コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ん…」
目の前には白い天井
ゆっくり起き上がって体を動かしてみる
あれ俺生きてる…?
どうやって?そう思っているとガラガラと音がして病室の扉が開く
「あ、カイトちゃん起きた〜?」
「遥斗さん」
「みんな大好きはるちゃんだよー」
ニコニコと笑いながら手を振る彼を見て思わず安心してしまった
どうやら本当に生きているらしい
「そういえば依頼は」
「その前に、散歩でもしよっか!」
彼はそういった途端俺の手を掴んで病室を飛び出してしまった
向かった先は屋上
いつの日かビルを襲ったことを思い出すな
そう思ってしまった
「ん〜!ここ空気がいいね!」
「そう、ですね」
けど階段を上がるのはやっぱりきつい…
多分色んなところを怪我しているんだろう
今からどこか1箇所から血が出てもおかしくは無いな…
そんなことを心配している俺をほっておいて彼は近くにあったベンチに座る
「あ、そうそう依頼は成功。ちゃんとがっぽりお金もらったよぉ」
「半分はもう君の口座に送り込んどいたからあとで見てね」
そう言ってぱくりとアイスをほうばる
「まだ4月ですよ?」
そんな彼の隣に俺も座った
「もう少ししたら暑くなるからいいの〜」
「しかし、少し早いお化けでしたね」
「そうだよねぇあと4ヶ月待ってくれたらいい時期なのに」
「お化けが待つってなんですか」
思わず笑ってしまう
「世の中の人はおばけにあますぎだよ。もっとお化けに対する法律を作ろう!!」
「いや、破りまくってるあなたが言いますか?」
笑いながらそう言うと彼はいやいやと言い出した
「今回は人殺しじゃないもーん。つくとしても不法侵入ぐらいでしょぉ?」
「不法侵入をそんなに軽いものとして見ないでください 」
その言葉を聞いて彼は少し不思議そうに俺を見つめる
「ん〜…君なんでこんな真面目なのに殺し屋やってるの?」
なんで、
そんなの俺が聞きたいぐらいだ
この道しか無かった
俺には人を殺す以外の方法を教えてもらわなかった
「分かりません」
「ふーん」
「そう言う遥斗さんはどうなんですか?」
彼は少し無表情になった後ニコッと笑ってこういった
「お金が欲しかったから、かな!」
「そうですか、」
ひとつ疑問があった
遥斗さんはこんなに温厚な人なのにどうして雲さん、東雲さんをあんなに残酷な殺し方をしたのだろう
ずっと謎だった
目を潰し、口を縫いつけ、耳と鼻を取った
しまいには顔の皮を剥ぎ取っている
裏切り者でもあそこまでする必要はなかっただろう
「なんで、あんな殺し方をしたんですか?」
スっと彼から笑顔の表情が消える
そして少し悩んだ末に口を開いた
「…そうしなきゃいけなかったから」
「あそこで力を見せなかったノセの評判はダダ下がりだし、裏切り者のひとりも上手く罰することが出来ない殺し屋として噂が広がることになる」
「この世界は完全実力主義だからね、力を見せつけないと舐められ、仕事が無くなる」
「1度の失敗はそれだけでも大きな傷なんだよ」
ノセとしてこの世界で生きていくために雲さんを踏み台にした
そう言ってるようにしか聞こえなかった
いや、実際そう言ってるんだろう
俺も沢山の人を踏み台にしてここまで来た
ナルという名前はノセと比べるとそこまで有名ではないが一応通じるようにはなってきた
だけど、それだけ警戒されるようになっていたということだ
気をつけないと
改めて気を引き締め直すことにした
「それはそうとカイトちゃん?」
「なんですか?」
「君、はるちゃんの弟子って言ったらしーねぇ?」
思わず肩が飛び跳ねる
なんで、バレてるんだ
弟子って言ったことがバレたらどうなるか、金取られる?最悪殺される?
「すいません、名誉を奪うような真似をしてしまって」
「あーそれはいいのよ別にカイトちゃんとの仲だしね♡」
彼は立ち上がって俺の後ろに回る
「だ、け、ど」
するりと彼の腕が俺の肩に置かれる
「そのぐらいの実力で弟子を名乗られるのも困るわぁ」
「…」
「もぉっと強くなってもらわないと、ね?」
「はい…」
「話によると桐生に潰されそうになったらしいじゃん?」
耳元で囁かれる
なんでその事を知って!
そんな事を聞かれる状態じゃないのは分かっている
「そうですね、」
「そもそもはるちゃんとずっと一緒にいるんだからもう少し力をつけないととは思っていたんだよねぇ?」
「…」
「昔みたいに特訓、しよっか?」
いつものようににこりと微笑まれる
あぁ、終わった
依頼前の殺されるという予感だけは的中してしまった
それだけはしたくなかったのに…!
最後になんてもの残してくれたんだあの人は…
この人の特訓なんて生きて帰れるかどうか…
何とかして断らないと!
「えっと、依頼が一応入ってて…」
「大丈夫よぉ依頼終わりでも出来る簡単なストレッチみたいなもの」
「断れると思うなよ?小童」
思わず息を飲んでしまった
やっぱりお化けとかよりこの人の方が怖いわ
「分かりました、そのお誘い有難く受け入れさせて頂きます 」
こう言うしかないだろ!
拒否権なんてないんだから!
「うんうん、よろしくね。カイトちゃん♡」
「はい」
こうして俺の地獄が幕を開けた