いつも通りの注意書き。
・パラ日(日帝)です。
・R-18はありません。
・なんでコメディ書こうとしても切ない方面に行くんですかねぇ。笑える話を書きてぇですよ。
・戦争表現あります。
・地雷さんはご自衛ください。
では本編Go。
「今日も良い天気だなぁ…」
窓を開けると、広がるのは真っ青な海とカラッと晴れ渡った青空。
潮の香りがふわりと家の中に入り、僕は背伸びをして朝が来たことを実感する。
…あ、みなさんこんにちは。
僕はパラオ。
総人口1万8000人の小さな島の集まりのこのパラオ共和国の国の化身として、僕は生まれたんだ。
「ん-と、今日の朝ご飯は…
あ、小麦粉があるからこれでぜんざい作ろうかなぁ」
なんて一人でぽつぽつと呟きながら小麦粉をばさーっとボウルに出す。
小麦粉で作ったお餅をココナッツミルクで煮込めば、パラオ共和国風ぜんざいの完成!
細かい装飾のされた木のスプーンでぜんざいを口の中に運べば、慣れ親しんだ味がする。
「今日もアジダイジョウブだなぁ」
昔、ナイチから教えてもらった沢山の日本語。
日本語では『美味しい』って言うらしいんだけど、僕たちパラオの民の為にナイチが簡単な日本語を伝えてくれたんだ。
だから、僕の国では『美味しい』を『アジダイジョウブ』って言うの。
(そういえば、今日はナイチが来るんだっけ)
食べ終わったお皿を洗いながら、ふと思い出す。
流石にいくら親しい国だとはいえ、僕の今着ている寝間着の状態でナイチに会うわけにもいかないよね…
「…よし、準備しないと」
お皿を水切りかごに立てかけ、僕はタンスを開ける。
麻で出来たシャツとハーフパンツを出して身に付ければ、いつもの僕の出来上がり。
ずっと昔から僕は小さいまま成長しないから、服もほつれたり破けたりしない限り出来るだけ長く着るようにしてる。
『パラオには、やはり自然由来の色の服が良く似合うな』
今はもう思い出の中だけで生きるあの人は、幼かった僕に…そう言ってくれた。
それから1時間後くらいに家の扉が叩かれた。
「はーい!今出るよー!」
扉を開けると、そこに居たのは。
「こんにちは、パラオ。約束通り来ましたよ」
いつも以上に楽な格好をしているナイチだった。
真っ白な顔に優しい微笑みをたたえて、家の前に立っていた。
すぐに僕のおうちの中に入ってもらって、ナイチがお腹を壊さない様にパラオの水道水じゃなくて、お店で買った軟水のミネラルウォーターを氷を入れて出した。
ナイチの前にお水を出してから、僕は向かい側に座った。
「ナイチ、久しぶり!元気だった?」
「えぇ、元気でしたよ。パラオはどうでした?」
「僕も元気だよ!アメリカさんが守ってくれるおかげでパラオ共和国はずーっと平和なの!」
「それは良かった、きっとアメリカさんが聞いたら喜んでくれますよ」
大好きなナイチと話すだけで、勝手に笑顔が浮かぶ。
それくらい、大好きで大好きでたまらないんだ。
「あ、そうだ。今日はパラオにお土産を持ってきたんでした」
ナイチは手に持っていた紙袋を僕に渡した。
「日本の伝統工芸品です。扇子、っていう…風を送るものですね。
日本では暑いとき、これで扇いで涼を取るんです」
紙袋から出したそれは、綺麗な青色の扇子。
広げてみると、パラオ共和国が誇っている海の青さにも、美しい空の青さにも負けないような…すごく、すごくきれいな青色をしていた。その扇子の中心には、太陽をあしらった模様が薄く入っている。
試しに扇いでみると、ふんわりと優しい風が顔に送られた。
「す、すごい!涼しいよナイチ!」
「ふふ、喜んでくれたみたいで何よりです。
この間その扇子を京都さんのお店で見つけて…それで、つい買っちゃいました」
