私は歌うことが好きだ。私の学校ではもうすぐ文化祭がある。文化祭ではクラス対抗の合唱がある。歌うことが好きな私にはとても楽しみだった。歌う曲が決まった時私は何度も家で練習をした。学校でも熱心に練習を取り組んでいた。学校の休み時間のも友人たちと練習をしていた。
ある日、隣で歌っている友人の由美が友人の友利に話している声が聞こえてきた。「私の隣で歌ってる実心のせいで音程がめっちゃズレて歌いずらいよ〜」「確かに実心は音痴だもんね」私は2人に比べて歌は下手だし音痴なのは自覚している。私のせいで由美の歌の邪魔をするなら歌わない方がいいのかな…立ち位置は変えることはできない。だから歌わない方がいいのかな?そんな疑問を抱えながら私は練習の時小さい声や口パクで歌ってみたところ、指揮をしていた先生は「とても上手になっているわ!」と褒めていた。由美は「今日はめっちゃ調子いいかも。音程完璧」と言ってガッツポーズを取っていた。私は合唱に入らない方がいいのかな?入らない方が全体的にいいし…私は家での練習をやめて学校での練習は口パクで乗り過ごし休み時間は友人たちとの練習を断り教室の隅で読書をするようになった。私がいなければ……私がいなければ、クラスの合唱が完璧なんだ。次第に私は歌うことは無くなった。私は好きだった歌うことは嫌いになっていった。歌うことが怖くなっていった。私が歌えば歌がうたじゃなくなる。私が声を出さなければ……私の歌声いや――私の声が悪いんだ。私は声を出すことが怖くなっていってしまった。気がついたら声が出なくなっていた。私は友人に話しかけられても声が出ないため返答が出来なくなっていた。家でも声が出ないことに家族は衝撃を受けたが、いつか声が出るから待ってるよっと言って私に常備しておくメモ帳とペンを渡してくれた。しかし学校では声が出ないことが受け入れて貰えず、周りから浮くようになっていた。文化祭前日には友人と言える人がいなくなっていた。明日の合唱は担任に喉の調子が悪いって家族から伝えてもらって聞くだけでもしていくことにした。家族も文化祭に行ったら学校行かなくてもいいと言ってくれた。暖かい家族でよかった。私は文化祭に行って自分のクラスの合唱を聞いた。クラスがひとつになってとても綺麗だった。私がいなくて正解だったんだ。私のクラスの出番が終わり、次のクラスの発表になった。そのクラスの発表は1人の女の子が誰よりも大きな声で歌っていた。とても凄かった。自分の声が嫌いな私には到底出来ないことがあの子には出来たんだ。私はなんてダメ人間なんだ。もうすぐ有志発表の時間になった。最初はクラスの合唱で誰よりも大きな声で歌っていた子の単独ライブだった。有志発表は聞いても聞かなくても良かった。歌うことが嫌いな私は聞くのですら億劫だった。合唱は強制だったから仕方がなかった。有志発表は聞いても聞かなくても良かったが私はあの子の歌を聞きたいと感じたのだった。あの子の歌っている姿、あの子の歌声を聞きたくなった。理由なんてなかった。あの子とは家が近所の少々付き合いのある子だった。親同士は仲良かったけど、私たちはそこまで仲良くはなかった。友達と呼べるような存在ではなかった。でも私は今、あの子の歌ってるところをみたい聞きたいと感じたのだった。あの子のライブが始まった。圧巻の歌声だった。みんながあの子に注目している。「すごい……」私は目を輝かせながら呟いた。私もあんな風になりたい。あの子と仲良くなりたい。あの子のことが「好き……」一目惚れを私はした。歌っているあの子、輝いてるあの子――千尋が私は好きだ。