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横浜の海岸沿いにある巨大な魚市場——通称「異能魚市場」。
そこでは、普通の人間には到底扱えない“特異な魚”が売買されていた。
「ちょっと待って!なんでアタシが魚市場に来なきゃなんないワケ!?」
三寳櫻(みつほうさくら)は、港の冷たい風に髪をなびかせながら叫んだ。彼女の隣には例のイギリス人、アーサー・ベンフィールド、そしてロシア語を話すペルシア猫ウラジーミルが悠々と歩いていた。
「お嬢さん、この市場ではイギリス王室の食卓にふさわしい特別な魚が手に入るのですよ。」
「ニャー、ワシのキャビアも切れたしな。」
三寳はため息をつきながら、異能の魚たちが跳ねる市場を見渡した。目の前では人魚のように半分人間の顔を持つマグロが、店主に文句を言いながら売られていた。
「え〜、あの顔キモくね? しかもしゃべってんだけど。」
「そこが魅力なのです。イギリスの貴族たちも、美しい顔の魚ほど好むものですよ。」
三寳がさらに市場の奥に進むと、一匹の巨大な「サメノドン」が檻の中で暴れていた。
「おいコラ!売れるわけねーだろ!誰が買うんだよこんなもん!」
店主は汗を拭いながら叫んだ。サメノドンは二足歩行し、顎が発達しており、まるで武装した兵士のように堂々と立っている。
「……こいつ、ヤバくね?」
三寳が一歩後ずさると、ウラジーミルがニヤリと笑った。
「ニャー、やっと面白くなってきたな。」
「え、何が?」
その瞬間、檻の鍵がバキィィンッ!!と弾け飛び、サメノドンが市場の中へ飛び出してきた。
「ウギャアアアアアア!!」
市場の人々が悲鳴を上げ、逃げ惑う。
「おい!お前らなんとかしろよ!」
「仕方ないですね……お嬢さん、あなたの異能の出番です。」
アーサーが冷静に言うと、三寳は鼻を鳴らしながらポケットからナイフを取り出した。
「ったく、しょうがねーな。」
彼女は迷いなく自分の小指を切り落とした。すると、切り口から赤黒い液体が広がり、もう一人の三寳が姿を現した。
「分身、出動!」
分身が飛び出し、サメノドンと対峙する。だが、サメノドンの鋭い牙がすぐさま襲いかかる。
「ニャー、アイツ相当腹減ってるな。」
「……だったら、こうするしかないっしょ。」
三寳は目を閉じ、集中すると、周囲の水槽にいた魚たちが一斉に飛び出し、サメノドンの頭上に集結。彼女の異能「魚操術(フィッシュ・コントロール)」が発動した。
「いけ!マグロ軍団!!」
無数のマグロが空を舞い、サメノドンの顔面に次々とぶつかる。だが、サメノドンは怯まずに吠えた。
「ダメか…。」
「お嬢さん、次の手を。」
「……しょうがない。奥の手いくよ。」
三寳は眉をひそめると、額の中央に手を当てた。ズルッと皮膚が裂け、眼と眼の間から第三の口が現れる。
「うぉっ、マジかよ…。」
第三の口が大きく開き、そこから巨大な水流が放たれた。それは市場の水を一気に吸い込み、サメノドンを海の方へと押し流していった。
「オラァァァ!!」
大激流に巻き込まれたサメノドンは、横浜の港へと吹き飛ばされていった——。
「ふぅ……、なんとか片付いたか。」
三寳が汗を拭うと、アーサーが拍手をしながら微笑んだ。
「素晴らしい。これこそギャルの力ですね。」
「はぁ!?ギャル関係ねーし!」
「ニャー、それより、あのサメノドン……どうする?」
振り返ると、サメノドンは港で気を取り直し、こちらを睨みつけていた。
「……マジか。続く?」
— 次回、『第三話・サメノドン、逆襲』!