えへへ、と照れたように笑うナイチ。
昔と今とじゃ、笑い方も随分変わったなぁ…
「Meslang、ナイチ…これ、大事にする!」
「こちらこそありがとう、パラオ。喜んでくれて嬉しいです」
そこから僕とナイチは、色々と話した。
最近あった面白いこととか、外交していて気付いたほかの国の新しい発見とか。
そういったものをこうして時たま話して、ゆるりと時間を過ごす。
こういう日々が、僕は大好きだった。
「……」
「……」
ふと、会話が途切れる。
窓を開け放しているので、波の音がBGM。
僕は窓から見える青い空を眺めながら、ナイチに問いかけた。
「…ねぇ、ナイチ。
ナイチが初めて僕のもとに来た時の事、覚えてる?」
「…えぇ、勿論。あの日の事は、忘れもしません」
ナイチは、寂しそうな笑顔を浮かべていた。
僕は、追憶の中へと飛び込んだ。
僕は、元々はスペインの植民地だった。
そのあと、ドイツに譲渡されて…それから、ずっと働かされっぱなしだった。
国の化身とか、そういうのなんて、労働力を欲していたドイツから見ればどうでも良かったみたいで…
国の皆と一緒に、働いた。必死に、必死に働いた。
そんな日の事。
第一次世界大戦が終わり、沢山の人がやってきた。
『初めまして、パラオ。
これからはドイツに代わり、私…大日本帝国が、パラオを統治することになる。
よろしく頼む』
そんな人たちの中から一歩前へ出て現れた、軍服姿の日本人。
顔に国旗の模様があったから、すぐに僕と同じ国の化身だってわかった。
でも、植民地で自信が無くて…小さく怯えているばかりの僕とは違って、背が高くて、すごく堂々としていて…
(…かっこいい、な)
そう思った。
それが、ナイチとの出会いだった。
『…あの、僕、何をすれば…』
大日本帝国さんがスコップを持って歩いているとき、僕は話しかけた。
きっとこれからはスペインやドイツと同じように馬車馬のように働かせられる。
もうとっくに覚悟は決まっていたから、自分から手伝いを志願したんだけど…
『ん?嗚呼、手伝いは不要だぞ。
インフラ整備や教育、政治制度などは俺たちが責任を持って全て行わせてもらう。
俺たちが統治してる国だ、それくらいはさせてくれ』
そう言われて断られてしまった。
大日本帝国さんじゃなくて他の日本兵の人にも手伝いを志願したけど…結局、全部断られちゃった。
『今まで西洋の奴らにこき使われて大変だったろ?
俺たちがやるから、お前らは休んどけ!』
『い、いや、でも…』
『いーからいーから!これが俺たちの仕事なんだしな!』
黄色い肌をした日本兵さんたちが、にかっとした笑顔を浮かべていたのはいまだ鮮明に思い出せる。
そして、すごく短い間にパラオは日本のおかげで発展できた。
インフラ整備も完璧になって、教育制度もきっちりできて…本当に、パラオは統治下にあるの?ってくらいで。
だから僕は、仕事が終わって一休みしてる大日本帝国さんにありがとうって言いに行った。
『だ、大日本帝国さん!!Meslang…ッ、感謝しても、しきれないよ!』
『パラオか。…構わんよ、こちらこそわざわざお礼を言いに来てくれてありがとうな』
大日本帝国さんは、優しく僕の頭を撫でてくれた。
その時。
ぐぅ、と大日本帝国さんのお腹が鳴った。
『…しまった、お昼ご飯を食べるのを忘れていた』
でも、食べるものも見当たらない。
僕はすっくと立ちあがった。
『じゃ、じゃあ僕が持ってくるよ!!』
大日本帝国さんの制止も振り切って、僕はおうちに帰った。
お米を炊いていたから、すぐに塩をかけて握った。
でも、全然上手くいかなくて…
『…形が…』
ぐちゃ、となってしまった。
なんで日本兵の人たちはあんな綺麗な三角形に握れるんだろう…?
