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「ここが、」
生ぬるい風が私の隣を通り過ぎ、さっきまで煩わしかった蝉の音色は、今だけは心地良い音色に聞こえた
高校一年生の夏休み、私はとある田舎町に一ヶ月の間だけ 越してきた
時は数十年前へと遡る
私がまだ小学校の頃、両親を交通事故で亡くした。
葬式が終わるとすぐに、親戚内で誰が私を
引き取るかで揉めた。
私の家族はあまり親戚内で良くは思われておらず、集まりなどでも避けられていた
両親でさえ嫌われていたのだから、その娘である私も毛嫌いされていた。
その後、私は母の姉である叔母家族に引き取られたが、そこから叔母家族による嫌がらせが始まった。
嫌がらせといっても大した事ではないが、
夕飯を抜かれたり、学校に行くと叔母の娘からいじめを受けたりなど、
嫌がらせは年月を重ねる毎にエスカレートしていった。
止まらない嫌がらせに徐々に心身疲弊していく中、とある提案が私の頭に思い浮かんだ
「夏休みの間だけでも、静かな場所で暮らせないだろうか」と
思いついたその後は、驚く程スムーズに事が運んだ。
夏休み住む家は祖父母が新築を建てる前に使っていた家を借りる事になった。
祖父母の家はかなりの有名な神社であり、さらに祖父が残した莫大な遺産で新しく家を建てたらしい。
そこで以前住んでいた家を売ろうとした所に、私からの電話があり、譲る事にしたそうだ
ただ、少し祖父母の住んでいる所に行くのは正直あまり気乗りはしなかったが、これはまた別の機会に説明しようと思う。
私を邪険に扱っていた叔母家族に
「 夏休みの間だけ、旅行に出かけたい。もちろん自腹で行きます」
と伝えれば、 あっさりと許可が下りた。
そして当日、私は少しおしゃれをして髪を下ろし、白いワンピースを着て麦わら帽子を被り、
重いキャリーバッグを引きずって、ようやく目的地にたどり着いた。
「確か、おばあちゃんがここに、」
私が駅から出て、辺りを見回すと
「雪桜(ゆさ)!」
「!!」
突然、怒鳴り声のような声が鼓膜を震わせ、振り向いてみると、昔より顔の皺は増えたが容姿はそのままのおばあちゃんが立っていた
「またそんなふしだらな格好をして!
髪はちゃんときっちりと低く結びなさい!
それにこんな露出した服なんて着て、お母さんみたいな罰当たりになりたいの?!」
「いっ、ご、ごめんなさい、」
「こんなんじゃ立派な巫女になんてなれないわよ!?ちゃんとぴっちりとした格好をしなさい!」
大声で怒鳴る祖母に乱暴に髪を結ばれ、ワンピースも乱暴に引っ張られた
これが、私がこの町に来くなかった理由だ。