だったのかよ。妙な気配させやがって…。なんで鬼と人間がつるんでんだ!!」
(喋ってる!!!)
あまりに信じられない事ばかりにいちいち驚くことしか出来なかった。
そして、身体が起き上がったと思った瞬間、身体は兄を殴ったり蹴ったりし始めた。予想外のことに炭治郎も反応出来なかった。炭治郎が遠くへ投げ飛ばされ、身体も其方へ向かう。禰豆子は慌てて追いかけようとすると、頭から手が生えた鬼が此方へ向かってくる。
禰豆子は斧を振るが、ガチッと音を立て、刃先を噛まれた。鬼の髪がしゅるしゅると伸びて、禰豆子の手と斧から離れないようにしてくる。
(…なんなのよ、この鬼は…。頭から手が生えてるなんて…)
禰豆子は利き手を斧から離し、親指と中指を構え額に構える。
「ちょっと…どいてぇ!!!」
バチィンと鬼の額が弾けるような音がした。
(なんだ…こいつのデコピンは…。デコピンからする音じゃねぇ…)
もう1回、禰豆子のデコピンが額に弾け、斧を振り、近くの木に刺さる。
「よし…!」
禰豆子は兄のいる場所へ走る。
(斧を奪うつもりで伸ばした髪が縺れた…!!精一杯生やした手も短すぎて上手く内側に曲げられんっ!くそっ!!)
鬼はそう悪態をつく。
禰豆子は草木を掻き分け、兄の居る場所を探る。兄は蹴られ、殴られと暴行を受けていた。
「やめてぇ!!!」
禰豆子はそれを止めるべく、鬼の身体に抱きつく。ただ、勢いのあまり、崖に落ちそうになる。
「うわぁっ!?」
そのまま、崖に落下するかと思われたが、已の所で兄に服を引っ張られ、禰豆子が落下することは免れた。鬼の身体は下へ落ちていった。
首の断面から落ちた鬼の身体はぐしゃり、と音を立てた。繋がっていなくても鬼にも影響があったのか、頭部は奇声を上げて気絶した。
禰豆子は鬼の頭部のある場所へ戻る。
―鬼は…沢山いるのかな…。でも…家に居た鬼とは違う…別の鬼…。放っておいたらまた人を襲う…。だから…私がやらなきゃ。
刃物を片手にそうぐるぐると思考を巡らすが、相手は鬼でも“人を殺す”という行為に手が震え、出来なかった。
―やるのよ…やれ!!
すると、禰豆子の肩に老人の手がポン、と置かれた。
「そんなものでは止めは刺せん」
老人はそう、しわがれた声で言った。
コメント
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見るの遅くなっちゃったけど今日も神!