すごく申し訳なかったけど、綺麗に洗った葉っぱに包んで大日本帝国さんに持って行った。
『あ、あの、ごめんなさい…頑張ったんだけど、どうしてもうまく握れなくて…』
『ほう…何、一つ頂こう』
ぱっと僕の手からおにぎりを取ると、ぱくりと一口で食べてしまった。
『…ふふ、美味いぞ』
『…本当?』
首を傾げて問うと、大日本帝国さんは初めて見る笑顔を見せた。
『形が不格好でも、味自体は変わらん。
“アジダイジョウブ”だぞ、パラオ』
『アジ、ダイジョウブ…』
それは、この間習ったばかりの日本語だった。
意味は、確か…
『美味しい…って、事?』
『嗚呼、そうだ。俺の為に作ってくれて、ありがとうな』
ぽんぽんと優しく頭を叩かれた。
すごく嬉しくて、僕は大日本帝国さんに飛びついた。
『ば、馬鹿!危ないだろうパラオ!!』
『えへへ、だって嬉しくて…!!』
今まで欧米の人にご飯を作っても、『土人の作ったものなど要らん』と捨てられてしまった。
だから、こうして見た目が不格好でも食べてくれて『ありがとう』と言ってくれる日本人は、すごくすごく新鮮に映って…すごく嬉しかった。
時は流れ、第二次世界大戦末期。
『パラオ、もうそろそろこのあたりは危ない。
船に乗って避難するんだ』
『嫌だ!!僕も、ナイチたちと一緒に戦う!!』
僕が大日本帝国さんをナイチと呼び、親しくなってしばらく経ってからの事だった。
ナイチいわく、もうじきこの国にはアメリカ兵が日本兵を全員殺すために来るんだって。
だから、僕たちを安全なところに逃がしたいって言ってくれたんだけど…
『言うことを聞けパラオ!!!』
『絶対に嫌だ!!僕、まだナイチになにも恩返し出来てないんだもん!!!
せめて、一緒に戦って恩返ししたいよ!!!』
ナイチの体に縋りつき、僕は必死に頼んでいた。
この頼みは、パラオの人たちの望みでもあった。
でも、ナイチは首を縦に振らなかった。
『……しょうがないな』
ナイチがそう言った。
もしかしたら、一緒に戦えるのかもしれない。
淡い期待を抱いた。
『…お前たちの助けなど、逆に足手まといになる』
『……え?』
体が動かなくなった。
『元植民地の人間など、神風の吹く大日本帝国の戦力になるものか。
俺たちの統治下になってから、インフラ整備もまともにせず戦いの訓練も受けていないお前たちが俺が戦っている米帝と闘う?そんな馬鹿らしい話があるか。全員全滅して終わるのはわかるだろう』
『ナイチ、何を言って…』
『…まだわからんか』
ナイチはため息を吐いて、僕を突き飛ばした。
『お前たち土人などかえって迷惑だ。
さっさと俺たちの前から消えろ』
冷たい目で、その言葉が吐き捨てられた。
『ナイ、チ………』
『ナイチも、結局…欧米の人たちと一緒だったの……?』
僕たちに合わせた教科書を作って、いろんなことを教えてくれた。
言葉も、僕たちがわかりやすいように簡単な日本語を教えてくれた。
インフラ整備もして、安全に暮らせるようになった。
不格好なものを見ても、見た目じゃなくて物の本質で判断してくれた。
そんな、ナイチでも…
(やっぱり、僕たちの事を植民地としてしか見てなかったんだ)
ひどく、胸元が痛い。
僕は、ナイチの前から走って逃げた。
そこには、同じく日本兵さんたちに脅されて、怒鳴られて船に追い込まれたパラオの人たちが居た。
僕も、船に乗り込んだ。
日本兵さんたちに『早く行け馬鹿!!!』と怒鳴られ、一人がオールで船をこぎ出した。
港には、ナイチの姿もあった。
でも、僕はもうナイチの姿を見たくなかった。
ぎゅっと目をつむった、その時。
叫ぶ声が聞こえた。
僕は顔を上げた。パラオの人たちも顔を上げた。
港では、日本兵さんたちが笑顔で手を振っていた。
ナイチも、笑顔で手を振っていた。
何かがナイチから投げられたので、僕は船の外に腕を伸ばして受け止めた。
綺麗な、大日本帝国の軍服に付けられるバッジだった。
一緒に添えられていた、小さな紙。
開くと、そこにはひらがなで端正な文字があった。
“おまえたちのことは、ぜったいにわすれない”
その文章を見た途端に、僕の目から涙が零れた。
ぼろぼろと、涙が零れ続けた。
『ばか…ナイチの、ばか…』
『本当は、すっごく優しいくせに…!!』
でも、僕は薄々わかっていた。
自国を愛する僕たちは、何があっても…たとえ、祖国が焼かれようと決して島から離れないと。
だから、日本兵さんたちはわざと僕たちに暴言を吐いて、アメリカ兵の火から逃がしたんだ。
確かに、ここへ来た直後は日本兵さんたちはああいう風に思っていたのかもしれない。
でも、彼らは絶対に。
僕たちと同じように、この南国の島を愛していた。
今すぐ、ありがとうって言いたかった。
でも、もう距離は遠すぎた。
だから僕は、大きく手を振った。
ナイチたちに見えるように、大きく、大きく。
ナイチたちの姿が見えなくなるまで、僕はずっと手を振り続けた。
戦後。
パラオの島に居た日本兵さんたちは全員死んだと聞かされた。
数か月ぶりに祖国の砂を踏んだとき、そこにあったのは焼け焦げた祖国の姿。
焼けた街を見ていると、日本兵さんたちの笑顔が蘇ってくる。
また、地面の砂に涙がポトリと落ちた。
「…懐かしいですね」
ナイチもきっと過去に思いを巡らせていたんだろう。
顔をあげて、ふわりと笑った。
そんな時、僕のお腹がぐぅと鳴った。
「…あれっ、もうお昼?」
「本当だ…時間早いですね」
壁にかけてあった時計を見ると、針はもう12時を過ぎていた。
「よし!!じゃあ、僕お昼ご飯作るよ!!」
「え、良いんですか?」
「もっちろん!!昔みたいな不格好なおにぎりは作らないように練習したんだ!!」
そう意気込んだのは良い物の…
練習しても練習しても、あの日の日本兵さんたちみたいな綺麗な三角形には握れない。
「…うぅ、やっぱりダメだった」
なんで練習しても上手く行かないんだろう…
そう落ち込んでいた時、横に立っていたナイチがパクっとおにぎりを一つ食べた。
「え、な、ナイチ!?」
「ん?ん~……」
ごくりと飲み込んだナイチが笑って、僕の頭を撫でた。
「昔も言ったでしょう?
見た目は不格好でも、味は変わらない。“アジダイジョウブ”ですよ」
「あ、アジダイジョウブ!?」
「えぇ、アジダイジョウブです。じゃあ、私も一緒に作りますよ」
ナイチが手を洗って、台所に立ってくれた。
ご飯の入ったボウルからご飯を取り、器用に三角形に握っていく。
僕も真似してみたけど、やっぱり上手く行かない。
「…ナイチ!握り方教えて!!」
「えぇ?私はパラオのその可愛い形のおにぎりも好きなんですけどねぇ…
ふふ、でも良いですよ。教えますからしっかり見ててくださいね」
ナイチに教わるがままに、僕は必死にお米を握る。
見た目はどうしても不格好になってしまったけど、それでも僕は頑張って握り続ける。
ナイチの心から笑う顔が、見たいから。
勉強もせず何書いてんだって話ですね。
ごめんなさい。
だってパラ日(日帝)描きたいじゃないですかぁぁぁ…
では次回。
コメント
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連続で見てるからまじで水分涙で枯れるて。 日帝さんのどうやってもあふれでる優しさ、好きです。
パラ日⁈私の大好きなカプじゃないですか!!泣きました、、、
😢😊